日本の子宮頸がんはなぜ2000年を境に上昇を始めたのであろう?

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)によってほとんどが発症すると考えられています。私もずっとそう思っていました。しかし、本当でしょうか?

大阪大学によって今回発表された研究を見て、上で書いたような疑問が起きました。1976年から2012年の間に収集された大阪データを利用して、日本の子宮頸がんの傾向を評価してみたところ不思議な結果が出ています。(図は原文より)

上の図は10万人当たりの年齢調整発生率を表しています。10万人当たりの年齢調整発生率は、1976年~2000年にわたって有意に減少したのですが、2000年を境にまた上昇に転じています。HPVは性交渉で感染することが知られているウイルスです。そして、子宮頸がんの患者さんの90%以上からHPVが検出されるそうです。HPVに感染することそのものはまれではなく、多くの場合は一時的な感染で終わり、症状のないうちにHPVが体内から排除されると考えられています。しかし、ウイルスが排除されずに感染が続くと、一部の人では子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生すると考えられているのです。

でも、もしもウイルスが原因だとすると、上のようなグラフは明らかに不自然に見えます。

上の図はがんの統計’17からの図です。これを見ると2013年での子宮頸がんの発症のピークは40歳前後です。2000年が最低値と考えるとその20~30年前ごろに最も性的に活発であったでしょう。つまり1970年代でしょうか?1950年代から1970年代までは持続的に多くの女性が、多数の人とセックスをする割合が低下して、ウイルス感染が減少したのでしょうか?

しかし、1976年の発生率は2012年の約2倍であることから、1976年よりもその前の時代では現在よりもウイルス感染がもっともっと一般的だったのでしょうか?ということはその時代はもっといろんな人とのセックスが盛んだったのでしょうか?それとも衛生状態でしょうか?

グラフがあまりにも2000年まで急激に発症率が低下していたのに、なぜ急に上昇に転じたのでしょうか?性交渉のあり方が昔と変わってきたのでしょうか?あまりにもV字がきれいな形であるので、何があったのだろうと考えてしまいます。

ウイルスが原因の場合、果たしてこのようなきれいなグラフを描くでしょうか?何か2000年までウイルス感染対策をしていたのならまだしも、日本でHPVワクチン接種が導入されたのは2009年です。最近子宮頸がんが増加しているのは確かですが、その前はものすごい勢いで減少を続けていたはずです。その減少の要因を失ったか、その要因を打ち消してさらに増加させるような新たな要因が急に多くなったかどちらかが考えられます。

ウイルスが原因と考えるならば、ワクチンを導入しその効果が出るまでの間は、ある程度一定の範囲で発生しているはずです。だから、子宮頸がんの本当の原因はHPVではないのではないでしょうか?

10万人当たりの発生率が1976年で28.0、2000年が9.1、2012年が14.1です。1976年から25年間に3分の1以下になっていた発生率の低下の原因がわかれば現在の発生率を減少させることができるはずです。

下の4つのグラフは日本全体の統計です。

1975年と2014年を比較すると、明らかに45歳未満の罹患率が増加していることと、45歳以上の減少、特に60代~80代は極端に減少しています。

上の2つの図では40歳未満では2000年ごろから非常に罹患率が増加しています。40歳以上では1990年代ごとから横ばい傾向になっており、やはり2000年を境にやや増加気味です。

性的に活発なのを20代と考えると、ウイルス感染が原因だとして、2014年のピークを考えると、感染から10~20年程度で子宮頸がんを発症していることになります。そのまま1975年に当てはめると、1970年代の女性は50~60代が性的に活発になっていたことになります。または昔のHPVはゆっくりと子宮頸がんになっていたものが、最近はもっと早くがんになっているのでしょうか?なんか変です。

1975年では高齢層で非常に多く子宮頸がんになっていたのに、2014年では40歳未満の罹患率と変わりないくらいまで減少してしまっています。これを果たしてウイルス感染で説明できるのでしょうか?

アテローム性動脈硬化症のプラークにコレステロールが溜まっていることから、長年コレステロールの摂り過ぎが動脈硬化の原因であると勘違いされてきました。また、脂肪をたくさん食べることによって肥満が起きると勘違いされてきました。そして、その間違った仮説に多くの製薬会社や食品産業が食いついてきて、間違った仮説を信じ込ませました。

今回ももしかしたら、同じようなビジネスが絡んでいる可能性があるかもしれません。つまり、ワクチンの製造会社がHPV犯人説を強く提唱している可能性があります。

感染が起きていることと、その感染によってがんが発生することには大きなギャップがあるような気がします。子宮頸がんのほとんどにHPVが検出されることは一つの必要な条件である可能性はあります。では、同年齢の人で、子宮頸がんではない人のHPV検出率はどの程度なのでしょうか?(私はよく知りません)

しかし、次のような研究があります。高リスクHPV(hrHPV)が腫瘍組織に存在しているかどうかで子宮頸がんの予後を調べたのですが、面白い結果でした。(図は原文より)

