高LDLコレステロールおよびスタチンの騙しのテクニック

医療の世界はいつの間にかEBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づく医療)が当たり前になってしまいました。もちろん良いこともありますが、データが捏造されたり、操作されたり、都合が悪い結果は隠されたりして、エビデンス自体が歪んでしまっています。最近でもファイザーの新型コロナウイルスのワクチンの95%感染予防効果の数字もあまりにも現実とはかけ離れている数字であり、中身を見ればデータが操作されていることに簡単に気づくでしょう。

恐らく、製薬会社主導でEBMは医療に持ち込まれ、これまでも製薬会社の良いように扱われているでしょう。しかし、様々な研究の結果の数字しか見ず、中身をちゃんと確認していない医師が増加し、数字だけが独り歩きし、それが医療の中での根拠となってしまうため、一回定着してしまった考えはなかなか訂正されないことになってしまっています。

その代表的な医学の「常識」が高LDLコレステロールとその治療薬のスタチンです。絶対リスクと相対リスクを上手く使い、医師や世間に対する宣伝に成功しました。今やちょっとでもLDLコレステロールが高いと医師は大騒ぎで、スタチンを処方しようとします。

明らかに高LDLコレステロールに関するリスク、それに対するスタチンの効果も過大評価されています。(図は原文より)

上の図はコレスチラミン(スタチンではありません)というコレステロールを低下させる薬とプラセボとの比較です。この研究の結果は、コレスチラミンが冠動脈疾患の死亡率を24%低下させるというものでした。しかし、24%低下というのは相対的なリスク低下です。実際の絶対的なリスクはプラセボ群では2.0%(38/1,900)、コレスチラミン群では 1.6% (30/1,906) であり、絶対差は0.4%であることを示しています。(図は間違いでコレスチラミンとプラセボが逆になっています)さらに、コレスチラミン群では何らかの原因による死亡が68人、プラセボ群では71人(3.7%対3.6%)で、この差は統計的に有意ではありませんでした。

スポンサーがお金を出した研究でさえ絶対リスクが0.4%しか違いが無く、さらに全原因死亡率では違いがありません。

 

上の図は総コレステロール値(横軸)と冠動脈疾患の死亡率(縦軸)を示しています。赤が相対リスク、水色が絶対リスクです。総コレステロールが一番左の150を1とすると相対リスクは総コレステロール290以上ではおよそ4倍です。しかし、水色の総コレステロールに対する絶対リスクのグラフを見てみると、何が違うのかもわからないほどの差です。水色のバーは、コレステロールに対する生存率の観点から冠動脈の絶対リスクを示していて、破線は99%です。総コレステロール値がどのような値でも生存率が約99%であったことを示しています。実際に総コレステロール150では生存率は99.7%であり、290以上では生存率は98.7%でした。6年間での冠動脈死亡率の差はわずか約1%なのです。

死亡率が4倍とおよそ1%の違いでは与える印象は全く違います。

上の図は心筋梗塞死亡率に対するロスバスタチン(クレストール)の効果を示した有名なJUPITER試験のものです。これまでと同様に相対リスクはプラセボ群に対しスタチン群で54%の低下を示しました。しかし絶対リスクは0.35%対0.76%と0.41%の違いしかありません。頑張ってもこの程度の違いしか得られないので、実際の臨床では全く意味がないでしょう。スタチンの多様な副作用を考えると必要のない薬としか思えません。さらにJUPITER試験は4年間実施する計画にもかかわらず、2年未満で終了しています。よほど都合が悪かったんでしょう。

他の研究でも、都合の良いように受け取られるように利点は大きく見せるように相対リスクで示し、副作用などの都合の悪いことは絶対リスクで示すことにより、受け取り手を騙しています。

 

上の図はこれらの絶対リスクと相対リスクの見せ方によって医師および患者の意思決定にどれほどの違いを与えるかを示しています。コレステロールの低下効果が相対リスクとして提示された場合、医師の77%が薬の処方に同意し、88%の患者が薬の服用に同意しました。対照的に、データが絶対リスクとして提示された場合、薬の処方に応じる医師は24%のみで、薬の服用に応じる患者は42%でした。つまり、一般の患者だけでなく医師も単純で、数字だけを見て意思決定をしてしまっている可能性があります。薬の有効性や検査データに対する人々の信頼にどのように影響するかは、これだけで変わってしまうのです。

それを知っている製薬会社や一部の専門家は上手く数字を使い、人々の意思決定に大きな影響を与えるようにしているのです。

一度信頼してしまった、正しいと思ってしまった知識はなかなかアップデートされません。スタチン医者もコレステロールが不健康であるという一般の人も、コレステロールは高くても問題ないと言ってもなかなか信じないでしょう。

信じるか信じないかはその人の課題です。コレステロールが低くても心血管疾患になる人はいっぱいいます。糖質過剰摂取をコレステロールのせいにしようとする専門家もいっぱいいます。糖質制限をするかしないかは同様にその人自身の課題です。糖質過剰摂取をして糖尿病の標準治療を続けて、どんどん悪化しても、気付かない人はいっぱいいます。

よく考えて自分でしっかりと判断しましょう。

 

「Historical Review of the Use of Relative Risk Statistics in the Portrayal of the Purported Hazards of High LDL Cholesterol and the Benefits of Lipid-Lowering Therapy」

「高 LDL コレステロールの危険性と脂質低下療法の利点の描写における相対リスク統計の使用の歴史的レビュー」(原文はここ

2 thoughts on “高LDLコレステロールおよびスタチンの騙しのテクニック

  1. ドングリの背比べ、目クソ鼻くそ
    という言葉もありますが、
    俯瞰すれば差はないものが、
    大袈裟に喧伝される現象。

    大切な健康や医療費に関わる
    薬の効能の喧伝には
    使ってはいけないですね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      マッチポンプが今の医療の基本になりつつあるのかもしれません。
      できる限り薬を飲む人を増やし、その副作用でさらに薬を処方。
      ずっと患者は患者であり続けます。

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