前回の記事「その1」で書いたように、ビタミンDの不足は認知症のリスクを高めてしまうようです。
では、毎日ビタミンDをたくさん摂ることは非常に良い結果をもたらすでしょうか?
今回の研究では、 50〜70歳の過体重や肥満の女性の3つのグループを無作為化対照試験で評価しました 。一つはビタミンDを毎日1年間、1日の推奨量である600IUを飲み、もう一つのグループは2000IU、もう一つのグループはさらに大量の4000IUを飲みました。
その結果、血中のビタミンD(25OHD)は600IUグループで 26.7→30.2(ng/mL)、2000IUのグループで28.2→36.0、4000IUのグループで27.4→40.8となっており、やはり1日のビタミンDの量が多いほど増加量も多くなりました。(図は原文より、表は原文より改変)
600IU | 2000IU | 4000IU | |
記憶/学習機能 | |||
ペアドアソシエイツラーニング(PAL) | |||
合計エラーが少ない | 27.7 | 12.7 | 27.1 |
合計試行回数 | 15.0 | 19.1 | 14.9 |
最初の施行で完了したステージ | 5.0 | 5.8 | 4.9 |
実行機能 | |||
イントラエクストラディメンジョナルセットシフト(IED) | |||
合計エラーが少ない | 15.3 | 12.0 | 22.3 |
合計試行回数 | 71.2 | 72.3 | 88.3 |
上の表は、認知機能のテストの一部です。認知機能のテストで、600IUと比較して2000IUでは学習や記憶のテストで非常に良好な結果となりました。しかし、4000IUでは600IUとは違いはありませんでした。そして、実行機能のテストでは4000IUで、600IUと比較して、すべての段階を完了するためにより多くの試験回数が必要でした。つまり、4000IUのグループが最も認知機能の成績が悪いということになります。
さらに、上の図は反応時間を表しています。反応時間が増加するということは、脳の働きが鈍くなっているとも考えられます。反応時間は600IUと比較して、単純なテスト(Simple RTI)では遅くなる傾向を示し、複雑なテスト(5-choice RTI)では2000IUと4000IUで有意に遅くなりました。
ビタミンDの600IUと比較して、2000IUでは記憶や学習機能は大きく改善するものの、反応時間は遅くなる可能性があります。4000IUは記憶や学習機能において改善を認めず、実行機能は低下し、反応時間は長くなってしまいます。
つまり、高齢者にとって4000IUもの大量のビタミンDの服用は、有害である可能性があるのです。若い人であれば、もしかしたら問題にならないかもしれませんが、有害かどうかは不明です。
サプリなどでビタミンDを摂取するとしても、もしかしたら600IU程度にした方が良いのかもしれません。そして、日光を浴びて体内でできたビタミンDと、工業的に生産されたビタミンDには違いがあるのかもしれません。
できる限り日光でビタミンDを作った方が安全であると考えます。
そして、認知機能以外で、今回の結果のような反応速度が遅くなることによる有害性はどのようなものがあるのでしょうか?それは次の記事で。
「Three doses of vitamin D and cognitive outcomes in older women: a double-blind randomized controlled trial」
「高齢女性におけるビタミンDの3種類の量と認知転帰:二重盲検無作為化対照試験」(原文はここ)