スタチンとタンパク尿

日本臨床内科医会のホームページにはタンパク尿について次のように書かれています。

タンパクはからだにとって大切な構成成分ですから、健康であればほとんど尿に混ざりません。しかし腎臓に病気が起きると、ろ過機能をもつ糸球体 をタンパクが通過して尿に出るようになります。本来は糸球体を通過しないはずのタンパク成分が通過してしまう状態は、糸球体そのものにとっても負担になります。そのため、病気によって尿にタンパクが出ること自体が、病気の進行を早めます。

もちろん、良性のタンパク尿もあるでしょうが、運動誘発性のタンパク尿でさえ、代謝障害と関連している場合があると思います。(これについてはいつか書きたいと思います)

さて、LDLコレステロールが高いときに大騒ぎする医師が積極的に処方したがるスタチンですが、スタチンはタンパク尿との関連性を指摘されています。

ある研究を見てみると、12週間のスタチン(ロスバスタチン)治療でタンパクの中でも尿中のα1ミクログロブリンが増加しました。(ここ参照)しかも、使用量が増加するとα1ミクログロブリン排泄も増加しました。

この研究の結論では、ロスバスタチン治療が、腎機能に悪影響を与えることなく、用量依存的にα1ミクログロブリンの尿中排泄を増加させることを示している、としています。12週間しか行っていないので、その後腎機能が低下してくる可能性はあります。α1ミクログロブリンは近位尿細管障害により尿中排泄が増加します。本当に大丈夫なのでしょうか?

また別の研究を見てみましょう。(ここ参照)微量アルブミン尿は通常30mg/dLですが、今回は20mg/dL以上と定義しています。1,076人の高血圧患者を対象に、スタチンの使用の有無で微量アルブミン尿が出る可能性について分析しました。心血管リスク因子に基づいてスタチン投与を受ける傾向を調整した後でも、スタチン使用者は1.82倍微量アルブミン尿が出る可能性が高くなりました。スタチン以外では糖尿病で1.92倍、喫煙で1.49倍でした。

この研究の結論では、スタチンの使用により、心血管または腎臓のリスクの予測因子またはマーカーを持っているという誤ったラベル付けが行われる可能性がある、と書かれています。本当に誤ったラベル付けなんでしょうか?

他の研究も見てみましょう。(ここ参照)約100万人の新規スタチン使用者(ロスバスタチン152,101人、アトルバスタチン795,799人)を追跡調査中央値3年間で比較しました。以前に血尿またはタンパク尿を患っていない患者が対象です。

血尿は3年間でロスバスタチン群では3.4%で発生したのに対し、アトルバスタチン群で2.8%で発生しました。eGFRが30未満の患者における血尿の発生率は、eGFRが60を超える患者よりも2倍高くなりました。

タンパク尿(尿中タンパク≧2+または尿アルブミン対クレアチニン比≧300mg/gとして定義)の発生率は、ロスバスタチンで1.2%、アトルバスタチンで0.9%(n = 7495)でした。eGFRが30未満の患者ではリスクが9倍高くなりました。アトルバスタチンと比較して、ロスバスタチンは用量が多いほどタンパク尿と血尿、透析などの代替療法のリスクが1.15倍高くなりました。血尿まで増やして、特に腎機能が低下している人にとって、スタチンは安全でしょうか?

もう一つ研究を見てみましょう。(ここ参照)観察コホート研究の3440人のうち、477人(13.9%)がスタチンを使用し、2963人は研究期間4.2年間中にスタチンを一度も使用したことがありませんでした。

スタチン非使用の尿中アルブミン排泄3.6%増加と比較して、スタチン使用は尿中アルブミン排泄12.1%増加となりました。そしてスタチン使用者の尿中アルブミン排泄増加は、スタチンを以前から継続的に使用した人で24.8%増加、スタチンの1日の量が最も高い人で17.3%増加、使用期間が最も長い人18.5%増加、プラバスタチンを使用している人で22.3%増加でした。

スタチン使用者は非使用者と比較して、尿中アルブミン排泄のカテゴリー分類で進行するリスクが1.49倍でした。以前より継続使用している人では尿中アルブミン排泄のカテゴリー分類で進行するリスクが1.71倍、累積期間が1~3 年の人で1.70倍でした。

糸球体濾過量(GFR) の変化は、スタチンを非使用で2.4%減だったのに対し、スタチンを使用者では4.6%低下しました。 10%の変化として分析した場合のGFRの低下も、スタチン使用者で30.2%低下とスタチン非使用者では23.6%低下でした。いずれも有意ではありませんでしたが、やはりスタチン使用者の方がGFRさえ低下する可能性があります。

スタチンが処方される人はLDLコレステロールが高い状態です。一般的にはLDLコレステロールが高いということは心血管疾患リスクが高いと思わされています。そうすると、腎機能障害、タンパク尿が起きても、それはもともとの体の状態が悪く、スタチンのせいだとは考えられないでしょう。

こうして、マッチポンプ薬の犠牲者が増えていくのかもしれません。

3 thoughts on “スタチンとタンパク尿

  1. いわゆる「確信犯」的ではなく、
    心の底から使命感を持って
    「医療常識の啓蒙」をされている
    方とは話し合いにはなりにくい。

    敢えて近づきたくはありませんね。

  2. コロナワクチンきっかけでIgA腎症診断となったコメディカルです
    糖質減&適度な運動でなんとか腎臓を守り切ろうと思います
    運動誘発性タンパク尿についての記事楽しみにしております

    1. IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。

      新型コロナワクチンでIgA腎症、きっと多いのでしょうね。学会は知っていますが、中止を提言しません。
      非常に残念ですあり、各学会には怒りを感じます。

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