糖尿病の期間が長くなるほど酸化LDLは増加する

LDLコレステロールを運ぶLDLの酸化は酸化ストレスの増加によって起こると考えられます。酸化ストレスは糖質過剰摂取による高血糖で特に増加するので、糖尿病では酸化LDLが増加しています。一方、糖尿病ではアテローム性動脈硬化が進行しているので、LDLコレステロールを⼀定レベル以下に維持することが広く推奨されています。LDLコレステロールを低下させれば酸化LDLは減少するのでしょうか?

今回の研究では、糖尿病期間が5年以上の2型糖尿病患者36人、新たに糖尿病と診断された患者36人、年齢、性別、BMIが一致する健康な参加者36人を比較しました。新たに糖尿病と診断された患者は、経⼝⾎糖降下薬、アスピリン、インスリン、スタチン、および降圧薬を服⽤していませんでした。糖尿病期間が5年であるすべての患者は、望ましい(?)LDLコレステロール値(100mg/dL)でした。(図は原文より)

上の図はそれぞれのグループの特徴です。空腹時血糖は健康な人で90mg/dL、新たな糖尿病で187mg/dL、糖尿病期間が5年の人で208mg/dLでした。LDLコレステロールは健康な人で106mg/dL、新たな糖尿病で117mg/dL、糖尿病期間が5年よりも長い人では90mg/dLで、糖尿病期間が5年のすべての患者は、望ましい(?)LDLコレステロール値(100mg/dL)でした。スタチンを使⽤していたのは12⼈(33.3%)でした。

上の図AはそれぞれのグループのLDLコレステロールと酸化LDLです。Bは酸化LDL/LDLコレステロール比です。左から健康なコントロール、真ん中が新たな糖尿病、右が糖尿病5年より長いグループです。糖尿病が5年より長いグループでは他のグループと比較してLDLコレステロールが有意に低いにも関わらず、またスタチンを飲んでいる人が多いにも関わらず、酸化LDLが有意にほぼ2倍に増加しています。酸化LDL/LDLコレステロール比も同様で糖尿病期間が長いグループは他のグループの2倍以上です。

上の図は横軸が糖尿病の年数、縦軸が酸化LDLです。糖尿病期間が長くなるほど酸化LDLが増加しています。

つまり、酸化LDLはLDLコレステロール値とは無関係なのです。酸化LDLは血糖値と関連していると考えられます。

ただ、酸化LDLがアテローム性動脈硬化の原因だとは私は考えていません。血中濃度が非常に低いので、これはアテローム性動脈硬化のマーカーであり、アテローム性動脈硬化の病変部から漏れ出てきたのではないかと考えています。そして、まだ酸化LDLがどのようにできるかのメカニズムは解明されていません。糖質過剰摂取による高血糖でLDLの糖化が起こり、それにより酸化されやすくなり、また高血糖による酸化ストレスの増大で酸化LDLができるのではないかと推測しています。

酸化LDLの増加はLDLコレステロールとは独立しています。一応一般的にはスタチンは酸化LDLを低下させると考えられています。(ここ参照)スタチンの抗炎症作用の影響なのかもしれませんが、今回の研究では3分の1がスタチンを使用していたにも関わらず、最も酸化LDLが高い状況になりました。

糖尿病でスタチンを飲んでもアテローム性動脈硬化が良くならないのは、その原因がLDLコレステロールでも、酸化LDLでもないからでしょう。また、糖質過剰摂取の影響がスタチンの効果に勝るからでしょう。

コレステロールは何も悪くありません。宅配業者のトラック(LDL)がたくさんあるとして、そのトラックはほとんどはちゃんと整備されたトラック(良質はLDL)で、ほんの一部壊れて事故を起こしそうなトラック(酸化LDLやsdLDL)だった場合、事故を減らすために、宅配の荷物(コレステロール)を減らしても事故は減らないでしょう。事故を起こしそうなトラックは非常に質の悪いオイル(糖質)を使っていたり、部品が非常に錆びて(酸化)いたりしているとすれば、重要なのはそれらの悪い要素を取り除くことです。荷物を減らしても無駄です。酸化するのはあくまでリポタンパク質(LDLやHDL)です。

まずは糖質制限です。

「Serum oxidized-LDL is associated with diabetes duration independent of maintaining optimized levels of LDL-cholesterol」

「血清酸化LDLは、LDLコレステロールの最適なレベルの維持とは無関係に、糖尿病の期間と関連している」(原文はここ

 

3 thoughts on “糖尿病の期間が長くなるほど酸化LDLは増加する

  1. お早うございます。糖質にさらされた期間もですが、治療薬?の使用期間の長さも酸化LDL増加に関係有るかもしれませんね。新井先生の本(糖尿病に勝ちたければインスリンに頼るのをやめなさい)に治療をしていなかったお年寄りが合併症を起こしていなかったとあったように思います。原因を理解せず、対症療法で生体をいじりまわしてもダメ、絶対。

    1. ミンミンさん、コメントありがとうございます。

      もちろんです。インスリンそのものやインスリンを分泌させる薬は、脂質をエネルギーにできなくさせるので、
      解糖系がバンバン回って酸化ストレスがドンドン増加するでしょう。

  2. LDL始め、悪玉扱いで治療の標的にされているコレステロール。
    ある意味、糖質過剰摂取の「被害者」ですね。

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