循環器領域の専門家はますます過激になっているようにも見えます。LDL、そのものを毒物扱いをする人まで現れました。
“It’s not really about statins any more, it’s about LDL being a toxin.” @MarcBonaca #TCT2022 pic.twitter.com/TxtN6WruTv
— David Homan, MD (@heartdoc45) September 17, 2022
LDLは人間にとってなくてはならない重要なものです。新型コロナのワクチンと同様に企業の後ろ盾があると、何を言っても平気になるのでしょうか?
先日の記事「最近LDLコレステロールからLp(a)およびApoBにシフトしてきている その1」で書いたように、循環器系の領域の動きを見ていると、LDLコレステロールからLp(a)やApoBに注目がシフトしてきているように感じます。
このLp(a)、実は食事により影響を受けます。
例えば、脂質および飽和脂肪酸。心血管疾患の元凶とも思いこまれている、この脂質や飽和脂肪酸を減らすと、Lp(a)はどうなるでしょうか?ある研究で、8週間ずつ総脂質および飽和脂肪酸の摂取量を低下させた食事を摂取する研究を行いました。下の表のように最初は総脂質34%で最終的には25%まで低下させます。飽和脂肪酸は最初15%で、最終が6.1%です。コレステロール摂取量は変化していません。当然、脂質を減らした分炭水化物摂取量が増加し、総エネルギー摂取量の48%→55%→59%となっていました。(表はここより改変)
AAD Assay | Step 1 Assay | Low-Sat Assay | |
---|---|---|---|
総脂質 % kcal | 34.3±0.5 | 28.6±0.2 | 25.3±0.5 |
飽和脂肪酸% kcal | 15.0±0.4 | 9.0±0.1 | 6.1±0.5 |
一価不飽和脂肪酸 % kcal | 12.8 ±0.1 | 12.9±0.1 | 12.4±0.1 |
多価不飽和脂肪酸% kcal | 6.5±0.1 | 6.7 ±0.1 | 6.7±0.1 |
コレステロール mg/d | 285 ±3.9 | 267±7.6 | 275±4.0 |
AAD | Step 1 | Low-Sat | |
---|---|---|---|
総コレステロール | 202.1±2.8 | 191.0±2.7 | 183.4±2.7 |
LDLコレステロール | 131.4±2.7 | 122.2±2.6 | 116.9±2.6 |
HDLコレステロール | 52.2±1.1 | 48.5±1.1 | 46.2±1.0 |
中性脂肪 | 85.1 ±3.4 | 92.4±3.7 | 93.0±3.7 |
Apo B | 116.8±2.4 | 113.6 ±2.6 | 111.6±2.6 |
Apo A-I | 142.2±2.0 | 135.4 ±2.0 | 130.4±1.9 |
Lp(a) | 15.5±1.8 | 17.0 ±1.8 | 18.2±1.9 |
TC/HDL | 4.07±0.10 | 4.16±0.11 | 4.21 ±0.11 |
総コレステロールやLDLコレステロールは低下し、HDLも低下してしまっています。中性脂肪は増加です。
そしてLp(a)は最大15%増加してしまっています。つまり、脂質、飽和脂肪酸を減らすと、有害と考えられているLp(a)は増加してしまうのです。
別の研究では、脂質からのエネルギー36%の中の飽和脂肪酸からのエネルギーの7%を炭水化物または一価不飽和脂肪酸に置き換えた食事を7週間ずつ摂取しました。(ここ参照)結果は同様で、炭水化物または一価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、総コレステロールとLDL、そしてHDLまでも減少しました。中性脂肪は炭水化物に置き換えた食事で増加しました。そしてLp(a)は、炭水化物置き換えで20%、一価不飽和脂肪酸置き換えで 11%増加しました。そうすると、Lp(a)も糖質過剰摂取で上がっているだけなのかもしれません。糖質制限では恐らく低下すると思います。例えば、家族性高コレステロール血症で糖質制限をされている方のデータでは、総コレステロールは529、LDLコレステロールは427ですが、Lp(a)は12.8でした。
さらに興味深いことに、カルニチンでもLp(a)は低下します。カルニチンはエネルギー産生、脂質代謝に重要で、脂肪酸をミトコンドリア内に運搬したり、生成された有毒な物質をミトコンドリアの外に運びだしたりしています。様々な研究のメタアナリシスでは、カルニチンの経口投与でLp(a) の有意な低下が観察されました。(ここ参照)
ところで、カルニチンを多く含む食材は何でしょう?赤身の肉、魚肉、鶏肉、牛乳などの動物性食物に豊富に含まれています。羊の肉が最も多いです。通常、肉の色が赤ければ赤いほど、カルニチン含有量が高くなるそうです。
さて、脂質(飽和脂肪酸)にしても赤肉にしても、心血管疾患にとってはリスクが高くなる食事であったはずです。しかし、Lp(a)にとってはその逆で、この脂質と赤肉はLp(a)を低下させるものなのです。
ちなみにアルコールもLp(a)を低下させるようです。(ここ参照)
以前の記事「5日間の高脂肪高エネルギー食負荷試験(人体実験) その2 リポタンパク質(a)Lp(a) あなたは何者?①」で示したように、通常よりも100g程度の脂質負荷を5日間続けたときに、Lp(a)は大幅に低下しました。
私の場合、24.5から9.2と半分以下になってしまったのです。
現時点で、私はLp(a)を薬で低下させても健康になるとはどうしても思えません。LDLコレステロールのスタチンと同様に、数値を下げることが目的となってしまう可能性があります。糖質過剰摂取を推奨し続けていれば、Lp(a)が高くなる人もいるでしょう。インスリン抵抗性や高血糖、糖質過剰摂取に言及することなく、Lp(a)の危険性だけを伝えて、高い薬剤をずっと処方し続けるということが起きる可能性があります。
今後もLp(a)に対する動きを注視していきたいと思います。次は体重減少とLp(a)について書きたいと思います。
自覚しているかいないかに関わらず、専門家が「間違った医療情報」を流布しても、
逆に医療業界は潤ったりして、というのはあまりに穿ち過ぎですかね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
もちろん、医療業界が潤わないと、企業はつぶれます。
そのために企業の〇は活躍します。どのような手段を選ぶかどうかは、その企業の考え方次第でしょう。