カルシウムサプリメントと心血管疾患および死亡リスクとの関連性

骨粗しょう症に対する不安や恐怖を与えて、カルシウムを強化した食品やカルシウムサプリを売って、儲けている企業もあるでしょう。

カルシウムサプリは本当に必要でしょうか?以前の記事「カルシウムサプリメントによる大動脈弁の石灰化」「カルシウムサプリは骨には行かず血管を石灰化させるかもしれない」「カルシウムサプリメントは心筋梗塞の危険性を高めるかもしれない」でも書いたように、カルシウムサプリは心臓や血管に有害である可能性が高いです。

今回の研究では、カルシウムサプリメントの使用と糖尿病の状態との関連を分析しています。イギリスバイオバンクの434,374人(平均年齢56.0歳)のデータ使用しています。そのうち21,676人が糖尿病でした。また、29,360人(6.8%)がベースラインで習慣的にカルシウムを補給していると報告しました。

中央値8.1年と11.2年の追跡期間中に、それぞれ26,374件の心血管イベントと20,526件の死亡(心血管疾患による死亡4,007件を含む)がありました。(図は原文より、表は原文より改変)

心血管疾患発症心血管死亡全原因死亡
糖尿病なし
  モデル30.97 (0.92, 1.03)1.05 (0.90, 1.23)1.02 (0.96, 1.09)
糖尿病あり
  モデル31.34 (1.14, 1.57)1.67 (1.19, 2.33)1.44 (1.20, 1.72)

上の表は、習慣的なカルシウムサプリと心血管疾患および全原因死亡のリスクとの関連を示しています。糖尿病がない場合ではリスク増加は認められませんでしたが、糖尿病がある場合はどのリスクも1.34倍から1.67倍増加しました。

上の図は、習慣的なカルシウムサプリメントの使用(非使用者または使用者)および糖尿病の有無と心血管疾患発症率(A)、心血管疾患死亡率(B)、および全原因死亡率(C)との関連を示しています。糖尿病がなくカルシウムサプリも使っていない人と比較して、糖尿病があってサプリを使用していない人でもリスクがそれぞれ1.25倍、1.67倍、1.52倍になっていますが、糖尿病がありカルシウムサプリメントを使用している人は、心血管疾患発症リスク1.67倍、心血管疾患死亡率2.84倍、全原因死亡率2.20倍にもなっています。

いくつもの研究でカルシウムサプリと心血管疾患リスク増加について指摘されています。足りないものをサプリで補おうとすると、その成分だけどうしても非生理的な血中濃度になります。カルシウムの塊を食べる人類は現代人だけです。もちろん、サプリで一つの成分だけの塊を摂って、血中濃度が増加しても問題ないものもあるでしょう。しかし、大きな問題を起こすものもあるのです。

安易なサプリは有害になる可能性があります。毎日の食事の方が重要です。

「Associations of Habitual Calcium Supplementation With Risk of Cardiovascular Disease and Mortality in Individuals With and Without Diabetes」

「糖尿病の有無での習慣的なカルシウムサプリメントと心血管疾患および死亡リスクとの関連性」(原文はここ

3 thoughts on “カルシウムサプリメントと心血管疾患および死亡リスクとの関連性

  1. 糖尿病協会学会に参加中です。栄養のメイン講演聞いてみましたが、糖質制限関連のエピソードは何もありませんでした。加工食品に注意、野菜食べろ、食べ順ぐらいの内容でした。

    1. IgA腎症患者さん、コメントありがとうございます。

      大事なお客さんを減らすわけにはいかないので、これくらいの内容しか言わないでしょう。

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