糖尿病診療ガイドライン2024での2型糖尿病発症リスクと炭水化物割合

以前の記事「糖尿病診療ガイドライン2024での2型糖尿病発症予防は?」下の図の1つ目のポイントについて書きました。

今回は2つ目のポイントについてです。「炭水化物の質的指標である GI (glycemic index) または GL (glycemic load) と 2 型糖尿 病の発症リスクとの間には正の量反応関係がある」としています。

その説明の文には、まずこのようなことが書かれています。

次に三大栄養素をみると,総エネルギー摂取量における炭水化物の割合と 2 型糖尿病の発症との間には J カーブ現象があり45~65%で最もリスクが低く,70%以上でリスクが増加する」

この記述の根拠となっている論文を見てみましょう。(ここ参照、図もこの論文より)607,882人のうち29,229の症例を含む18件の前向きコホート研究が対象となったメタアナリシスです。

上の図は、食事の総エネルギー摂取量に対する炭水化物の割合を横軸として、縦軸は2型糖尿病発症リスク比です。炭水化物からのエネルギーの割合と2型糖尿病のリスクの間には上のように J 字型の関連が示されました。

摂取カロリーの45~65% 以内の炭水化物摂取は、2 型糖尿病のリスク増加とは関連がありません。摂取カロリーの70%を超える炭水化物摂取は、より高いリスクと関連している可能性がある、としています。円はそれぞれの研究の炭水化物摂取カテゴリーを示していることを考えると、ほとんどの円は40%~60%に集まっています。我々の糖質制限の炭水化物摂取割合は10%前後であり、そのような研究はこの図では皆無です。

糖質制限の研究は分析にすら含まれないのですが、実際にメカニズムから考えれば、糖質制限を行っている限り糖尿病は発症しません。それを無視して、「45~65%で最も2型糖尿病発症リスクが低い」というのは大ウソです。

上の図は炭水化物摂取と2型糖尿病リスクの関係を西洋諸国(A)とアジア諸国(B)に分けたものです。もともとアジアの方が炭水化物を多く摂取しますし、人種による差(一般的にはアジア人の方が欧米人よりもインスリン分泌が少ないことが多いなど)も考慮すべきなので、このように分けることは理解できます。

そうすると、我々日本人はBの図を参照すべきかもしれませんが、Bの図の炭水化物は60%以上からスタートして80%ではリスクが大きく増加した図になっています。そりゃあ、糖質80%も食べれば糖尿病になるでしょうけど、逆に本当に80%もアジア人は食べているのでしょうかね?いずれにしてもアジアの研究を分析したBの図からは、日本人の糖尿病発症について45~65%で最もリスクが低い、というデータは得られません。

そして、すべての研究は食事アンケートのデータですので質の低いデータを分析した研究です。それをいくら寄せ集めても質の低い分析しかできません。

また、糖質制限では先ほども書いたように炭水化物は10%前後です。しかし、恐らく糖質制限で糖尿病発症予防の研究は行われていないでしょう。でも、行われていないからと言って、これだけ糖質制限が2型糖尿病改善に有効だというエビデンスが多く出ているので、無視するのは問題です。せめて、「糖尿病発症リスクが最も低い炭水化物割合は不明である」と書いて欲しいものですね。

糖尿病診療ガイドライン2024

5 thoughts on “糖尿病診療ガイドライン2024での2型糖尿病発症リスクと炭水化物割合

  1. 体操の弘道お兄さん55歳が、
    脊髄梗塞発症で下半身麻痺、
    リハビリや投薬治療中とのニュース。

    あれだけ普段動いている方の
    食生活がとても気になりました。

  2. 清水先生、いつもありがとうございます。
    私は糖質を1日に20グラム前後しか取らないので、いつもhba1cは4点台なのですが、先週の人間ドックで5.4とこれまでにない高い数値が出ました。

    何故なのか不思議に思ってまして、思い当たる理由としては仕事のストレスで週に5回くらい飲酒するようになった(糖質のない焼酎の水割を3杯くらいです。)ことと、仕事自体のストレス(異動で変な人の多い職場に変わったので)です。

    1日の糖質が20グラム前後でも、人間は強いストレスが掛かると血糖値が正常値を超えて上がるものなのでしょうか。少し心配してます。

    1. いのっちさん、コメントありがとうございます。

      強いストレスは当然、血糖値が上がると思います。

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