亜鉛不足の人が非常に多く認められます。新型コロナウイルスの後遺症との関連も指摘されています。(「新型コロナウイルス感染と後遺症」参照)
亜鉛の重要性が話題になるにつれ、亜鉛不足の指標としてALP(アルカリフォスファターゼ)を使用して、評価している人もいます。しかし、以前の記事「2022年4月の血液検査データ」で書いたように、ALPは亜鉛の指標には成りえません。そもそもALPは主に胆道や肝臓の細胞や骨、小腸に多く含まれ、これらの臓器に障害が発生すると、血液中に流れ出す量が増加する逸脱酵素です。逸脱酵素が高いのを喜んでいるのは不思議です。
ALPは亜鉛の過不足のマーカーというより、やはり様々な疾患のマーカーです。だから、ALPが高いこと(基準値の範囲でも)は亜鉛が充足していることを意味する前に、何らかの不具合が起きていることを考えるべきです。
今回の研究はALPと脳卒中のリスクの関連についてです。45~75歳の高血圧の成人19,747人を対象としています。ALPの値で、4つのグループに分けています。ベースラインALPが79IU/L未満、79〜96IU/L未満、96~118IU/L未満、118IU/L以上です。ALPの正常範囲は20〜140IU/Lとしています。(図は原文より)
4つのグループのベースラインの状態には違いがあります。ALPの高い群は女性が多く、年齢が高く、収縮期血圧が高く、拡張期血圧は低く、BMIは低く、現在の喫煙や飲酒は低く、アルブミンは高く、ASTやALTやγGTは高く、抗血小板薬および降圧薬の使用頻度が低くなどの違いがあります。ALPが高い群のほうが様々な数値が悪いわけではないようです。
追跡期間の中央値4.5年の間、ALPと最初のすべての脳卒中発症リスクとの有意な正の関係がありました。ALPが最も低い79未満の群と比較して、最も高い118以上の群のリスクは1.47倍でした。1SD増加あたり、リスクは10%増加しました。最もALPが低い群と比較して、それよりも高い群、つまりALPが79以上の群ではリスクが1.38倍でした。最初の虚血性脳卒中(脳梗塞)のリスクは、ALP79未満の最も低い群と比較して、それよりも高いALP79以上の群ではリスクが1.37倍で、1SD増加あたりリスクは12%増加しました。出血性脳卒中のリスクは有意ではありませんが、ALP79未満の最も低い群と比較して、それよりも高いALP79以上の群ではリスクが1.57倍で、1SD増加あたりリスクは5%増加しました。
上の図は様々な違いによるリスクの違いです。ALP79未満の最も低い群と比較して、それよりも高いALP79以上の群では、男性で1.38倍、女性で1.39倍、60歳未満では1.69倍、BMI24以上で1.51倍、現在の非喫煙者で1.48倍、現在の非飲酒で1.49倍、収縮期血圧160未満で1.69倍、160以上でも1.30倍、総コレステロール240未満1.32倍、240以上でも1.50倍、血糖値110未満で1.40倍、アルブミン4.83以上で1.48倍などほとんどの条件で、ALPが低くないことは脳卒中のリスク増加となっていました。
正常範囲であっても、ALPレベルが高いほど、一般的な高血圧の成人の最初の脳卒中のリスクが高いことに有意に関連していることを示唆しています。
フェリチンが鉄の貯蔵の十分な指標とはならないのと同様に、ALPは亜鉛の指標とは言えません。正常範囲の中でALPが高いことを喜んでいてはいけません。血液検査データは1対1対応をしているわけではないので、いくつものデータで総合して考えなければなりません。
ちなみに私の最新のALPは、46(基準値38~113)です。でも亜鉛は低くありません。
「Positive Association Between Serum Alkaline Phosphatase and First Stroke in Hypertensive Adults」
「高血圧成人における血清アルカリホスファターゼと初回脳卒中との正の関連」(原文はここ)
亜鉛が大事な成分なのはわかりますが、自分の値がどんなもんか、不明です。
ただ、亜鉛が含まれているというルイボスティーは毎日飲んでます。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
一応、血中の亜鉛を測定することはできます。しかし、体の中のごく一部ですので、
それが完全に総亜鉛量を反映しているかはわかりません。
清水先生、こんばんは。
亜鉛とALPの関係を調べていたら「当院健診受診者における血中亜鉛濃度の世代別調査について」の報告がありました。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhep/46/2/46_273/_pdf/-char/ja
この中で、血清 ALP 活性値と血清亜鉛値との比較の図があります。
亜鉛とALPの相関係数はr=0. 1277と 2 項目間において正の相関が認められた(Pearson の相関係数、p<0. 05)、血清 ALP 活性値低値の場合、潜在的な亜鉛欠乏の可能性があることが考えられる、との記載があります。
しかし、相関係数が0.1277では、ほとんど無関係と言える程度のものですね。p<0.05と言っても、n数が多いからであって、意味はないと思います。
じょんさん、コメントありがとうございます。
今回の記事にリンクをはってある以前の記事「2022年4月の血液検査データ」で取り上げたものと同じですね。
仰るとおり、ほとんど相関関係はありません。もちろんALP低値は亜鉛欠乏の可能性も考えられるのですが。