専門のクリニックで治療として糖質制限を受けた人の代謝変化

日本の医療で、肥満外来ではどんな治療が行われているのか詳しくは知りません。当然食事指導、運動を推奨し、現在ではGLP-1製剤を処方するのでしょう。以前の記事「食欲抑制薬の臨床データはある意味凄い!」で書いたサノレックス(商品名マジンドール)という覚醒剤の類似薬まで出して食欲を抑えるところもあるかもしれませんね。

本来は肥満は食事の間違いで起きるので、食事療法だけでできるはずです。でも医療の現場の食事療法と言えば、お決まりのエネルギー(カロリー)制限とバランスの良い食事でしょう。非常に低いエネルギー量の食事は短期間では体重が減るでしょうけど、その食事を継続することは非常に難しいでしょう。そして、筋肉まで減少する可能性が高くなります。

現在では糖質制限食が広まってきて、一部の肥満外来ではもしかしたら、それを取り入れているかもしれません。私の外来は肥満外来ではありませんが、糖質制限の外来で食事について当然糖質制限食の推奨をしています。治療的炭水化物制限 (TCR)という言葉があるようです。今回の研究では、そのTCRを行っているクリニックのデータです。

西オーストラリア州パースに拠点を置く専門医療クリニックで、体重や代謝性健康障害に悩む個人を支援するために、代謝性健康問題への対応と専門検査に重点を置いています。このクリニックではTCRを含むライフスタイルに基づく介入が含まれます。費用は自己負担なので、患者が積極的に食事改善をしよう、と思っている人が多いはずです。

このクリニックでケアを受け、TCRを推奨された、BMI25以上の過体重および肥満の人202人(77%が女性、平均年齢47.3歳)が参加し、4週間以内に2回目の診察を受けた短期フォローアップ (STFU) 評価111人と、10~16 週間の期間内に追加のフォローアップ診察を受けた中期フォローアップ (MTFU) 評価34人が対象です。自分から選択したとはいえ、自己負担と食事を大きく変更するというのはやはりハードルが高いのか、人数がかなり減ってしまっていますね。糖質依存症の人は多いですからね。または、やり方さえ分かれば、食事だけのことであれば、クリニックに通わなくても自分でできますので、その分人数が減っている可能性もあるでしょう。

TCRが推奨された患者は、標準的な西洋食のRQ(呼吸商)が予想よりも高い0.81以上の患者(燃料利用率62%脂質および38%炭水化物に相当)、脂肪肝、2型糖尿病、PCOS(多嚢胞卵巣症候群)などの恩恵を受けられる代謝状態にある患者です。

参加者全員が個別カウンセリングを受け、TCRは炭水化物を制限するアドバイスで構成され、自然食品、健康的な脂質、非デンプン質の野菜の摂取を強調していました。TCR を推奨された人は、必要に応じて運動、食事の時間、睡眠などのその他のことも変更された可能性がありますが、一般的にエネルギー摂取量を減らしたり制限したりするように指示されていませんでした。

ベースラインでは肥満が76%、過体重が24%で、患者の大多数(70%)は、過去1年間で体重が増えたと報告しています。83%が少なくとも1つの病状を自己申告しており、67%が複数の薬を服用していました。

代謝の健康に関しては、84%がRQ > 0.81という最適以下の脂肪酸化を示していました。高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸が最も多くみられた疾患でした。13%がPCOSでした。

短期フォローアップ (STFU)111人のうち84.1% で脂肪酸化の改善が見られました。ベースラインからの脂肪酸化の相対的増加は63%で、平均1.8kgの体重減少、2%の相対的変化を示しています。(図は原文より)

(注:上の図の凡例が間違っていて、脂質酸化と体重が逆です。赤い三角が体重、青い四角が脂肪酸化です)

上の図のaは短期のフォローアップでの脂肪酸化と体重の変化を示しています。

中期フォローアップMTFUの34人では約80%で脂肪酸化率の増加が維持され、ベースラインからの平均相対変化は70%でした。平均3.9kgの体重減少、腹囲は平均4.9cmの減少があり、脂肪量が2.7 kg(8%に相当)減少しました。体重とBMIが4%減少しました。

 

上の図は、TCRを受けた個々の患者における脂肪酸化レベル(a、d)、体重変化量(b、e)、体重変化率(c、f)の短期および中期的変化です。個人レベルではかなりのバラツキです。

最大の体重減少は短期で6.1kg(体重の5%)、中期で13.6 kg(体重の14%)でした。

私の外来でも、自ら考えて、理解して糖質制限を積極的に行っている人は、効果が表れやすいです。しかし、やらされている感が強い人は、本当に最初のうちは効果がちょっと出ますが、すぐに頭打ちになるか、戻ってしまう場合もあります。そして上手くいっていないと、私は何も聞かないうちに言い訳をする人が多いです。私の体ではありません。自分の体は自分んで責任を持てば良いので、言い訳は必要ありませんし、やりたくないと思えばやらなくて良いのです。相談も必要ありません。

体重を減らしたい、薬を減らしたい、健康になりたい、でも糖質を摂りたい。人間のこの相反する欲求は同時には叶えられません。糖質過剰摂取で体重が増加し、薬を必要とする代謝になり、様々な症状や病気が現れているからです。ほとんどの病気は糖質過剰症候群です。食事で改善する病気や症状を医療に頼ろうとするから、ドツボにはまるのです。まずは糖質制限から。

「Evaluation of metabolic changes in clinic attendees with therapeutic carbohydrate restriction」

「治療的炭水化物制限を受けているクリニック受診者の代謝変化の評価」(原文はここ

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