アセトアミノフェンは一部のがんのリスクを増加させる その3 多発性骨髄腫

その1」「その2」では、アセトアミノフェンが白血病と悪性リンパ腫のリスク増加と関連があることを書きました。今回はもう一つの血液系のがんである、多発性骨髄腫です。

多発性骨髄腫患者117人と、年齢および居住地をマッチさせた良性または悪性腫瘍のない対照群483人を対象に、アスピリンおよびアセトアミノフェンの定期的な使用(少なくとも6か月間、少なくとも週に1錠の使用と定義)と多発性骨髄腫発症の関連を調べました。(図は原文より)

やはり、これまでと同様にアスピリンはリスク増加と関連がありませんでした。アセトアミノフェンの定期的使用は多発性骨髄腫の可能性を2.95倍も高くしました。この関連は1週間の頻度が増加するほど高くなり、1週間に7回を超える使用は4.36倍でした。さらに10年を超える使用も3.26倍でした。

もう、これはアセトアミノフェンはアウトでしょうね。でももう一つ見てみましょう。

この研究では、ビタミンとライフスタイル (VITAL) 研究に参加した50歳から76歳の64,839人を対象にして、鎮痛薬と新規の血液系のがんの関連を調べました。平均年齢61.5歳で、平均6.5年の追跡調査で、577 人(0.89%)が新規の血液系のがんを発症しました。

使用頻度が低いというのは、週4日未満または4年未満。使用頻度が高いのは、週4日以上かつ4年以上と定義されています。

下の表は、10年間のアセトアミノフェン、アスピリン、非アスピリン系NSAIDの使用と血液系のがんのリスクとの関連性です。(表は原文より改変)

ベースライン前の10年間の使用頻度 多変量調整済みHR
アセトアミノフェン
    非ユーザー 1
    低い 1.16
    高い 1.84
低用量アスピリン
    非ユーザー 1
    低い 0.97
    高い 1.04
低用量アスピリンを除くNSAIDの総量
    非ユーザー 1
    低い 1.08
    高い 0.96

アセトアミノフェンの使用頻度が高い人のみ、血液系のがんのリスクが1.84倍高くなりました。

下の表は、10年間のアセトアミノフェン、アスピリン、非アスピリン系NSAID使用と個々の血液がんのリスクです。形質細胞疾患は主に多発性骨髄腫でしょう。

ベースライン前の10年間の使用頻度 骨髄性のがん(n = 136) 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(n = 88) 形質細胞疾患(n = 66) それ以外の成熟B細胞腫瘍(n = 235)
HR HR HR HR
アセトアミノフェン
 非ユーザー 1 1 1 1
 低い 1.55 0.93 1.63 0.84
 高い 2.26 0.84 2.42 1.81
常用量アスピリン
 非ユーザー 1 1 1 1
 低い 1.07 0.71 1.18 1.25
 高い 0.76 0.55 1.31 1.17
総非アスピリンNSAID
 非ユーザー 1 1 1 1
 低い 1.08 1.14 1.27 0.70
 高い 1.69 1.17 1.19 0.79
イブプロフェン
 非ユーザー 1 1 1 1
 低い 0.96 1.18 1.31 0.74
 高い 1.31 0.93 1.67

アセトアミノフェンの使用頻度の高い人では、骨髄性のがんリスクは2.26倍、95% CI、1.24~4.12)、非ホジキンリンパ腫が1.81倍、形質細胞疾患が2.42倍でした。他のアスピリン、アスピリン以外のNSAID、またはイブプロフェンの使用増加と血液系のがんの発症リスクとの関連性はありませんでした。

下の表は、性別による分類です。

ベースライン前の10年間の使用頻度 男性 女性
多変量調整HR 多変量調整HR
アセトアミノフェン
    非ユーザー 1 1
    低い 1.12 1.22
    高い 1.55 2.15
常用量アスピリン
    非ユーザー 1 1
    低い 1.01 1.35
    高い 0.77 1.10
総非アスピリンNSAID
    非ユーザー 1 1
    低い 0.73 1.15
    高い 1.12 1.03
イブプロフェン
    非ユーザー 1 1
    低い 0.70 1.15
    高い 0.91 1.10

アセトアミノフェンの使用頻度の高い男性では、有意差ありには若干届きませんでしたが、血液系のがんの発症リスクは1.55倍、女性は有意差ありで2.15倍でした。その他の鎮痛薬は関連がありませんでした。

どうですか?まだ足りない?

では専門家大好きメタアナリシスを見てみましょう。10か国で実施された、アセトアミノフェンの使用と血液系のがんに関する17の研究を分析しました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図の上側は、あらゆる量のアセトアミノフェン使用と血液系のがん可能性を示しています。メタアナリシスでは血液系のがん可能性は1.49倍でした。下の方の図はアセトアミノフェンの高摂取量による血液系のがん可能性ですが、1.77倍になりました。

任意の摂取量 RR (95% CI) ランダム効果
すべての研究 1.49 (1.23–1.80)
組織学的タイプ別:
白血病 1.26 (0.93–1.69)
リンパ腫(すべて) 1.46 (1.14–1.89)
非ホジキン 1.20 (0.96–1.51)
ホジキン 2.00 (1.61–2.48)
多発性骨髄腫 2.13 (1.51–3.01)
   
高摂取量 RR (95% CI) ランダム効果
すべての研究 1.77 (1.45–2.16)
組織学的タイプ別:
白血病 1.54 (1.19–2.00)
リンパ腫(すべて) 1.70 (1.20–2.40)
非ホジキン 1.07 (0.60–1.89)
多発性骨髄腫 3.16 (1.96–5.10)

アセトアミノフェンの摂取は、いかなる摂取量でも高摂取量でも、非ホジキンリンパ腫を除くすべての血液がんの可能性上昇と関連していました。この上昇は多発性骨髄腫で特に大きく、いかなる摂取でも2.13倍 、高摂取では3.16倍でした。

アセトアミノフェンは十分注意して摂取すべきでしょう。慢性的な痛みなどで漫然と飲み続けると、もしかしたら命取りになるかもしれません。

では、アセトアミノフェンは血液系のがんだけが危ないのでしょうか?それについては次回以降で。

「Regular analgesic use and risk of multiple myeloma」

「鎮痛剤の常用と多発性骨髄腫のリスク」(原文はここ

「Long-term use of acetaminophen, aspirin, and other nonsteroidal anti-inflammatory drugs and risk of hematologic malignancies: results from the prospective Vitamins and Lifestyle (VITAL) study」

「アセトアミノフェン、アスピリン、その他の非ステロイド性抗炎症薬の長期使用と造血悪性腫瘍のリスク:ビタミンとライフスタイル(VITAL)の前向き研究の結果」(原文はここ

「Paracetamol Intake and Hematologic Malignancies: A Meta-Analysis of Observational Studies」

「パラセタモール摂取と造血悪性腫瘍:観察研究のメタ分析」(原文はここ

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