中性脂肪/HDLコレステロール比の増加は腎機能低下のリスクを上げる

世の中一般的にはLDLコレステロールばかりが注目され、一般の人でもLDLコレステロールは気にしますが、中性脂肪値やHDLコレステロールはあまり関心がありません。医師も同様です。患者にHDLコレステロールが低いことを指摘しても、中性脂肪が高いことを指摘しても、これまではLDLコレステロールは言われたことがあるけど、HDLや中性脂肪のことは何も言われていないという反応が多いです。

これまでも何度も書いていますが中性脂肪/HDLコレステロール比は非常に有用なマーカーだと思っています。これはインスリン抵抗性を示しています。

今回の研究ではこの中性脂肪/HDL比と腎機能低下の関連を日本人で調べました。39歳から74歳までの124,700⼈が対象です。中性脂肪/HDL比は日本の単位で、中性脂肪値(mg/dL)をHDLコレステロール値(mg/dL)で割ったものとして計算しています。eGFRの低下と尿中タンパク排泄の増加との関連はどうでしょうか?

中性脂肪/HDL比は4つのグループに分け、対象者全体では、低い方から男性では1.26未満、1.26~1.96、1.97~3.14、3.14以上、女性では0.97未満、0.97~1.45、1.46~2.24、2.24以上です。慢性腎臓病の有無で分けた場合には少し値が変わります。

ただ、中性脂肪/HDL比はインスリン抵抗性を表しているので、この値でグループ分けすると、ほとんどの特徴に大きな差が出てしまいます。BMIや糖尿病や高血圧などの有病率などは中性脂肪/HDL比が高いほど高くなっていました。

上の図はeGFRの変化と尿タンパク排泄の増加の可能性です。中性脂肪/HDL比が高いほどeGFRの低下が大きく、尿タンパク排泄の増加の可能性も高くなっています。

上の図は慢性腎臓病のない人の慢性腎臓病、低eGFR、タンパク尿の可能性です。先ほどと同様に、中性脂肪/HDL比が高いほどそれらは起きやすいですね。

上の図は、性別、糖尿病の有無、高血圧および肥満の有無による慢性腎臓病の可能性です。これも同様で、男性でも女性でも、糖尿病や高血圧や肥満があってもなくても中性脂肪/HDL比が高いほど慢性腎臓病は起きやすいです。

上の図は慢性腎臓病の人のeGFRのカテゴリーの低下、急速なeGFRの低下、30%を超えるeGFRの低下、尿タンパク排泄増加の可能性です。これも同様で中性脂肪/HDL比が高いほど腎障害の悪化が起こりやすくなります。

腎機能が低下してくると、以前よりタンパク質の摂取量を減らすように言われてきました。当然、心血管に対して脂質の摂取量も少なくするように言われるので、腎障害のある人は、それを真に受けるとどうしても糖質過剰摂取にならざるを得ません。そしてインスリン抵抗性が増加し、中性脂肪/HDL比も高くなるのでしょう。〇〇の思惑通り?

肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II」の腎臓病パンデミックの項目で書いたように、透析の原因の約40%は糖尿病によるものであり、その他の原因もほとんどが糖質過剰摂取によるものと考えられます。

腎臓を健康に保ちたいのであれば、糖質制限でしょう。腎疾患の多くは糖質過剰症候群です。

「Impact of the Triglycerides to High-Density Lipoprotein Cholesterol Ratio on the Incidence and Progression of CKD: A Longitudinal Study in a Large Japanese Population」

「CKDの発生率と進行に対する中性脂肪とHDLコレステロールの比率の影響:日本人大集団を対象とした縦断的研究」(原文はここ

One thought on “中性脂肪/HDLコレステロール比の増加は腎機能低下のリスクを上げる

  1. CMでは腎機能検査を盛んに勧めてくださいますが、このような本当に有用な情報はなかなかお伝えくださいません。

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