血糖値スパイクは認知症のリスクを増加させる

血糖値スパイクの有無を知りたい場合、フリースタイルリブレのように持続的なグルコース値を測定できるのは理想ですが、それができない場合、血糖値スパイクを起こしていることを推測することが可能です。1.5-AGというものの測定です。

1.5-AGは様々な食品に存在するグルコースに似た単糖類の1種です。正常の場合、尿細管で99.9%再吸収され、血中濃度は一定に保たれているのですが、血糖値が180mg/dL以上のような尿糖が出現するような高血糖状態では、尿細管での再吸収はグルコースと競合し、再吸収が阻害されるため、尿中に排泄されて血中1,5-AG濃度は減少します。

HbA1cは2~3カ月の血糖値の平均でしかありません。血糖値スパイクが起きているかどうかは全くわかりません。同じHbA1cが6であっても、食後高血糖があまり起きていない場合もあれば、大きくスパイクを何度も起こしている場合もあります。1,5-AGは数日間の血糖値の変動を反映し、食後血糖値の変動が大きいかどうかも把握できます。基準値は14μg/mL以上です。

(上の表はここより)1.5-AGとおおよその食後血糖値は上のようです。

今回の研究では、この1.5-AGを10以上の場合と、10未満の場合での認知機能の評価をしました。約20年間追跡しています。(図は原文より、図は原文より改変)

上の図は左が糖尿病のない群、真ん中がHbA1cが7未満の群、右がHbA1c7以上の群です。縦軸は認知機能の3つのテストを合わせて評価するために、Zスコアというものを用いて比較しています。○は1.5-AG10以上で、青い■は1.5-AG10未満です。

そうすると、糖尿病がない群では1.5-AGが高くても低くても、認知機能に違いはありませんでした。しかし、糖尿病ではHbA1cが7未満の群で1.5-AGが10未満であると、10以上の群と比較してZスコアは低下し、HbA1cが7以上の群で1.5-AGが10未満であると、10以上の群と比較してさらに大きくZスコアは低下し ていました。

  モデル1 HR(95%CI)モデル2 HR(95%CI)
糖尿病なし   
 1,5-AG≥10μg/ mL11
 1,5-AG <10μg/ mL1.01(0.75、1.35)1.05(0.78、1.40)
糖尿病   
 HbA1c<7%1,5-AG≥10μg/ mL1.34(1.02、1.75)1.27(0.97、1.67)
 1,5-AG <10μg/ mL1.71(1.08、2.70)1.69(1.07、2.67)
 HbA1c≧7%1,5-AG≥10μg/ mL1.41(0.89、2.23)1.31(0.83、2.07)
 1,5-AG <10μg/ mL2.49(2.06、3.02)2.44(2.01、2.97)

上の図は糖尿病が無く、1.5-AGが10以上の群を1としたときの認知症のリスクを表しています。HbA1cが7以上とコントロールが悪く、さらに1.5-AGが10未満であると、認知症のリスクは2.4倍以上にもなります。

以前の記事「認知症になる前の14年間を追ってみると・・・」で書いたように、認知症を発症するかなり以前から血糖値は上昇しています。

更に血糖値スパイクは非常に危険であり、血管を傷つけ、酸化ストレスを増加させます。そして今回の研究の結果のように血糖値スパイクは認知症のリスクを増加させてしまいます。

血糖値スパイクを抑える食事は糖質制限しかありません。

「Glucose Peaks and the Risk of Dementia and 20-Year Cognitive Decline」

「血糖値のピークと認知症および20年間の認知低下のリスク」(原文はここ

2 thoughts on “血糖値スパイクは認知症のリスクを増加させる

  1. 初めて書き込みする らこ と申します。2009年9月から江部本3冊購入し、即スーパー糖質制限食実行して寛解して10年、合併症は再発しておりません。
    清水先生著書「糖質過剰」症候群熟読しました。1回目は6月初には3日がかりで読んだのですが、江部本に比べて、理解度が低かったので、期間開けて本日1日で読みました。本の内容について、まず教えて下さい。

    ◎第3の糖尿病=アルツハイマー型認知症
    ◎第4の糖尿病=緑内障

    とカバーにも印刷されていますが、googleで検索すると

    ◎第3の糖尿病=アルツハイマー型認知症 3件
    ◎第4の糖尿病=脳梗塞が1件

    でした。緑内障は出て来ません。緑内障については、私らこ が読めない論文とか学術雑誌に掲載されているのでしょうか?御多忙と存じますが、ご教示お願い致します。

    私らこ は「自分が発症した糖尿病合併症バンバン」だけに強く興味を惹かれます。アルツハイマー型認知症は興味大、緑内障は興味薄です。
    私らこ は「中期アルツハイマー型認知症」に到達して、「小銭が勘定できない」状態でした。スーパー糖質制限食実行して1週間程度で寛解、以後10年再発無しです。10日くらい前の江部ブログで盛り上がっておりました。アミロイドβが、中期アルツハイマー型認知症になるほどたまっていたようですが、ケトン体でモノの1週間で寛解です。

    これからは、清水先生のブログも拝見させて頂きます。今後ともよろしくお願いいたします。

    1. らこさん、コメントありがとうございます。

      また、拙著をお読みいただきありがとうございました。
      3型糖尿病(第3の糖尿病)=アルツハイマー、というのは多くの人が言っており、ある程度同じ認識の人がいると思いますが、
      4型糖尿病(第4の糖尿病)=緑内障、というのは一部の人だけが言っていることです。別に第4の糖尿病=パーキンソン病でも、がんでも構いません。
      要するに、糖尿病と同じ原因でそれらの病気が起きていると考えられるのです。
      そうすると「糖尿」というのはふさわしくないし、5型、6型・・・100型となってしまうときりがないので、
      私は「糖質過剰症候群」という名前を提唱しました。
      緑内障については、
      緑内障は糖質制限をすべきである その1」「その2
      をお読みください。

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