双極性障害は糖質過剰症候群 その1

双極性障害(以前は躁うつ病とも言われていました)は精神疾患の代表的な疾患の一つです。しかし、本当に精神疾患なのでしょうか?多くの精神疾患は多因子性であるとは思っていますが、大きな原因の一つは代謝障害であり、精神疾患というよりは代謝疾患だと考えています。もっと言ってしまえば、精神疾患のほとんどは糖質過剰症候群です。もちろん、双極性障害も糖質過剰症候群でしょう。

非常に多くの研究が、脳内の糖代謝障害とミトコンドリア機能不全が双極性障害の根底にある重大な問題であることを示しています。

ある研究では、インスリン抵抗性と双極性障害の転帰を分析しました。(ここ参照、図もここより)双極性障害の成人121人を対象に、空腹時血糖値とインスリン値を測定し、2型糖尿病とインスリン抵抗性を診断しました。I型双極性障害と診断された患者は69.9%を占め、II型双極性障害は30.1%でした。(I型は「躁状態」がおこる双極性障害、II型は「軽躁状態」と「うつ状態」の両方がおこる双極性障害)平均年齢は48.1歳、双極性障害の診断時の平均年齢は22.6歳、2型糖尿病発症時の平均年齢は47.8歳でした。平均BMIは30.0、糖尿病と診断されていない全参加者の平均HOMA-IRは2.02、BMIとHOMA-IRの間には正の相関関係が認められました。

 

上の図は病気の経過が慢性の経過をたどった割合です。横軸は左から正常血糖、インスリン抵抗性、2型糖尿病です。双極性障害および2型糖尿病の患者の50%およびインスリン抵抗性の患者の48.7%が慢性経過をたどったのに対し、正常血糖患者では27.3%でした。インスリン抵抗性、糖尿病があると慢性経過をたどる可能性が約3倍になります。

インスリン抵抗性または2型糖尿病は、BMIを考慮した後でも、病状の不良な経過をたどる可能性が2.19倍でした。

2型糖尿病またはインスリン抵抗性では急性交代型(rapid cycling:1年間に4回以上躁状態とうつ状態が切り替わる双極性障害のタイプ)の可能性も3.13倍でした。

BMIを調整した後でも、インスリン抵抗性または2型糖尿病は急性交代型の可能性は3.36倍でした。

上の図は糖代謝状態とリチウム療法(双極性障害の治療薬)に対する治療反応です。濃い青が完全寛解、薄い色が部分寛解、白が反応なしです。正常血糖の患者のうち、リチウムに反応しなかったのはわずか3.2%(1人)であったのに対し、インスリン抵抗性では36.7%、2型糖尿病では36.8%が反応しませんでした。正常血糖患者では、リチウムで寛解に達した割合が54.8%であったのに対し、インスリン抵抗性患者では23.3%、2型糖尿病患者では21.1%しか寛解しませんでした。インスリン抵抗性または2型糖尿病はリチウムに反応性しない可能性は8.40倍でした。インスリン抵抗性または2型糖尿病は、BMI30未満の非肥満参加者42人においても、リチウム非反応の可能性は3.87倍でした。

上の図はリチウムへの反応とインスリン抵抗性(HOMA-IR)との関連です。横軸は左から完全寛解、部分的な寛解、反応なしです。明らかに反応なしではインスリン抵抗性が非常に高いですね。

糖尿病やインスリン抵抗性はもちろん脳のインスリン抵抗性を伴うでしょう。

糖尿病、インスリン抵抗性が大きく双極性障害の経過や治療への反応に影響するのであれば、糖質制限やケトン食が有効なはずです。実際に以前の記事「双極性障害と統合失調症における糖質制限の効果」「難治性精神疾患のためのケトン食の驚くべき効果」などに書いたように、多くの人がケトン食(糖質制限)で症状が改善しています。

他の研究でもケトン食は様々な改善をもたらしています。双極性障害を持つ274人の患者を対象に、食事介入(ケトン食、オメガ 3 強化、ベジタリアン)の気分への影響の観察分析研究を実施しました。一定期間にわたる有意な気分の安定または症状の緩和に関する報告の可能性は、オメガ3強化やベジタリアンと比較して、ケトン食では7.4倍高くなりました。ケトン食に関連する肯定的な効果を報告した85人中、55人(65%)で気分の安定性が改善、35人(41.2 %)でうつ病エピソードの減少、24人(28.2%)で思考と会話の明晰性が改善、22人(25.9%)でエネルギーが増加、17人(20.0%)で不安/パニック発作の減少、11人(12.9%)で躁病エピソードの減少、7人(8.2%)で睡眠が改善、行動制御の改善は7人(8.2%)、記憶力の改善は2人(2.4%)と様々な有益な報告が認められました。

双極性障害は糖質過剰摂取、インスリン抵抗性が大きくかかわっている疾患、つまり代謝疾患だと考えられます。しかし、精神科医たちは代謝疾患であることや、食事で疾患が改善してしまっては、自分たちの立場が危ういとでも思っているのでしょうか?「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極症2023」では、食事療法、インスリン抵抗性の改善治療についての言及は全くなく、薬物療法ばかりで、非薬物療法では非常に非人間的な残酷な治療法の電気けいれん療法や侵襲的な治療法などがほとんどです。

双極性障害でも直さない治療が標準的な治療となってしまっています。

精神疾患の予防や改善には糖質制限ですね。

「Ketosis and bipolar disorder: controlled analytic study of online reports」

「ケトーシスと双極性障害:オンラインレポートの管理された分析研究」(原文はここ

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