片頭痛の治療のための糖質制限

糖質制限をすると多くの片頭痛が改善します。そしてケトン食と片頭痛の改善を示した研究はいくつもあります。

古典的なケトン食では、脂質と非脂肪(炭水化物+タンパク質)の比率は通常、3:1または4:1です。つまり、脂質の摂取量は非脂肪の3〜4倍です。今回の研究ではこの比率を2:1にしています。

低グリセミックインデックス食(LGID )は、1 日の脂質摂取量が60%と多く、グリセミックインデックス(GI)が50未満の炭水化物を40~60g摂取し、タンパク質摂取量が約30%です。ほぼスーパー糖質制限食と同様です。

まあ、どちらもケトン体が上昇し、血糖値の変動は非常に少なくなる食事です。

この2つの食事を高頻度のエピソードまたは慢性片頭痛を患う患者60人に行いました。低グリセミックインデックス食(LGID)が39人、 2:1 ケトン食が21人で3か月間食事で治療しました。どちらの食事をするかというのはBMIによって決定されました。BMIが25~29.9ではLGID、BMIが18.5〜24.9では2:1 ケトン食となりました。

どちらも炭水化物は1日30gに固定されました。摂取エネルギーはLGIDで1300~1500kcal、ケトン食で1600~2300kcalでした。

LGID群の23人の患者は慢性片頭痛を呈し、16人は高頻度エピソード性片頭痛で、ケトン食群では、21人中10人の患者が慢性片頭痛を呈し、残りは高頻度エピソード性片頭痛でした。

頭痛の評価はMIDAS(Migraine Disability Assessment Test)とHIT-6(Headache Impact Test 6)というもので評価しました。(詳細は省略)(表は原文より改変)

ベースライン3か月後
LGID
 MIDAS75.821±80.49332.051±52.307
 HIT-663.905±8.85452.714±11.538
 片頭痛の日数/月18.744 ± 8.4789.154 ± 10.676
 片頭痛の強度 (NRS)8.051±1.0754.846 ± 2.852
慢性LGID
 MIDAS84.174 ± 89.29444.652±64.558
 HIT-664.783 ± 6.46655.870±12.871
 片頭痛の日数/月24.435±6.30212.522 ± 12.616
 片頭痛の強度 (NRS)7.739 ± 0.9645.000±2.908
エピソードLGID 
 MIDAS63.813 ± 66.77413.938±15.004
 HIT-663.813 ± 9.38952.625±12.842
 片頭痛の日数/月10.563 ± 1.6724.313 ± 3.591
 片頭痛の強度 (NRS)8.500±1.0954.625 ± 2.849
2:1 ケトン食
 MIDAS69.762 ± 58.66531.524±52.018
 HIT-661.231±11.84053.250±16.341
 片頭痛の日数/月15.857 ± 8.3746.476 ± 5.776
 片頭痛の強度 (NRS)8.143 ± 0.7935.857 ± 2.744
慢性2:1 
 MIDAS97.900±73.84752.500±69.728
 HIT-666.200±6.84454.700±20.106
 片頭痛の日数/月22.100±8.3868.800±6.697
 片頭痛の強度 (NRS)8.500±0.7076.000±2.449
エピソード2:1 
 MIDAS44.182±21.53112.455 ± 13.995
 HIT-666.727±5.04250.909±12.169
 片頭痛の日数/月10.182±1.6014.364 ± 4.007
 片頭痛の強度 (NRS)7.818±0.7515.727 ± 3.101

上の表のように、両グループの片頭痛の月当たりの日数、強度、HIT-6、MIDAS はすべて大幅な減少が見られました。

ベースライン3か月後
LGID
 体重74.756 ± 15.01368.821 ± 13.516
 BMI26.731 ± 5.33124.556 ± 4.704
 FM24.197 ± 10.46518.113 ± 9.991
慢性LGID
 体重73.709 ± 13.04267.596 ± 10.972
 BMI26.835 ± 3.78224.516 ± 2.938
 脂肪量24.200 ± 7.03317.391 ± 5.959
エピソードLGID
 体重76.263 ± 17.81670.581 ± 16.753
 BMI26.581 ± 7.14024.613 ± 6.586
 脂肪量24.194 ± 14.31518.863 ± 14.169
2:1 ケトン食
 体重63.819 ± 12.64059.819 ± 10.872
 BMI21.814 ± 2.68120.386 ± 2.059
 脂肪量15.900 ± 6.19712.476 ± 4.589
慢性2:1 
 体重62.480 ± 11.68358.310 ± 9.167
 BMI21.740 ± 2.40920.350 ± 1.466
 脂肪量15.110 ± 7.72011.830 ± 5.383
エピソード2:1 
 体重65.036 ± 13.90261.191 ± 12.506
 BMI21.882 ± 3.02320.418 ± 2.558
 脂肪量16.618 ± 4.68813.064 ± 3.904

