「その1」では、ALPと脳卒中のリスクの関連について書きました。もうちょっと違う研究を見てみましょう。
今回の研究では神経学的に健康な1,011人の人の血管危険因子、脳のMRI、MR血管造影を評価しました。無症候性ラクナ梗塞 (SLI) および中等度から重度の脳白質過信号 (MS-cWMH) の存在は、脳MRI上の脳小血管疾患の指標として評価されました。頭蓋外動脈狭窄 (ECAS) または頭蓋内動脈狭窄 (ICAS) の所見は、MR血管造影上の大脳動脈狭窄(LCAS)の指標と見なされました。
平均年齢64.2歳で、64.5%が女性でした。平均ALP値は183.06IU/L でした。今回の研究のALPの正常値は40~250IU/Lです。ALPによりALP≤155、156〜194、≥195の3つのグループに分けました。(図は原文より)
上の図はALPと無症候性ラクナ梗塞 (SLI) 、中等度から重度の脳白質過信号 (MS-cWMH)、大脳動脈狭窄(LCAS)、頭蓋内動脈狭窄 (ICAS) 、頭蓋外動脈狭窄 (ECAS) の可能性を示しています。大脳動脈狭窄(LCAS)、頭蓋内動脈狭窄 (ICAS) 、頭蓋外動脈狭窄 (ECAS) は差がありませんでしたが、最もALPが低いグループと比較して最も高いグループでは無症候性ラクナ梗塞 (SLI) が約2倍、中等度から重度の脳白質過信号 (MS-cWMH)が約1.5倍でした。そしてALPが10増加するとSLIの可能性は5%、MS-cWMHの可能性は3%増加していました。
上の図は、ALPとSLI、MS-cWMHの存在の確率を示しています。ALPが増加するとそれらの確率が増加しています。
脳小血管疾患 (cSVD) は、脳の小さな動脈の閉塞を伴う脳血管疾患です。サイレント脳梗塞(いわゆる隠れ脳梗塞)および脳白質高信号 (cWMH) は、健康な人にも時折見られる脳小血管疾患のマーカーです。症状は無くて一見健康に見えますが、将来的な脳卒中のリスクが3倍以上、認知症のリスクは2倍以上増加します。(こことここ参照)
さらに正常範囲内のALPであってもALPが高い場合、脳卒中後の長期の死亡率を高めます。(ここ参照)
ALPは肝機能のマーカーでもありますが、骨病変のマーカーでもあります。つまり、アテローム性動脈硬化症および血管の石灰化のマーカーでもあるのです。亜鉛との関連は非常にわずかで、ALPが高い場合それが亜鉛充足によるものなのか、血管の石灰化によるものなのか、代謝の異常によるものなのか判断できません。
動脈硬化や血管の石灰化のマーカー、肝機能および代謝異常のマーカーと考える場合にはALPは低い方が良いのです。恐らく糖質制限をちゃんとするとALPは低下してくるのではないでしょうか?(データはとってませんが)
ALP=亜鉛の指標と思っている人は要注意でしょう。
「Association between Serum Alkaline Phosphatase Level and Cerebral Small Vessel Disease」
「血清アルカリホスファターゼレベルと脳小血管疾患との関連」(原文はここ)
明らかな脳卒中でない「隠れ脳梗塞」でも、身体機能や認知面も影響はあるのでしょうね。
糖質制限で血管の健康も保ちたいものです。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
血管が詰まっても糖質の怖さがわからない人や、糖質をやめれない人がほとんどでしょう。