上の図は縦軸が生存率で横軸が診断からの年数です。赤がhrHPV陽性、青がhrHPV陰性です。明らかにhrHPV陽性の人の方が生存率が高いのです。HPVが見つからない人の方が少ないのですが、見つかった場合は予後が良く、見つからない人では予後が悪い。そうすると、HPVはもしかしたら子宮頸がんに対して何らかの保護的効果がある可能性すら考えられます。

HPV感染自体は一般的なことです。その一般的に起きることがなぜ、がんに結びつくかが問題です。もっと大きな違う要因が存在しないと、子宮頸がんまでは行きつかないのではないでのしょうか?ウイルス+大きな要因が同時に存在することが原因であるような気がします。

またまた、糖質制限と結びつけて考えると、1970年代ごろから、低脂肪食が一般的に推奨されています。それによって糖質摂取量が増加しています。ただ、糖尿病は子宮頸がんの死亡率を有意に高めるという研究はありますが、発生率を高くするとは考えられていません。1990年代後半にウォシュレットの過程の普及率が50%を超えたことも何か関連があったりして…

いずれにしても、子宮頸がんの原因がウイルスである、ということは鵜呑みにできなくなってしまいました。(私の解釈がおかしいのかもしれません)

「Epidemiological and clinical analyses of cervical cancer using data from the population-based Osaka cancer registry」

「集団ベースの大阪癌登録からのデータを用いた子宮頸がんの疫学的および臨床的分析」(原文はここ

「High-risk human papillomavirus status and prognosis in invasive cervical cancer: A nationwide cohort study」

「浸潤性子宮頸癌における高リスクヒトパピローマウイルスの状態と予後:全国的コホート研究」(原文はここ

4 thoughts on “日本の子宮頸がんはなぜ2000年を境に上昇を始めたのであろう?

  1. はじまして。

    twitterにて、貴ブログ記事を「HPVと子宮頸がんに関する重要な解説記事だと思います。」とツイートさせていただきました。

    https://mobile.twitter.com/nana7770214/status/1188053200819015682

    貴ブログ記事の内容に関して、僭越ながら何点かコメントさせて下さい。

    【① 統計データについて】

    子宮頸がん罹患率の経年的変化(年次推移)を検討する際に、貴記事では『国立がんセンター がん情報サービス 』の統計データを参照されていますが、そのデータには、「子宮がん」「子宮頸がん」「子宮体がん」という3つの疾病カテゴリー鑑別における重大な問題点があります。
    端的に言いますと、「子宮頸がん」と「子宮体がん」に鑑別されずに、分類不明の「子宮がん」として計上されている子宮頸がんが時代が古い時ほど多いことが分かっています。

    したがって例えば、『がん情報サービス』の子宮頸がんのデータをそのまま引用すると、1950年代から現在までに生じた子宮頸がん(年齢調整)罹患率や死亡率の大きな減少幅を過小評価してしまうことになります。
    また、子宮頸がん死亡率は近年増加していると言う医師が多いのですが、カテゴリー区分における「バイアス」を考慮して補正すれば、増加はしていないという結果になります。

    この辺の問題については、愚生のブログ記事の中で詳しく解説しております。参考にしていただければ幸いです。

    https://ameblo.jp/nana7770214/entry-12238513372.html

    https://ameblo.jp/nana7770214/entry-12266443451.html

    https://ameblo.jp/nana7770214/entry-12283744724.html

    https://ameblo.jp/nana7770214/entry-12291107057.html

    https://ameblo.jp/nana7770214/entry-12251164345.html

    【② 罹患率増加におけるバイアスについて】

    子宮頸がんやCIN3(高度異形成~上皮内がん)の罹患率をみる時には、症状のない女性を対象にして行われる検診(細胞診)の普及による過剰診断の増加を考えなければならないと思います。

    乳がんや甲状腺がんなどでは、検診によって多くの過剰診断が発生していることは広く指摘されていますが、子宮頸がん検診でも過剰診断はCIN3に限らず子宮頸がん(特に微小浸潤がん)でも多く発生していることは間違いないでしょう。

    したがって罹患率データに関しては、検診の普及によって増加している過剰診断バイアスがあるので、その的確な把握や評価は困難だと私は考えています。

    【③ HPVと子宮頸がん発症の関係について】

    HPV未感染の女性にワクチンを接種すれば、多くの人は感染予防効果の指標とされる抗体価が大きく上昇します。しかし、ワクチンを接種しても期待される抗体価が得られない女性も少数ながらいることが報告されています。
    もし仮に、そういった女性の免疫(免疫遺伝子)的素因が将来の子宮頸がん発症の重大リスク、主要リスクと大きく重なっているとすれば、HPVワクチン接種は「(子宮頸がん発症リスクの高い)必要なターゲットにはあまり当たっていない無駄の多い鉄砲」ということになります。

    免疫的(遺伝的)素因が子宮頸がんの発症や進行の重要コファクターだとすれば、HPVワクチン接種の意義は大きく損なわれてきます。
    健康な若い女性に広く接種するワクチンであり、重篤な副作用(疑い)が世界中から多く報告されている状況の中で、HPVの感染やCINの抑制のデータだけをもってして、「子宮頸がん罹患や死亡を大きく減らす」と断定的に唱えるのは、科学的検証の足りていない勇み足ではないかと私は思います。

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