尿酸の約3分の2は内因的に生成され、残りの3分の1は食事中のプリン体からできるのですが、尿酸そのものを摂取するわけではないので、体内の尿酸は全て体内で生成されたものと考える方が簡単でしょう。
まずは尿酸の生成量が多くなるのはなぜか?を見ていきましょう。尿酸の産生増加は、アルドース還元酵素およびキサンチンオキシダーゼ(XO)の活性増加によって起こります。アルドース還元酵素(AR)はポリオール経路の最初の酵素として、過剰なブドウ糖をソルビトールに変換します。ポリオール経路はブドウ糖を猛毒、果糖にする経路で、ポリオール経路の活性化は終末糖化産物や活性酸素の増加をもたらし、様々な有害な事象を引き起こす一因と考えられています。
アルドース還元酵素の増加は、もちろん糖質過剰摂取で高血糖になり、解糖系がどんどん回ってしまう間に、ポリオール経路にもどんどんブドウ糖が流れるために、活性化が起こると思われます。通常はポリオール経路を介したブドウ糖の利用は、細胞におけるブドウ糖消費量の3%未満ですが、高血糖時には、この経路を介したブドウ糖の利用は最大30%を占めるまで増加してしまいます。
ポリオール経路を介して内因的に生成される果糖がケトヘキソキナーゼ(KHK)により代謝されるとき、エネルギーのATPが使用され、ポリオール経路が活性化して過剰な果糖の代謝によりATPが枯渇します。使用されたATPはAMPへと代謝され、その後尿酸になります。
つまり、尿酸値の増加の要因の一つは糖質過剰摂取による高血糖で、ポリオール経路が活性化した結果として起こるのです。
もう一つのキサンチンオキシダーゼ(XO)の活性はどうでしょうか?キサンチン酸化還元酵素(XOR)には、尿酸を産生する際に活性酸素を産生しないキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)と活性酸素を産生するキサンチンオキシダーゼ(XO)の2種類の形態が存在し、肝臓や小腸から放出されたXDHは、血漿中でプロテアーゼによりXOに変換されて存在しています。だからXO=XORと考えて問題ないでしょう。
インスリン抵抗性は血中のXOR活性と関連しています。(ここ参照)インスリン抵抗性があるとXOR活性の増加の可能性が1.986倍にもなります。XOR活性の調節メカニズムははっきりとはわかってはいませんが、インスリン抵抗性がXOR活性の増加を起こしている可能性は高いでしょう。
インスリン抵抗性はペントースリン酸経路の活性化を介して新たなプリン合成を増加させると考えられています。さらに、プリン中間代謝物は、肝臓 のXOR 活性を増加させることが報告されています。
インスリン抵抗性を改善する糖尿病の薬であるメトホルミンはXOR活性を低下させます。(ここ参照)ただ、メトホルミンと尿酸値の関連ははっきりしません。
つまり、恐らくもう一つの尿酸値増加の要因であるキサンチンオキシダーゼ(XO)の活性についても、インスリン抵抗性が大きく関係していて、インスリン抵抗性は糖質過剰摂取で起きるので、アルドース還元酵素の増加も考え合わせると、尿酸の増加、高尿酸血症は糖質過剰症候群であると思われます。
ただ、血中の尿酸値が高くなるのは、尿酸産生増加よりも排泄の低下で起きることが多いのですが、そこにも糖質過剰摂取が大きく関係しています。
それについては次回以降です。
いずれにしても、プリン体摂取が尿酸値の増加のメインではありません。尿酸ビジネスに気を付けましょう。
「Asymptomatic hyperuricemia and cardiovascular mortality: A matter of mechanisms?」
「無症候性高尿酸血症と心血管疾患による死亡率:メカニズムの問題か?」(原文はここ)