LDLコレステロールは低ければ低いほど有益であると信じている人たちがいます。
今回の研究では、35歳から75歳、平均年齢56.1歳の3,789,025人を対象を、病歴とアテローム性動脈硬化性心血管疾患リスクに基づいて、低リスク、一次予防、二次予防に分類しました。低リスク群は2,838,354人、一次予防群は829,567人、アテローム性動脈硬化性心血管疾患患者の二次予防群は121,104人でした。一次予防はアテローム性動脈硬化性心血管疾患の10年リスクが10%を超えるものです。
ベースラインでのLDLコレステロールの中央値は全体で93.1mg/dLでした。中央値4.6年の追跡期間中に、38,627人の心血管疾患による死亡を含む92,888人が死亡しました。(図は原文より)
上の図は、Aが全原因死亡、Bが心血管疾患死亡、Cががんによる死亡のリスクです。横軸はLDLコレステロール値で、左から低リスク群、一次予防群、二次予防群です。全原因死亡と心血管死亡については、低リスク群と一次予防群の両方でU字型でしたが、二次予防群ではJ字型でした。リスクが最低なのは低リスク群と一次予防群では、どの死因でも100ちょっとから120くらいですね。それよりも低いと逆にリスクが上がってしまっています。
二次予防群はすでに心血管疾患が起きている人なので、それでいてもLDLコレステロールが高いということは、かなりのインスリン抵抗性があると予想されます。糖質摂取ではLDLコレステロールは通常低下しますからね。だからJ字型になると思われます。
上の図は原因別の死亡リスクです。Aは脳卒中、Bは虚血性心疾患、Cは肺がんです。脳卒中に関しては、低リスク群では、LDLコレステロールの増加はリスク増加にはなっていません。逆にLDLコレステロールが128.9よりも低い方がリスク増加になっています。肺がんはあまりはっきりした関係がないですね。
心血管疾患は糖質過剰症候群だということを考えると、糖尿病の有無での違いは興味深いですね。上の図のAは全原因死亡、Bは心血管疾患死亡リスクで、左側は糖尿病あり、右は糖尿病なしです。糖尿病なしの人では、LDLコレステロール値100~130を1とした場合、LDLコレステロール値が高いとしても190未満であれば、どの群でもリスク増加はありません。190を超えるとどの群でもリスク増加になっています。逆にLDLコレステロール値が低い方を見てみると、低リスクや一次予防群では100未満だと全原因死亡も心血管死亡もリスク増加になっています。特に40未満という信じられないくらい低い人ではLDLコレステロール値が190超えの人よりもリスクが高くなっています。
糖尿病有りだと、全原因死亡も心血管疾患死亡もLDLコレステロールが130超えくらいで、どの群もだいたいリスク増加に転じています。糖尿病有りの場合、小さな危険なLDL(sdLDL)や糖化LDLもかなり増加しているので、リスクが高くなるのが、糖尿病なしのLDLコレステロール値よりも低いのかもしれません。
この研究のデータは恐らくすべて普通に糖質過剰摂取をしている人達のデータです。糖質摂取は先ほども書いたように、LDLコレステロールを低下させます。しかし、恐らくインスリン抵抗性が高くなるなどの要因で、LDLコレステロールが低下せず、増加する方向に変化すると思います。
糖質制限でLDLコレステロールが高くなるのと、糖質過剰摂取でLDLコレステロールが高くなるのは違います。
いずれにしても、LDLコレステロールが低ければ低いほど良いというのは、全くのウソです。LDLコレステロールが140を超えたらスタチンを出すという医師からは離れた方が良いでしょう。
「Low-Density Lipoprotein Cholesterol, Cardiovascular Disease Risk, and Mortality in China」
「中国におけるLDLコレステロール、心血管疾患リスク、死亡率」(原文はここ)
世界的にも評価されているスタチンなどのコレステロールを下げる薬、
その存在価値が問われますね。
(処方する側からはもちろん価値十分でしょうが)