最近LDLコレステロールからLp(a)およびApoBにシフトしてきている その1

最近の循環器系の領域の動きを見ていると、LDLコレステロールからLp(a)やApoBに注目がシフトしてきているように感じます。

LDLコレステロール値の低下では、実際のところ多くの患者が改善しないことに気付き、治療のターゲットを別のものにしようとしているのかもしれません。もしかしたら、Lp(a)を低下させる薬の開発が進んできているのでしょうか?と思っていたら、やはり薬(ペラカルセン)が現在第3相試験中で2024年に終了するようです。(ここ参照)

ただ、私はいずれにしてもLp(a)やApoBを下げてもLDLコレステロールと同様な事にしかならないと思っています。また学会や専門家は、Lp(a)に注目しすぎると、様々な矛盾が生じてきてしまい、自分の首を絞めてしまう可能性もあります。

今回は、「アテローム性動脈硬化性心血管疾患および大動脈弁狭窄症におけるリポタンパク質(a): 欧州アテローム性動脈硬化学会のコンセンサス ステートメント 」の要点を見ていきます。(図は原文より)

上の図はLp(a) 値による臨床転帰のリスクです。大動脈弁狭窄症、虚血性脳卒中、心筋梗塞、心不全の絶対的および相対的なリスクは、Lp(a) 値が高いほど増加しているように見えます。Lp(a) 値が50~70mg/dLくらいでリスクが上昇しているようですが、虚血性脳卒中との関連はそこまで大きくないように見えます。一方、大動脈弁狭窄症だけはLp(a) 値の上昇に伴い右肩上がりでリスク増加に見えます。

コンセンサスの要点の中のLp(a)と臨床転帰として、

・高濃度の Lp(a) がアテローム性動脈硬化性心血管疾患、大動脈弁狭窄症 、心血管および全原因死亡の原因であることを示している。

・Lp(a) 値の上昇は、LDLコレステロールが非常に低い場合でも危険因子である。

・虚血性脳卒中および心不全のリスクは、心筋梗塞および大動脈弁狭窄症のリスクに関連するレベルよりも高い Lp(a) 値で増加する。

・小児では、Lp(a) >30mg/dLは、(再発性) 虚血性脳卒中のリスク増加と関連している。

・Lp(a) は静脈血栓塞栓症の危険因子ではない。

と書かれています。簡単に言えば学会としてはLp(a)は低いほど良いということでしょう。2つ目の「Lp(a) 値の上昇は、LDLコレステロールが非常に低い場合でも危険因子である。」というのですから、スタチンの有無にかかわらずLp(a)薬をどんどん使えるようにする布石でしょうか?面白いことにスタチンはLp(a)を上昇させるという研究まであります。(ここ参照)

小児にも言及しているので不気味です。

しかし、過去10年間の複数の研究では、非常に低いLp(a)値が 2 型糖尿病の発症リスクの増加と関連していることが示されています。以前の記事「ますます怪しいリポタンパク質(a)Lp(a) 糖尿病との関係」でも書いたように、Lp(a) が低いと前糖尿病、インスリン抵抗性、および高インスリン血症のリスクが増加するという報告もあります。

スタチンで糖尿病発症リスクが上がるのと似ている気がします。

糖尿病はアテローム性動脈硬化症や心血管疾患と大きく関連しています。Lp(a)が低いと糖尿病発症リスクが高くなるので、Lp(a)が高い方が良いのでは?となり、矛盾しているように思えてなりません。

さらに、Lp(a)を低下させる食事、栄養などを考えると矛盾が大きくなります。それについては次回以降で。

「Lipoprotein(a) in atherosclerotic cardiovascular disease and aortic stenosis: a European Atherosclerosis Society consensus statement」

「アテローム性動脈硬化性心血管疾患および大動脈弁狭窄症におけるリポタンパク質(a): 欧州アテローム性動脈硬化学会のコンセンサス ステートメント」(原文はここ

2 thoughts on “最近LDLコレステロールからLp(a)およびApoBにシフトしてきている その1

  1. 最近は糖質制限情報も多くて玉石混交ですが、このブログの良いところは信頼性の高い研究などの情報、逆に
    フェイク的な研究の分析など、読み応え、説得力が大きいです。
    ネットに留まらず、書籍として発信されているところも信憑性が高い、と個人的に感じております。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ありがたいお言葉ありがとうございます。
      今後もできる限り有用な情報を発信していければと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です