現在の医学、栄養学の研究では資金を提供する企業の存在は不可欠になっています。以前の記事「臨床試験は製薬会社の思いのまま? 論文より自分を信じよう」でも書いたように、一流の医学雑誌の論文でさえ、非常に多くの企業が深く影響を与えています。
実際に医学や栄養に関する研究論文でどれほどスポンサーは影響を与えている可能性があるのでしょうか?(図は原文より)
上の図は生物医学的な研究に関する、スポンサーとその企業に有利な結果が示された関係を表しています。オッズ比は3.6です。企業が資金を提供した研究では、企業関連の資金を得ていない研究よりもスポンサーの経済的利益に有利である結果を示す可能性が3.6倍高いのです。
上の図は栄養関連の研究についてです。医学研究と同様に企業が資金を提供した研究では、企業関連の資金を得ていない研究よりもスポンサーの経済的利益に有利である結果を示す可能性がおよそ4〜8倍高い のです。
このような結果は当然のことです。
・スポンサーである企業は、自社製品を有利な立場で発表する、または競合他社の製品を不利な立場で発表すると思われる研究のみに資金を提供する可能性が高いのは当たり前です。自社製品が不利益を与えるという研究にお金を出すはずがありません。
・研究者は、彼らのスポンサーの経済的利益と一致する方法で仮説を立て、研究をデザインしたり、データを分析する可能性があります。または、企業の人間が研究に加わり、自社に利益になるように研究をデザインしたり、データ分析をする可能性があります。さらには不利益になるデータは理由を付けて削除することさえ可能です。
・スポンサーまたは研究者は、スポンサーの製品に不利益な影響を与える結果が出た場合、その結果の公表を遅らせるか、公表しないことを選択することができます。不利益なデータを隠し、もう一度デザインをし直して、利益が得られる研究だけを公表することは十分可能です。
・科学的なレビューの著者は、スポンサーの利益と一致する文献を選択的に検索し、それを解釈してまとめることができます。
・学会などのシンポジウムでもスポンサーの経済的利益と意見が対立するプレゼンターを参加させないことにより、ある結果を過大評価または過小評価して、スポンサーに利益のある結果のみをコンセンサスが得られたかのように見せかけることも可能です。
つまり、研究の結果はスポンサーが決めていると言っても過言ではないのです。このようなスポンサーに都合の良い研究結果を今の世界では「エビデンス」「科学的根拠」と呼んでいます。
非常に研究にはお金がかかります。資金提供をするのは国であることもありますが、多くは企業です。だから、このようなスポンサーに影響を受けた研究というのは仕方がないことです。しかし、それを知りながら、エビデンスのみを振りかざす専門家には、スポンサーが付いているのかもしれません。
「Relationship between Funding Source and Conclusion among Nutrition-Related Scientific Articles」
「栄養関連科学論文における資金源と結論の関係」(原文はここ)
「Scope and impact of financial conflicts of interest in biomedical research: a systematic review」
「生物医学研究における経済的利益相反の範囲と影響:系統的レビュー」(原文はここ)