アテローム性動脈硬化症は決して中高年の病気ではありません。小さなころから少しずつ進行して、それが成人になり、多くの人は中高年で症状が現れるだけです。(「アテローム性動脈硬化症は生まれた頃から始まっている その1」、「その2」参照)
それでは、動脈の脂肪線条や隆起病変は避けられないものなのでしょうか?または進行を遅らせることはできないのでしょうか?前回の「その2」では糖質過剰摂取が大きな要因であるという趣旨のことを書きました。今回は肥満との関連を示します。(図は原文より)
対象は15歳~34歳の約3000人です。
上の図は左が男性、右が女性で、上のグラフが脂肪線条、下が隆起病変です。横軸はBMIで、縦軸は冠動脈の表面にどれくらいの面積で病変があるのかを示しています。グレーのバーは皮下脂肪が性別やBMIに対して中央値以下の人で、黒いバーは皮下脂肪が中央値よりも厚い人です。そうすると、脂肪線条については男性でBMIの増加に伴い、脂肪線条も増加していますが、皮下脂肪との関連はありません。女性では有意ではなかったのですが、皮下脂肪が厚い場合にはBMIの増加に伴い、脂肪線条が増加する傾向がありました。しかし、皮下脂肪が少ない場合にはBMIとの関連はありませんでした。ただ、全てのBMIで厚い皮下脂肪の女性は脂肪線条の程度が高いようでした。
隆起病変については、男性では皮下脂肪にかかわらず、BMIの増加に伴い隆起病変も増加しましたが、BMIが30以上になると皮下脂肪が厚い方がより広範囲の隆起病変を認めました。一方女性はBMIや皮下脂肪の厚さと隆起病変は関連していませんでした。
上の図は男性のもので、上の方は脂肪線条、下が隆起病変、左が皮下脂肪の少ない人、右が皮下脂肪が厚い人であり、年齢とBMIで分けています。色は濃くなるほど表面の病変の領域が広範囲になっていて、真っ黒なのは10%以上の範囲で病変があることを示しています。そうすると、25~34歳の脂肪線条の領域はほぼ真っ黒です。隆起病変でも皮下脂肪が厚い人は半分以上が真っ黒になっています。
上の図は女性のものです。男性と比較するとかなり病変が少なく見えます。閉経前の女性は男性に比べて皮下脂肪が多いことは正常なことですし、やはりホルモンなどでかなり守られているように思えます。
男性は10代から20代でさえこのように肥満と冠動脈のアテローム性動脈硬化症が関連しています。もっと小さなころから当然病変は始まり、進行しています。小さなころから肥満を防止し、食事に注意することは重要なことだと思います。小さな子供に好きなものを食べさせ、肥満にさせているのは、愛情を持ってかわいがっていることではなく不健康にさせていることです。糖質過剰摂取を小さなころから避けて、肥満にならないようにしましょう。
「Obesity accelerates the progression of coronary atherosclerosis in young men」
「肥満は若年男性の冠動脈アテローム性動脈硬化症の進行を加速させる」(原文はここ)