GLP-1はセカンドミール効果に関連しているか?

以前の記事「血糖値スパイクを抑えるセカンドミール効果は本当か?」では、2型糖尿病において食物繊維にセカンドミール効果は期待できないことを書きました。大学の教授の説明によると、セカンドミール効果のメカニズムは、腸内細菌は水溶性食物繊維をエサにして増殖して、短鎖脂肪酸(酪酸や酢酸など)を作り出し、小腸にある細胞(L細胞)が刺激されてGLP-1という消化管ホルモンを分泌し、このGLP-1 が血糖値が上がる前に、先回りしてインスリンを分泌させ、血糖値の上昇を抑える 、というものです。では、GLP-1について、人間の研究があるので見てみましょう。今回は2型糖尿病の人ではなく健康な人が対象です。

この研究では、75gのグルコース(Glucose)、または75gのグルコース+ 24gの水溶性食物繊維であるイヌリン(Inulin)、または75gのグルコース+ 28gのレジスタントスターチ(RS) を300mLの水に溶解したものを飲んで、その後のGLP-1などの分泌を比較しました。昼食は標準的な(?)昼食であり、朝食の4時間後に摂取し、その中身は588kcal、49.8%炭水化物、13.6%タンパク質、36.7%脂質でした。(図は原文より)

上の図は血中の短鎖脂肪酸です。それぞれ短鎖脂肪酸の酢酸、プロピオン酸、酪酸を表しています。短鎖脂肪酸はイヌリン摂取群では2~4時間後で増加し始め、4~6時間後ではグルコースのみの群より有意に増加していました。レジスタントスターチ摂取群では(f)の付いたところではグルコースのみの群よりも有意に増加していましたが、イヌリンほどではありませんでした。

上の図は血糖値、インスリン値と遊離脂肪酸、C-ペプチドを表しています。1時間後ではイヌリン群でグルコース群よりも血糖値が高くなりました。(f)の付いたところではインスリン値以外ではレジスタントスターチ群でグルコース群より低値となりました。インスリン値に関しては3時間後で逆にレジスタントスターチ群の方が高値となっています。ただこれがGLP-1が先回りしてインスリンを分泌させていたのかどうかは不明であり、大きな血糖値への効果はありません。

上の図は曲線下面積です。表の上からグルコース、インスリン、C-ペプチド、遊離脂肪酸です。イヌリンでは0~2時間でグルコースよりも高値となっている以外にグルコースと変化はありませんでした。4~6時間値もグルコースと差がないということはセカンドミール効果が得られないということになります。レジスタントスターチでは4~6時間値で有意に低値となり、セカンドミール効果を示唆しています。しかし2~4時間のC-ペプチドは逆にレジスタントスターチ群で高値となっています。インスリンに関しても有意差は認めませんが2~4時間でグルコース群よりもレジスタントスターチ群で高値となっていました。しかし、いずれも有意差があるとはいえ、臨床的に意味のあるような差には思えません。

上の図は血中のGLP-1(GLP-1の上は全GLP-1、下は活性型GLP-1のグラフ)、PYY、グレリンです。GLP-1とPYYは食欲抑制ホルモンで、グレリンは食欲亢進ホルモンです。今回はGLP-1のみに注目します。グルコースであろうがイヌリンであろうがレジスタントスターチであろうがGLP-1の分泌の増減に違いが認められませんでした。

上の図は左側が痩せた人、右側が過体重と肥満の人のGLP-1、PYY、グレリンを示しています。これに関してもGLP-1は全ての群で差がありませんでした。

動物実験では、結腸の短鎖脂肪酸はPYYとGLP-1を増加させ、グレリン分泌を低下させるという結果はあるようですが、人間では上の様にGLP-1は短鎖脂肪酸が増加しても変化はありませんでした。食物繊維やレジスタントスターチを一緒に摂取しても多少の違いはありましたが大きなセカンドミール効果は得られませんし、食物繊維に関しては今回の研究ではファーストミールでは逆に血糖値が高くなったほどです。グルコースだけでも昼食後の血糖値の上昇幅は以前の記事「血糖値スパイクを抑えるセカンドミール効果は本当か?」と同じように低下していました。つまり、糖質過剰摂取ではセカンドミール後の血糖値はファーストミールの種類に影響をほとんど受けないと考えられます。

以前の記事で紹介したネットの記事は恐らく動物実験の内容をそのまま人間に当てはめたのではないかと思います。根拠がわからない記事には要注意ですね。

やはり、ファーストミールもセカンドミールも糖質制限食です。

 

「Acute increases in serum colonic short-chain fatty acids elicited by inulin do not increase GLP-1 or PYY responses but may reduce ghrelin in lean and overweight humans」

「イヌリンによって誘発された血清結腸短鎖脂肪酸の急激な増加はGLP-1またはPYY反応を増加させないが痩せた人および過体重の人においてグレリンを減少させる可能性がある」(原文はここ

「The acute effects of inulin and resistant-starch on postprandial serum short-chain fatty acids and second-meal glycaemic response in lean and overweight humans」

「痩せた人および過体重の人における食後血清短鎖脂肪酸およびセカンドミール血糖反応に対するイヌリンおよびレジスタントスターチの急性効果」(原文はここ

2 thoughts on “GLP-1はセカンドミール効果に関連しているか?

  1. こんにちは、くまふぃーです。
    セカンドミール効果、糖質制限反対派の切り札(もう後がない)でしょうか。
    もう既に、糖質制限に反証するには、動物実験の結果でなければ無理なようですね。
    短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌は、人では、大腸に多く、小腸に腸内細菌が入ると何らかの病気になるんではなかったでしょうか。小腸と大腸の区別が無い動物ならありえるかもしれませんが。
    様々な難病が、糖質制限と正しい栄養の取り方で治癒できることがわかると、困る人々が実際にいるのでしょう。医者に無縁で長生きが一番ですのにね。

    1. くまふぃーさん、コメントありがとうございます。

      おっしゃる通りです。動物実験の結果も情報の出所をわざと言わないようにしているように見えます。
      まあ、それぞれの判断に任せるしかありません。
      食事が最も大切です。

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