高齢者の高血圧の治療は死を早めるかもしれない その1

日本には本当にフレイル(虚弱)な高齢者多いですね。野菜中心の食事も要因の一つでしょう。

地域在宅高齢者5,104名 (平均年齢71.7歳、 女性51.6%)を対象とした分析では、フレイルの有病率は11.5%(予備群、32.8%)と報告されています。(ここ参照)

2013年の論文によれば、下の図のように65歳以上の全体でも11.3%です。(ここ参照)

65歳から69歳でも5.6%、75~79歳では16%、80歳以上では実に34.9%にもなります。

一方、高血圧は高齢者に最も多くみられる慢性疾患で、80歳以上の75%以上に罹患しているとも言われています。フレイルとなり、身体機能が落ちてきた場合、血圧と死亡率との関連はどうなっているでしょうか?

今回の研究では、高齢者における、フレイルと血圧と心血管疾患および死亡率について分析しています。平均年齢79.5歳(75.0~109.5歳)の高齢者415,980人、最長10年間の追跡調査です。ベースラインで非フレイル患者の55.1%が高血圧と診断されていたのに対し、重度フレイル患者は75.6%でした。血圧の中央値はフレイルの増加とともに低下しました。(図は原文より)

上の図は収縮期血圧別の全原因死亡リスクです。75~84歳までと、85歳以上に分けています。また、フレイルに関して、■は非フレイル、●は弱いフレイル、▲は中等度と重度のフレイルです。

75~84歳ではフレイルのどのカテゴリーでも、収縮期血圧で分類したとき、全死亡リスクは血圧150~159mmHgで最低でした。フレイルがあっても無くてもこの血圧が死亡率最低です。血圧130~139と比較しても、140~169までの血圧は死亡率が同程度か下回っていました。さらに、フレイルが中等度/重度の人では180以上の血圧でも血圧130~139と比較して、死亡リスクの違いはありませんでした。

逆に血圧130~139と比較して、血圧が130未満となると、フレイルのどのカテゴリーでも死亡リスクは高くなりました。フレイルがあろうと無かろうと、130未満で血圧が低くなるほど死亡リスクは増加するのです。120未満の血圧では1.5~1.6倍の死亡リスク増加でした。

85歳以上では、さらに、フレイルが無くても、血圧130~139と比較して血圧180以上まで死亡リスク低下を認め、フレイルが中等度/重度では血圧180以上の死亡リスクが最低でした。先ほどと同様に、130未満では逆に死亡リスクの増加が認められました。

上の図は、75~84歳の血圧と心血管疾患の関連性です。左が心不全、真ん中のMIPは心筋梗塞または心臓血行再建術、右が脳卒中です。75~84歳と85歳以上の年齢層で同様の傾向を示しており、150mmHgを超えるとリスクが上昇しましたが、心不全や脳卒中に関しては、中等度/重度のフレイルでは、有意な関連はありませんでした。

逆に非フレイルでは、血圧130~139と比較して、130未満でも心不全やMIPのリスク増加がありました。

つまり、早く死にたくなければ、75歳以上では血圧は下げない方が良いと思われます。特にフレイルになってしまった場合、血圧が180以上でさえ、血圧が130未満の人よりも死亡リスクが低いのです。

高齢者における積極的な血圧低下の意義は非常に低いでしょう。逆に高齢者の高血圧の治療は死を早めるかもしれません。

高齢者で血圧が高いことは当たり前なのです。それが高齢者なのです。抗う方が死が近づくかもしれません。医療の過剰な介入は寿命を縮める可能性があります。

「Blood pressure in frail older adults: associations with cardiovascular outcomes and all-cause mortality」

「虚弱高齢者の血圧:心血管疾患の結果および全死亡率との関連」(原文はここ

2 thoughts on “高齢者の高血圧の治療は死を早めるかもしれない その1

  1. 「血圧130超えたら」で検索すると、
    医療機関やら、製薬会社やらの
    不安を煽り、治療や健康食品を
    勧めるサイトが満載です。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      蕎麦屋がそばを出すのが当たり前です。
      医療機関も薬を出さないと、仕事をした気にならないのでしょう。

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