上の表のように、当然ですが、体重もBMIも脂肪量もどれも減少しました。

現在では、片頭痛の予防薬として抗CGRPモノクローナル抗体製剤が発売されて、1か月当たりの片頭痛日数50%以上減少は60%程度、75%以上減少は30%程度のようです。非常にお高い薬で、1か月に1本で3割負担でも12,000~13,000円くらいだそうです。薬の効果は、今回の研究のように食事を変更しただけで改善できるのと変わりないですね。糖質制限で顕著に改善する場合、糖質制限を始めて次の日から、一度も痛み止めなどの薬が必要なくなった方もいます。

片頭痛はまずは糖質制限です。食事を変えずに薬だけで治療や予防をすると、一生医療に依存しなければなりません。

「2:1 ketogenic diet and low-glycemic-index diet for the treatment of chronic and episodic migraine: a single-center real-life retrospective study」

「慢性および反復性片頭痛の治療における 2:1 ケトン食と低グリセミックインデックス食: 単一施設の実生活のレトロスペクティブ研究」(原文はここ

7 thoughts on “片頭痛の治療のための糖質制限

  1. 加齢に伴って、
    食事量や回数が少ないほうが
    体調が良い。

    拒食症の人もこんな感覚なので
    しょうか。

  2. 先生、こんにちは。
    糖質制限開始から7年くらい??でしょうか?若い頃からの片頭痛改善を期待していましたが…
    私にとっては効果が無くて!
    そこで、今回の記事にあります、あのお高〜い薬を日本発売直後から使用していました。
    これが著効で、これまで月に10回あった片頭痛が0回から1回くらいに減り、本当に快適な日々を送っておりました。

    この注射薬を使い始めて2年以上経過したところで主治医と相談の上、一回やめてみましょうか、という事になりまして一旦中止、そこから2ヶ月以上経ちましたが再発はしていません。(なんといっても、一般人の私にはあまりにも高すぎます。)
    いつまで快適が長持ちするかわかりませんが。
    この頭痛、私は女性ですので月経や何かが関係していることもあるようですが…

    とにかく何をやっても治らない頭痛でした。
    私も医療のお世話になり続けるのはイヤなのですが、また頭痛が再発するのも怖いです。

    頭痛の原因、他に何か考えられることがあるのでしょうか。
    食べ物飲み物、ストレス?
    色々あるのでしょうけど…

    1. みみさん、コメントありがとうございます。

      糖質制限で改善なく残念です。
      片頭痛の人は、遺伝的にマグネシウムを吸収できないことや腎臓でのマグネシウム喪失が多いなどとも言われています。
      マグネシウムをもっとたっぷりと摂取するのが必要かもしれませんね。
      もちろん、ストレスはマグネシウムが低下しますし、人工甘味料のアスパルテームも片頭痛の原因となる可能性がありますので、
      避けた方が良いでしょう。
      このまま再発しないと良いですね。

  3. 私の片頭痛発作は、頭痛はあまり無いのですが、手足、特に足の脱力(ひどくなるとステッキがないと歩けない)と吐き気(時に嘔吐に至ります)が主です。
    元々緩い糖質制限をしていたのですが、片頭痛の吐気があるので消化が良い食べ物を摂取しようと糖質制限を緩めたところ、逆に片頭痛の発作がひどくなりました。
    糖質制限に戻したところ、症状と頻度は改善しました。
    緩い糖質制限に戻したくらいでは大きな改善はありませんでしたが、尿の量と色から見てケトン尿が出ているだろうと思われるほど強めの糖質制限にして、ようやく症状と頻度が改善しました。まだ数か月しかたっていないので、継続してみます。

    1. ゲッシーさん、コメントありがとうございます。

      症状の改善良かったですね。
      消化が良い食べ物を摂取すると糖質制限が緩むというのは少し誤解があるかもしれませんね。
      肉や魚などのタンパク質は消化に良いですよ。
      また、ケトン尿は色ではわからない気がします。匂いの方が違いがあるかもしれません。

  4. 昔、糖質制限を本格的に始めたころ、尿ケトン濃度を調べる試験紙を使っていたので、自分の場合の尿の色、量と尿ケトンとの関係は経験しています。
    尿中にケトン体が出る状態では、もちろんアセトン臭も出てきますが、尿量が減り色が濃くなりました。
    糖質制限をしていない場合、血糖値が上がり追加インスリン分泌が出て、インスリンによる原尿からのブドウ糖の再吸収が起き、同時に原尿からのナトリウムの再吸収も起き、血中ナトリウム濃度が高いままになり、これを一定にするために水分を追加摂取することになるので尿の色が薄くなるようです。
    糖質制限を継続すると、追加インスリン分泌があまり出ず、インスリンによる原尿からのブドウ糖の再吸収とナトリウムの再吸収が少なくなり、血中ナトリウム濃度は低くなるので水分を追加摂取する必要が無く、その分尿の量が減り色も濃くなるようです。

  5. つい「消化が良い・悪い」と書いてしまいました。
    糖質制限食は油脂が多くなるので、片頭痛発作時には胸やけ・吐気・嘔吐につながりやすいというのが私の経験です。
    片頭痛発作時には、億劫さも症状として出るので、油脂の少ない簡単な食事をとろうとすると、結果糖質が多くなりました。

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