アメリカの肥満率は非常に悲惨な状況です。(「アメリカの肥満率は悲惨な状況ではあるが、やや横ばいになってきている」を参照)
我々日本人を含むアジア人は白人と比べると肥満になりにくいとされています。それはインスリン分泌能による差であると考えられます。しかし、肥満が少ないことと糖尿病、急性冠症候群での死亡のリスクが低いこととは違います。
急性冠動脈症候群の患者で、アジア人の場合、糖尿病のある患者のBMIは24.7、糖尿病のない患者は24.2と差がありませんでした。白人の場合は糖尿病のある患者は29.3、糖尿病の無い患者は27.2と明らかに糖尿病のある患者の方が肥満が多かったのです。逆に言えば、アジア人は肥満と糖尿病の関連性が低いのです。
また下の図で、(図は原文より)
1番上が30日以内の死亡、次が30日以内の心筋梗塞での死亡、次が30日以内の心筋梗塞と脳卒中での死亡、最後が1年以内の死亡をあらわしています。そしてそれぞれのグラフで、上から順にアジア人で糖尿病の人、白人で糖尿病の人、アジア人で糖尿病の無い人、白人で糖尿病の無い人です。糖尿病の無い白人と比べると、糖尿病のアジア人の30日以内の死亡は1.46倍です。さらに30日以内の心筋梗塞による死亡は糖尿病のアジア人で1.59倍、糖尿病がないアジア人でも1.38倍です。糖尿病の白人でも1.14倍しかないので、アジア人の方が死亡率が高いことになります。脳梗塞を加えても同じ傾向です。
さらにさらに、1年以内の死亡は糖尿病のアジア人が1.84倍で、糖尿病の白人の1.47倍よりもはるかに多くなっていますし、糖尿病の無いアジア人も1.38倍と糖尿病の無い白人よりも死亡率が高いことが示されています。
つまり、われわれ日本人を含むアジア人は肥満になることは少ないのですが、糖尿病の有無にかかわらず、白人と比較すると心血管疾患での死亡率が高い可能性があるのです。
「Obesity, Diabetes, and Acute Coronary Syndrome: Differences Between Asians and Whites」
「肥満、糖尿病、急性冠動脈症候群:アジア人と白人の違い」(原文はここ)