カルシウムサプリは心血管疾患および死亡リスクを増加させる

カルシウムのサプリメントは有害であるにも関わらず、いまだに骨を強くすると思われていて、ときどきカルシウムサプリを飲んでいる人がいます。

以前の記事「カルシウムサプリメントと心血管疾患および死亡リスクとの関連性」「カルシウムサプリメントによる大動脈弁の石灰化」「カルシウムサプリメントは心筋梗塞の危険性を高めるかもしれない」などで書いたように、無防備にカルシウムサプリを飲んでいると、心血管疾患や死亡リスクを増加させてしまいます。

今回の研究では、カルシウムサプリを飲んでいる人と飲んでいない人を比較して、心血管疾患との関連性を調べています。新たにカルシウムサプリメントを処方された補給群8,271人、カルシウムサプリメントの処方を受けていない対照群82,103人が対象です。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は、カルシウムサプリメント処方後の急性心筋梗塞(A)、虚血性脳卒中(B)、死亡事象(C )の累積発生率です。

補給群の心筋梗塞および脳卒中の発症リスクはそれぞれ1.14倍、1.12倍でした。死亡イベント発生リスクは1.40倍でした。

食事由来のカルシウムでは、血中のカルシウム濃度の急激な上昇は起きないでしょうが、カルシウムサプリによって血中カルシウム濃度が急激に上昇する可能性があります。循環カルシウム濃度が断続的に急激に上昇し、それが長期間維持されると、最終的にはアテローム性動脈硬化症の重要なマーカーである血管石灰化が促進されます。さらに、血中カルシウム濃度の上昇は血圧を上昇させますが、これはおそらく細胞外および細胞内のカルシウム変化を介してレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を変化させ、血管平滑筋の収縮を調節すると考えられます。さらにカルシウムサプリは凝固系にも影響を与え、凝固系の亢進、血栓のリスクを増加させてしまう可能性があります。

骨粗しょう症は整形外科では、頻繁に検査され、骨の健康のためにカルシウムが必要だという一般的な通説を信じて、サプリを飲んでしまう人もいるでしょう。カルシウムサプリメントは骨粗しょう症の予防または治療にほとんど効果がありません。

カルシウムサプリは危険です。カルシウムは食事で摂るようにしましょう。

「Calcium Supplementation, Risk of Cardiovascular Diseases, and Mortality: A Real-World Study of the Korean National Health Insurance Service Data」

「カルシウム補給、心血管疾患リスク、死亡率:韓国国民健康保険サービスデータの実世界研究」(原文はここ

2 thoughts on “カルシウムサプリは心血管疾患および死亡リスクを増加させる

  1. ご高齢で「骨を強くする」内服や注射
    に頼ってらっしゃる方もいますが、
    そんな便利な薬が有れば、骨折寝たきり
    の人はいないはず?

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      骨の強さは、骨密度だけではなく、骨の質が重要です。
      そこにはあまり触れないのが医療の世界でしょう。

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