前立腺肥大症は糖質過剰症候群

中年や高齢になると前立腺肥大が起きるのは仕方がないと思っているかもしれません。しかし、恐らく前立腺肥大は単なる加齢性の変化ではなく、糖質過剰症候群でしょう。

よく、前立腺肥大の原因として、「男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロンに変換され、前立腺組織が刺激を受け肥大する。前立腺肥大は、男性ホルモンであるテストステロンとエストロゲンのバランスの変化に関連していると考えられる。女性ホルモンであるエストロゲンは前立腺がんには抑制的に働き、前立腺肥大には促進的に働く。エストロゲンに反応しやすい前立腺が増殖し、肥大する。」などと説明されますが、本当かな?と思います。もちろん、性ホルモンは大きな影響を与えると思いますが、テストステロンもエストロゲンもどちらも前立腺を肥大させるのに、40代くらいから顕著になってくるのはどうなのかな?とも思ってしまいます。テストステロンとエストロゲンのバランスの変化にしても、下の図のように、テストステロンの比率は下がりますが、逆転現象のような大きな変化にもなっていません。

テストステロンは加齢に伴い減少するのに、前立腺肥大は加齢に伴い増加します。(図はここより)

テストステロンが前立腺を肥大させるのであれば、10~20代から前立腺肥大の傾向が少しずつ出てきてもおかしくありません。テストステロンが無関係ではないとしても、近年増加している肥満の人のテストステロンが減少していることを考えると、別の増殖因子の方が大きな関係があると思います。もちろん、肥満だとエストロゲンが増加することも忘れてはなりません。性ホルモンの微妙な比率の変化が大きく関係しているのかどうかはわかりません。

糖質過剰摂取をすると、インスリン分泌が増加し、インスリン抵抗性が増加し、さらなる高インスリン血症をもたらすでしょう。

良性前立腺肥大は、男性で最も一般的な過形成疾患です。インスリン、IGF-1は成長因子であり、細胞増殖を起こします。インスリンはIGF受容体に結合し、IGFシグナル伝達経路を活性化して前立腺の成長を促進すると考えられます。

さらに、糖質過剰摂取による高インスリン血症は、性ホルモン結合グロブリンの低下と関連しており、前立腺細胞に侵入するテストステロンとエストロゲンの量が増加し、前立腺肥大のリスクが高まると考えられます。

つまり、根本は性ホルモンのバランスの変化というよりは、高インスリン血症でしょう。

ある研究(ここ参照)では、空腹時インスリン値が7mU/mL未満の患者では、前立腺肥大の年間増加率は0.84mL/年であったのに対し、空腹時インスリン値が13mU/mLを超える患者では1.49mL/年でした。

ある研究(ここ参照)では、BMIが1増加するごとに前立腺容積が0.41mL増加し、BMIが35以上の重度の肥満であると、前立腺肥大症になる可能性が3.52倍でした。空腹時血糖値が110 mg/dLを超える男性は、110 mg/dL以下の人と比較して、前立腺肥大症になる可能性が2.98倍であり、糖尿病だと2.25倍でした。

前立腺肥大は加齢性の変化だから、仕方がないと受け入れていると、次の糖質過剰症候群の症状、疾患がやってきます。すぐにでも糖質制限を始めましょう。

2 thoughts on “前立腺肥大症は糖質過剰症候群

  1. いつも貴重な情報ありがとうございます。
    健診でPSAが4.0ng/mlの基準をわずかに超え、2次検査にて血液検査にてphiを調べたところ、カットオフ値をやや超えたので、MRI検査にて肥大を確認、その後前立腺生検を勧められ、調べましたが異常はでませんでした。糖尿病ではありませんが、リブレにて定期的に日々のグルコース値の変化を見ています(ほぼ趣味の範囲です)。血液検査でのFPGは90台後半、HbA1cは5.8前後、リブレでの推定HbA1c5.1%くらい、140mg/dLオーバーレンジにならないよう日々の食事を意識しています。
    質問は、血糖値よりもインスリン分泌量を見る方が適切でしょうか。血糖値は高血糖のスパイク(急上昇急降下)も問題だと思いますが、脂質と糖質のコンボ食ではスパイクは起こさないものの、なかなか正常値に戻らない低空飛行になりがちで、AUCの面積で見たら問題ではないかと考えています。となると、前述の通り、血糖値の値よりもインスリン分泌量で見るのが良いのではないかと考えた次第です。清水先生のご見解を聞かせて頂けましたら幸いです。ご教授宜しくお願い致します。

    1. 小林充典さん、コメントありがとうございます。

      血糖値とインスリン値どちらを見たらいいのか、というご質問ですが、
      メカニズム的に考えれば、インスリンの方が良いと思いますが、
      現実問題としてインスリン分泌の推移を常に確認することはできないでしょう。

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