「その1」のつづきです。今回は「スローカロリーラボ」の「脂肪蓄積・脂肪燃焼に関する研究」の研究を見てみたいと思います。(論文はここ)この論文の著者にも三井製糖の人が含まれています。話半分ですね。
ブラジルのカンポグランデ在住の20~58歳の健康な日本人男性9名に、砂糖50gまたはパラチノース45gと砂糖5gの混合物50gを経口投与し、2時間にわたって血糖値とインスリン値を測定しました。
上の図は左が血糖値の推移、右がインスリン値の推移で、●が砂糖50g、○はパラチノースです。確かに、パラチノースの方が血糖値やインスリンの変動はかなり少ないですね。
次に、35~90歳の日本人男性移民30人を対象に、毎日使っている砂糖50gの内、45gをパラチノースに変更したグループと砂糖のままのグループに分けて16週間続けてもらいました。カンポグランデではCT検査の利用が限られていたため、一部の人だけが検査を受けています。
上の図はPS群(パラチノース群)とS群(砂糖群)の介入前後の比較です。砂糖群の内臓脂肪は変化なありませんでしたが、パラチノース群では介入前と比較して有意に減少しました。また収縮期血圧や拡張期血圧も少し減少しました。
しかし、その割にはBMIや中性脂肪などは変化なしですし、皮下脂肪はやや増加気味、HDLコレステロールはやや低下気味です。まあ、健康なレベルまで改善することはないでしょうね。
もう一つ、安静時の脂質燃焼量が増えるという研究を見てみましょう。(ここ参照)32〜64歳(平均年齢50.7歳)の太りすぎまたは肥満(平均BMI32.1)の男性20人を対象としています。
朝食(891kcal、炭水化物110g、脂肪46g、タンパク質10g)を摂取しました。朝食は、25gのパラチノースまたはブドウ糖と砂糖を1対1で25gを含む250mLの飲料と、60gの炭水化物(うち25gはパラチノースまたはブドウ糖と砂糖)を含む140gのクッキーで構成されていました。つまり、朝食にはパラチノース50gまたはブドウ糖と砂糖50gのどちらかを含むことになります。残りの炭水化物は何かよくわかりません。
朝食の2時間後、被験者は中程度の強度(時速4km、傾斜5%)でトレッドミルで30分間運動し、続いて30分間の運動後回復期間をとり、その後、朝食の 180 分後に、昼食(640 kcal、炭水化物85g、脂肪20g、タンパク質18g) を摂取しました。昼食は、25 g のパラチノースまたはブドウ糖と砂糖を含む250mL 飲料、ミニピザ、中サイズのリンゴ(約125g)で構成されていました。朝食と昼食を合わせると、195g の炭水化物が含まれ、そのうち75g がパラチノースまたはブドウ糖と砂糖でした。
上の図は血糖値の推移です。黒がパラチノース、赤がブドウ糖/砂糖群です。日本の単位に直すには18をかけてください。朝食後の血糖値スパイクは1mmol/L程度の違いです。つまり日本の単位では18mg/dL程度の違いにすぎません。まあそれでもパラチノースでピーク値が低いことは良いことかもしれません。その後運動すると血糖値は低下し、運動を止めると再度上昇しはじめ、昼食を食べるとさらに上昇しましたが、この時はパラチノースとブドウ糖/砂糖との違いはほとんどありませんでした。
上の図はインスリンの推移です。血糖値と同様に、パラチノース群ではインスリン値も低く推移しています。これも運動を始めると急激に低下しています。
上の図はRER(呼吸交換比)です。糖質をエネルギーにしたら1に近づき、脂質をエネルギーにしたら0.71に近づきます。パラチノースの方がRERが低いということは、その分脂質をエネルギーにしているのが多いということになります。ホームページに書かれているように、確かにパラチノースでは安静時の脂質燃焼量が増えるようです。
上の図は脂質の酸化です。確かにパラチノースは脂質の酸化が増加していますが、そこまで極端に増加しているようには見えません。
上の図は脂質の酸化の曲線下面積です。運動を始める前の120分間と運動後を含めた180分間の脂質酸化量は確かにパラチノースで増加しています。数値がはっきりとわかりませんが、ホームページ上では25%増量だそうです。
ただ、この研究もBENEOという食品関連の企業がスポンサーで、著者にも企業の人間が名前を連ねていますので、話半分です。
まあ、でも砂糖よりは少しは良い効果があるようですが、糖質を摂っていることに違いはなく、糖質制限よりは断然有害でしょう。
糖質依存者が、
少しでも罪悪感無く
糖質を摂るための、
気休めのように思います。