アメリカのUCLAの内科助教授、ハーバードで博士号など、素晴らしい経歴の先生が書いた本ですが、日本の片隅で一勤務医からツッコミを入れさせていただきます。
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」と題した本ですが、エビデンスをもとに書かれています。江部先生もこの本を手に入れたとおっしゃっていたので、近々ブログで取り上げるのではと思われますが、良い面と悪い面が非常に混在しており、残念な内容もいっぱいです。
例えば、白米が非常に体に良くないことを書いたことは評価できますが、赤い肉や飽和脂肪酸は体に悪い、とこれまでの神話、仮説を未だに持ち出しており、非常に残念です。また、果物の多くは血糖値をほとんど上げないなどと書いていますが、ご自分で食べて調べれば果物が血糖値を上げることくらいわかるはずです。もちろん量にもよりますが。
今回は最近の私の記事「大量のコレステロールを摂るとどうなるか? その1」に関連した卵のことを取り上げてみたいと思います。本書の中で2013年に発表された論文がエビデンスとして使用されて、「1日1個以上の卵を食べるとほとんど卵を食べないグループと比較して2型糖尿病を発症するリスクが42%高い」と書かれています。(この論文はここ)
16の研究からのメタアナリシスですが、その結果は次のようです。
1日1個以上卵を食べるグループと、1週間に1個未満のグループを比較すると
・全ての心血管系疾患、虚血性心疾患、脳卒中、虚血性心疾患による死亡率、脳卒中による死亡率は全て有意差なし。つまり卵の消費とは関連していません。
・2型糖尿病の発症リスクは42%増加。
・糖尿病の患者だけで見ると、全ての心血管系疾患のリスクは69%増加。
となっています。これまで言われてきた仮説では、卵はコレステロール値を上げることが問題視され、心血管系疾患のリスク増加が危惧されてきましたが、それは否定的であることがわかります。しかし、糖尿病を発症するリスクが高くなることが問題だと本書では書かれています。
本当に卵を毎日食べると糖尿病になるのでしょうか?この論文で取り上げられた人たちは、当然糖質過剰摂取の人たちです。また、古い仮説では、卵はあまり食べない方が良いとされてきています。その中で毎日卵を食べる人はもしかしたら健康に関心が薄いかもしれません。そうすると当然糖質摂取量は多くても不思議ではありません。
糖質過剰摂取の状態で卵の消費量が糖尿病発症と関連している、というのであれば良いのですが、それでもなぜ?という疑問がわきます。卵の何が糖尿病を発症させるのでしょう?卵はタンパク質と脂質からできていて、糖質はほとんどゼロです。血糖値はほとんど変動しませんが、どうして糖尿病に関連しているのかさっぱりわかりません。やっぱり、他の食事の影響を多大に受けている可能性が強いと考えられます。
糖質制限をしている人のデータを集めれば、全く卵の消費量と糖尿病の発症は関連していないことがわかるでしょう。この論文の考察でも取り上げられていますが、糖質制限をした場合は1日3個の卵消費でも空腹時の血糖値やインスリン抵抗性には関連していません。
すでに糖尿病の患者さんで、心血管疾患のリスクが高くなるというのも、同じように考えられます。糖尿病を発症していると恐らく食事指導では卵を食べ過ぎないように言われるでしょう。しかし、毎日1個以上食べているのですから、言われた指導を遵守していない人たちです。そうすると食生活の乱れがあり、当然糖質摂取量も少ないとは考えにくいと思います。
また、この論文の考察では卵1個の消費ではコレステロールの変化はほとんどない、と言っておきながら、血清コレステロールの増加が影響するのでは?と言っています。何か矛盾しています。
もちろん、今あるエビデンスだけで言うのであれば、この結論は間違いではありませんが、そもそも糖質の摂取量が多すぎるのです。糖質摂取量で調整してみないと結果は何とも言えません。非常にエビデンスの扱いは難しいですね。
