高齢者は入院をするとせん妄という、一時的な意識障害、認知機能障害を起こすことが珍しくありません。以前の記事「高血糖や糖尿病はせん妄のリスクを高くする」で書いたように、高血糖や糖尿病はせん妄のリスクを高めると思います。
それ以外にも様々な要因はせん妄になる可能性を高めます。もちろんいくつかの薬剤はすでにそのリスクを指摘されています。今回はあまりリスク因子として認識されていない、PPI(プロトンポンプ阻害薬)についてです。対象は平均年齢79.5歳の788人の入院した高齢者です。(図は原文より)
上の図は全体的な認知能力、日常生活動作スケールなどや、膀胱カテーテルの有無によるせん妄なく入院できている割合を示しています。当然、認知機能や日常動作が低下しているほどせん妄は来たしやすく、カテーテルが入っている方がせん妄を来たしやすいです。
上の図は白血球数、炎症を示すCRP、総タンパク質、アルブミンの高低によるせん妄なしで入院できている割合を示しています。これも当然、白血球が多くCRPが高く、総タンパク質やアルブミンが低いほどせん妄を来たしやすくなっています。
また、入院中の患者には様々な薬が使用されていました。
そして様々な変数に対する解析では、入院中のせん妄の発症に関連する5つの要因がわかりました。
・病棟間の移動(オッズ比2.78)
・認知症(オッズ比2.29)
・せん妄の既往(オッズ比2.23)
・転倒の既往(オッズ比1.76)
・PPI使用(オッズ比1.67)
つまり、PPIの使用は高齢者の入院中のせん妄を起こす可能性を高める薬剤だということです。かなりの割合の高齢者がPPIを非常に長期にわたり投与され続けています。
以前の記事「糖尿病の胃の血流と消化管潰瘍とPPI(プロトンポンプ阻害薬)」などで書いたように、PPIにはリスクがあります。しかしほとんどそのリスクは説明されず、それにも関わらずダラダラと長期投与がされています。
不必要な薬はどんどん減らすべきです。
「Delirium in the geriatric unit: proton-pump inhibitors and other risk factors」
「老人病棟におけるせん妄:プロトンポンプ阻害薬およびその他の危険因子」(原文はここ)
清水先生、いつもありがとうございます。
せん妄とは違うかもしれませんが、夢と現実を混同した事があります。
心筋梗塞で、嘔吐、下痢の繰り返しで、緊急搬送されました。この時の血糖値 300(mg/dl)、HbA1c 10.6%です。病院で、「担当は女性の先生なんだ」と分かるくらい意識はあったのですが、気がついたのは病室でした。たまたまカテーテル治療中に見た夢が心筋梗塞の治療をされている夢だったのです。この時点では現実と思っていました。
その夢の内容は、治療中なのに先生方が、どうでもいいよな日常会話をのんびりしながら、遠隔操作みたいな事をしてられるので、「そんなのんびりした会話しないで、早くこの胸の痛みや苦しさをなんとかしてくださいよ」とイライラしてた夢です。
そして2回目のカテーテル治療の時に、「前回の時もこの治療室でしたか?部屋の様子が全然違いますね?」「いや、同じ治療室ですよ」と言われて初めて夢だったのかと気づきました。
これで1回目の治療で退院していたら、「カテーテル治療なんて日常会話をしながらできる簡単な治療だよ」などと、担当なさった先生方や病院の名誉にかかわる事を口走っていたかもしれません。
清水先生が高血糖のリスクを再三再四ご指摘なさっていますが、この時の経験や糖尿病人でもありますので、血糖値は140(mg/dl)以上にならないような糖質制限食をしています。もちろん、美味しい物もたくさん食べています。
太田さん、コメントありがとうございます。
その場にいないのでわかりませんが、恐らく夢ではなかったと思います。
薬で鎮静されていたのではないでしょうか?
清水先生、ありがとうございます。
鎮静というのが良く分かりませんが、ただ、その場面の絵はよく覚えています。
昔のSF映画に出てくるような実験室で、透明のアクリル板の向こうで、男女の人達が遠隔操作をしながらの日常会話でした。
今は不思議な体験だったなと思っています。
現在、おかげさまで、糖質制限で元気に生活が出来ていますし、やはり素直に医学の力にも感謝しています。