緑内障は糖質制限をすべきである その1

緑内障は世界中で失明の大きな原因のひとつです。(これ以降は緑内障というのは原発性開放隅角緑内障のことです。)40歳以上の日本人における緑内障有病率は5~6%といわれております。加齢による進行と眼圧の上昇は大きなリスクです。進行すると徐々に視野が欠けていきます。治療は眼科で目薬が処方され、眼圧をコントロールします。眼圧のコントロールが悪かったり、コントロールに関わらず進行してしまう場合には内服薬、レーザー治療そして外科的手術になります。

私が学生の頃、医学部での授業では、緑内障は眼圧の上昇により視神経がダメージを受けて、緑内障が発症、進行すると習った記憶があります。しかし、いつの頃からか、「正常眼圧緑内障」というのが出てきました。眼圧が正常値であるにもかかわらず緑内障になってしまうのです。緑内障の内3分の2はこの正常眼圧緑内障といわれています。眼圧が正常なのでなかなか発見されず、かなり進行して視野欠損が大きくなって気づく人も多いのが現状でしょう。

眼科の中では恐らく緑内障は眼圧によるもので、正常眼圧緑内障のメカニズムは不明だと考えられていると思います。ガイドラインでは緑内障の定義を「緑内障は, 視神経と視野に特徴的変化を有し, 通常, 眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」としています。つまり一番の要因は眼圧であり、眼の病気であると考えられています。

しかし、この正常眼圧緑内障というものが出てきたときから、緑内障という病気に疑問を持ち始めました。正常眼圧緑内障という新しい病気が生まれた?とは思いませんでした。私は、緑内障も正常眼圧緑内障も同じものであると考え、そして、眼圧が上がる人もいれば上がらない人もいる、つまり眼圧の上昇は一つの症状であり、視野が欠損するのは別の要因で起こるのでは、と思ったのです。眼圧の上昇が原因ではないということです。どこかコレステロールの話に似ています。調べ始めるといろいろなことがわかりました。

また、専門でもない分野に首を突っ込んでしまうのですが、しかし、根本は同じです。私は緑内障を糖質過剰摂取によって起こる高血糖やインスリン抵抗性が原因だと考えています。だから、緑内障の治療を眼科医だけに任せていてはダメなのではないかと思います。眼圧のコントロールは症状の進行を遅くするのには有効な治療であるのかもしれませんが、それだけでは進行を続ける人もいるのは事実です。

最近、緑内障は「4型糖尿病」である、という研究者もいます。(ちなみに「3型糖尿病」はアルツハイマー病です。)糖尿病の人は48%緑内障のリスクが増加し、糖尿病になると毎年5%緑内障になるリスクが上がると言われています。

また、緑内障は眼の病気ではなく、脳の神経変性疾患であるという考えも広がっています。視神経や網膜は脳の一部です。アルツハイマー病との関連も指摘されています。

さらに酸化ストレス、血管の内皮細胞障害とそれに伴う一酸化窒素(NO)低下や虚血・血小板凝集、ミトコンドリア機能障害など、糖質過剰摂取により起こる様々な現象、症状が緑内障にも共通して起こっています。このことが、私が緑内障の原因は糖質過剰摂取によって起こる高血糖やインスリン抵抗性であると考える理由です。

だから、緑内障になっている人、緑内障を予防したい人は是非、糖質制限を選択すべきだと思います。もちろん眼圧を下げることに意味がないとは思ってはいません。ただ、眼圧だけに目が行っていてはダメだと思います。

次回の記事ではもう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

「Diabetes, fasting glucose, and the risk of glaucoma: a meta-analysis」

「糖尿病、空腹時血糖、緑内障のリスク:メタアナリシス」(原文はここ

4 thoughts on “緑内障は糖質制限をすべきである その1

  1. 先生こんにちは。
    昨日知ったのですが、「糖質制限+有酸素運動で緑内障のリスクが高まる」と書かれている本があるそうです。

    https://tagashuu.jp/blog-entry-1648.html

    糖質制限中に有酸素運動をすると体内のブドウ糖がかなり減るので視神経へのブドウ糖の供給が減るから、ということらしいのですが、私はフリースタイルリブレのセンサーを常に装着してジョギングなどをしていますが低血糖になったことはありません。

    糖新生能力が低下していて正しく糖質制限しても低血糖になる方ならともかく、そうでなければ何の問題もないのでは?と思うのですがいかがでしょうか。

    1. よっしーさん、コメントありがとうございます。

      この本を読んでいませんので、何とも言えませんが、全く根拠のないことを思い込みでいう人はいっぱいいます。
      私は普段もちろん糖質制限ですが、朝起きて何も食べずに水分補給だけで、30㎞のランニングも問題なくできます。
      当然低血糖症状は起きません。フルマラソンのレースだとペースが速いので、全く糖質を摂らないと終盤に低血糖になることもあります。
      糖質制限+有酸素運動の場合、ほとんど脂肪をエネルギーにできますので、ブドウ糖が減るとは思えませんし、
      単にブドウ糖が必要であればグリコーゲンの分解、糖新生を行うだけの話です。

      また、視神経は脳の一部です。そう考えるとケトン体を十分に産生していれば、問題ありませんし、
      神経細胞に重要なBDNF(脳由来神経栄養因子)は糖質摂取増加で減少しますし、運動で増加すると考えられています。
      拙著「糖質過剰症候群」の中でも、根拠を示しつつ、緑内障は糖質過剰症候群であることを書いています。

      脳のエネルギーはブドウ糖だけ、という思い込みと同じ次元だと思います。

  2. 清水先生のコメントを拝読させて頂きました。
    MD値9.0前後の視神経障碍者です
    隅角除去施術を拒否して当面は隅角切開治療をし、医療の進歩を期待している状況です
    現状生活には支障なく仕事も運転もしています
    2回目の多治見スタディーの衝撃はでした。
    今まで眼圧を下げる施術は多少の効果があるとは思いますが、代償が日常生活の破壊を招きます。
    自分が緑内障の手術をした事を知った知人から、おじさん、親が除去施術をして生活困難者になりに死亡した事をしりました
    勿論、術後は悲惨な現実だった事を知り、先生と意見交換して無理やり切開術をした事に安堵しました
    関東地域は除去施術で関西地域は切開施術がメイン治療なのは何故ですか?疑問です
    保険医療行為で適法なはのでしょうが?患者サイドの治療ではありません
    治療とは完治を目的にした治療か、進行を制御できる治療であるべきです
    自分の視神経なので自分で再生する事の希望を持っています
    なぜ緑内障は眼科なのか非常に疑問です
    又眼科医が上記理由にて施術を進める事も理解に苦しみます
    清水先生は、緑内障と真摯に向きあっている事が理解できました
    緑内障は各部位に栄養素を運ぶ毛細血管の老化、血液、とタンパク質の疾患と思って自分なりにで治療に励んでいます
    今は悪玉活性酸素除去にも対処していいます

    1. 黒崎さん、コメントありがとうございます。

      多治見スタディーで衝撃を受けたのは、緑内障の9割以上が正常眼圧だったという内容でしょうか?
      仰っている除去施術というのは線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)のことでしょうかね?
      地域で手術法の差があるのかどうかはわかりません。日常生活をどの程度破壊するのかもわかりません。
      しかし、いずれにしても手術なので医師の技術の問題も大きいと思います。

      視神経も脳の神経なので、私はアルツハイマー病と同様に糖質制限が重要だと考えています。

      昔関節リウマチが整形外科の病気であったのが、現在は内科の病気に変わったように、
      緑内障もいずれ担当科が変わるかもしれません。

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