私の「仮説」では、卵は全く安全な食材です。糖質制限をしている前提であれば、たっぷり食べましょう。糖質制限をしていないのであれば、結論はわかりませんが、恐らく問題ないはずです。なぜなら、卵そのものに糖尿病を発症させる要素が見当たらないからです。
この論文の結果をこの本で取り上げるのであれば、UCLAの助教授らしく、1日1個の卵がなぜ糖尿病に影響するのか、そのメカニズムを示してほしかったです。もちろんそのメカニズムは存在しないと思いますが。
また、他にもいろいろ突っ込みどころ満載の本なので、機会があれば記事にしたいと思います。
こんにちは山崎と申します
先生のブログを読んで勉強してます
ありがとうございます
ケトン体→アセトン→血中循環
アセトンが身体老廃脂質抽出、
血液濃度調整(サラサラ)等
仕事をして尿、呼気、汗腺から
排出してる世界一シンプルな
話しです
べストセラー1位
世界一シンプルで科学的に
証明された究極の食事
津川友介 著
アセトン洗浄の件を
津川友介先生にtweeterで
質問したところブロックさ
れました これを認めると
本内容と整合性がとれなく
なるからでしょうね
ケトンアセトン洗浄説は
世界的に見ても論文が無い
様ですよ世界一シンプルな
自然治癒力なのに
https://i.imgur.com/XEejexi.jpg
山崎勝巳さん、コメントありがとうございます。
私はその仮説はよく知りません。世界的に見て論文が無いようであれば
それはまだ科学ではないと思います。
清水
作者の方がtwitterで書かれてます。
https://twitter.com/yusuke_tsugawa/status/989649752630247424
言いたいことがあるならここで言えばいいのにと思いますが。
よしださん、コメントありがとうございます。
私はツイッターをしないのでわかりませんでした。
わざわざここにコメントしに来なくても良いですが…
こんな、日本の片隅の中年ドクターのひとりごとにまで反応していただきありがとうございます。
全く意見が違うところと、同じ意見のところがありますが、
最も大きな違いは、私は糖質制限をしていることを前提です。
また、もちろんWHOの発表は知っていますが、
食事に関する研究の難しさがそのまま表れているのではないでしょうか?
そのまま鵜呑みにはできませんが。
この先生を信じたい方は、玄米や全粒粉や果物をたっぷりと食べてみてください。
私は絶対にお勧めしませんが。
赤い肉については機会がありましたら記事にします。
糖質制限している一型糖尿持ちですが、私も興味本位で読んでみました。
>この先生を信じたい方は、玄米や全粒粉や果物をたっぷりと食べてみてください。
この先生は血糖値測ったことあるんですかね?科学的な究極の食事、とのことでしたが全然信用できませんでした。ちまたでは何故か祭り上げられており、不思議でしょうがありません。
あまり気にせずこれまでどおり糖質制限(赤身も食べて)していこうと思います。
type1diabetesさん、コメントありがとうございます。
非常に良い内容もあるので、トンデモ本とは思っていません。しかし、エビデンスが大好きな感じの印象ですね。
自分で測定しても所詮n=1なので、この先生には何の意味もないのでしょう。
糖質制限を完全否定しているのではなく、茶色い炭水化物は食べても良いか、むしろ食べた方が良いという立場です。
健康な人であれば少なめであれば、これでもいいかなと思います。
しかし、たっぷりはダメでしょう。
津川氏がTwitterで、ご自身のフォロワーが「茶色い炭水化物を多く摂るグループが痩せているというエビデンスに勇気付けられて食べ始めた」と言われ「通常の食事量でしか検証されていないので適量で」と返していたのを見て、あまり科学的な答えではないなと思っていました。著書の中の塩についてのコラムでも、塩分は控えめにとありましたが、そもそも塩分の血圧への影響の前に、控えめにという表現だと極端に制限する人が出ないか心配になりました。体重辺り何gが適量、くらいは述べるべきかと。
中山さん、コメントありがとうございます。
そんなんですね?彼はエビデンス屋さんのようですね?
エビデンスがないものは正しくなく、エビデンスがあるものは正しいと思われているのですかね?
玄米を食べれば食べるほど痩せるわけではないのは当然ですので、ある意味彼は間違ってはいません。
しかし、あの本を読んでも「じゃあ、何をどれだけ食べるのが良いの?」ということは
何もわかりませんでした。何をどれだけ食べると健康になれるかなんてことはエビデンスがありませんので、
彼は書くことができません。ただのエビデンス紹介本だったということです。
通常、あることのエビデンスというのは肯定するものと否定するものが両方存在します。
そして、自分が肯定するのか否定するのかを示し、それを生物学的な理論で説明すべきです。
ただ研究発表された数字を並べることは素人でも可能です。
私も気をつけないとダメですね。
食事と健康に関することで、完全に正しいエビデンスがあることの方が少ないと思います。
何を信じるかはそれぞれの人の自由です。
卵を多く食べる人が糖尿病になりやすく卵を多く食べる糖尿病の人が循環器系疾患を患いやすいことを説明する仮説は一応存在します。
詳しく書くと長くなるので要約のみにしておきます。糖尿病にかかりやすいのは糖質を多く摂取する人で、そのような人の腸内細菌のエンテロタイプはタイプ2か3であることが多い。すると糖尿病の人が卵を多く食べると血中TMAOが増加して循環器系疾患の発症する確率が高くなる。また卵を多く食べかつ高糖質食を摂取するとTMAOの未知の作用として糖尿病の発症をたすけるかもしれません。(これは単なる推測です。)
高脂肪高たんぱく質の糖質制限食によりエンテロタイプが長期的にタイプ1に変化するので、私たち糖質制限人は、赤肉のカルニチンも卵のフォスファチジルコリン(レシチン)も心配は無さそうです。低糖質食を続ける限り糖尿病や循環器系疾患のリスクは高くならないでしょう。高糖質食の方は卵や赤肉を制限されたらよろしいかも。
通りすがりKさん、コメントありがとうございます。
TMAOの仮説は私の認識ではマウスの実験だったと思います。特別な状況で、人間とは全く違う食べ物を食べるマウスの実験では、エビデンスとは言えません。
もちろん参考にはなる実験もありますが。
カルニチンは脂質をエネルギーにしている糖質制限食ではなくてはならないものだと思っています。
「高糖質食の方は卵や赤肉を制限されたらよろしいかも。」とおっしゃっていますが、そもそも「高糖質食をやめた方がよろしいかも?」でしょう。
初めてコメントいたします。先生を師匠に糖質制限・ケトラン実践中です。
ところで、「カルニチンは脂質をエネルギーにしている糖質制限食ではなくてはならないものだと思っています。」とは、どのような意味でしょうか?
赤肉青魚どちらも苦手でして、もっぱら、とりむね・ささみ、白身魚がタンパク質供給源です。また、油脂も胃もたれが激しく苦手です。
カルニチンのサプリが必要なのでしょうか・・・
ponさん、コメントありがとうございます。
カルニチンは脂肪酸をエネルギーにするときにミトコンドリアに入り込むのに必要なアミノ酸です。
体内で合成できるので必須アミノ酸ではありません。通常の生活で枯渇することはないと考えられますが、
糖質制限では脂肪がメインのエネルギー源であるので、カルニチンをいっぱい必要とします。
さらにマラソンなどをしている場合にはもっともっと必要なので、もしかしたら合成が間に合わないのでは?と推測します。
赤肉にはたっぷりカルニチンが入っているので、私はお勧めです。レース前は結構ラム肉を食べたりしています。
鶏や魚には少ないです。
サプリは効果があるのかどうかは不明です。
それにしても糖質制限をして、油脂が苦手としたら、エネルギー源はタンパク質のみですか?
それで、必要なエネルギー量が確保されていますか?白い肉ばかりでは鉄も少なめですが?