緑内障は糖質制限をすべきである その2 4型糖尿病?眼のアルツハイマー病?

以前の記事「緑内障は糖質制限をすべきである その1」で、緑内障は眼圧のコントロールだけでなく糖質制限をすべきであることを書きました。今回はちょっと難しい話ですが、詳しく見ていきます。

緑内障の視野障害の進行速度は正常眼圧緑内障で1年で3.7%、開放隅角緑内障で1年で2.5%と言われています。2つの緑内障で両群間に統計学的な差は認められていませんが、正常眼圧の方が進行が早い傾向があるようにも見えます。現在の唯一の治療法は眼圧を下げることで、進行率は有意に低下すると言われていますが、それでも30%以上において視野欠損が進行するそうです。

緑内障は脳のインスリンが深くかかわっているようです。緑内障は「4型糖尿病」と考えられます。

現在のところ、脳のインスリン値は血液中よりもかなり高いと考えられています。 脳(中枢神経系)のインスリン値は、血中の10〜100倍の範囲であると言われています。ということは、脳のインスリンはすい臓から分泌されたものだけではないと考えられます。インスリン産生は神経膠細胞よりも神経細胞のほうが高く、特に嗅球、大脳皮質、扁桃体、海馬、視床下部および網膜においてより高いレベルのインスリンが確認されています。

脳とそのほかの体の部分は、血液脳関門という壁で分けられており、体の変化がすぐにそのまま中枢神経に及ばないようにされています。血中のインスリンは血液脳関門を超えないという研究がいくつもあるようですが、血中のインスリン値の上昇に相関して中枢神経系のインスリン値も上昇することが確認されています。実際には血中のインスリンは血液脳関門を超えるようですが、脳の中でのインスリンの産生が多く起きているようです。

そのことは末梢でのインスリン抵抗性がそのまま中枢神経系で起きるということではなく、中枢神経系では独立してインスリン抵抗性が起きる可能性があるということになります。末梢も脳も両方にインスリン抵抗性が起こる場合もあれば、どちらかだけの場合もあるのです。つまり、血中のインスリン状態は正常範囲であっても、脳だけがインスリン抵抗性を示す場合があり、それが3型糖尿病のアルツハイマー病や4型糖尿病の緑内障なのです。

脳のインスリン値が高いということは非常に重要な役割があり、神経細胞の構造や機能、生存に大きく関わっている可能性が非常に高いと思われます。逆に言えばインスリンの分泌低下や機能低下は神経細胞に大きなダメージを与える可能性が高いのです。つまり、脳のインスリン抵抗性は神経変性を起こす可能性が高く、それがアルツハイマー病や緑内障の特徴とも考えられます。もしかしたら、緑内障は眼に表れるアルツハイマー病の症状なのかもしれません。

開放隅角緑内障でも正常眼圧緑内障でも、網膜の最も内側にある網膜神経節細胞(RGC)、そしてRGCから脳につながっている視神経軸索の変性や脱落が起きています。

網膜神経節細胞(RGC)の生存にはインスリンが非常に重要であると考えられており、インスリン抵抗性によりミトコンドリアの機能不全が起きると、RGCは死んでしまうようです。

また、アルツハイマー病において、緑内障に特徴的なRGCの減少や視神経の変性、視神経乳頭陥凹および視野欠損の進行が起きることが多数報告されています。さらにアルツハイマー病の人の緑内障の発症率は25.9%で、アルツハイマー病のない人の発症率5.2%と比較すると、格段に発症率が高いことがわかります。このことは、緑内障とアルツハイマー病の発症や進行のメカニズムが共通している可能性を強く示唆しています。

さらに興味深いことに、緑内障だけでなく糖尿病網膜症患者の硝子体液中に、アミロイドβの減少とタウの増加というアルツハイマー病の脊髄液中の変化と類似の変化が起きていることが確認されました。そのことにより、緑内障や糖尿病網膜症患者の網膜中にアミロイドβが蓄積している可能性が示唆されています。(表はこの論文より改変)

硝子体中の濃度コントロール糖尿病網膜症緑内障
アミロイドβ-42 (pg/ml)33.91.82.8
タウ (pg/ml)3.3153.7113.6

このことを考えると、もしかすると緑内障も糖尿病網膜症も病理学的には同じものであり、症状としての表れ方の違いだけなのかもしれません。これは、緑内障と糖尿病とアルツハイマー病の関連を示唆するものだと言えます。

神経細胞は非常に高いエネルギー代謝を持ち、ミトコンドリアの活性も非常に高いと考えられます。そうするとミトコンドリア機能不全により活性酸素種(ROS)が発生しやすくなります。このミトコンドリア機能不全もRGCを傷害し、緑内障を起こす可能性が高くなります。インスリン抵抗性はミトコンドリア機能不全を起こすと考えられています。またインスリン抵抗性は緑内障の危険因子の眼圧も上昇させると考えられています。

さらに、インスリンは神経細胞の生存に重要なRGCを含んだ網膜の3つの層で、グルコース輸送体GLUT4の発現を誘導します。インスリンの欠乏またはインスリン抵抗性は、RGCの傷害や死を引き起こすのです。

そして、脳の神経伝達物質の一つであるグルタミン酸の過剰な活性は神経細胞に死をもたらします。このグルタミン酸も緑内障に関与すると考えられています。インスリンはグルタミン酸の毒性から神経を保護する役割があると考えられています。

緑内障もアルツハイマー病と同じように多因子性の疾患であると考えられています。眼圧だけコントロールしても進行するのはそのためです。アルツハイマー病や他の疾患と同じように炎症も重要な因子の一つで、インスリンは炎症を抑える作用が確認されています。また、インスリンは微小循環血流を増加させ、組織の虚血を防ぐという作用もあります。

このように十分なインスリンが分泌されないか、インスリン抵抗性で十分にインスリン作用が働かなくなった中枢神経では、アルツハイマー病や緑内障が起こる可能性が高まります。逆に考えればインスリンの適切な量が保たれ、インスリンがちゃんと働くことがそれらの疾患の予防にもなります。

最初の方で書いたように、中枢神経系のインスリンは全身のインスリンの増加に相関していると考えられています。髄液の糖はすべて血糖に由来しており、その濃度は血糖値に大きく依存し、血糖値の60~70%程度の値を示します。ですから、全身で高血糖となれば当然中枢神経系でも糖濃度は高くなり、その分インスリンの分泌も多くなると考えられます。脳のインスリン抵抗性も恐らく、中枢神経系の糖が高濃度に頻繁になり、最初はたくさん分泌されていますが、そのうち効き目が悪くなりインスリン抵抗性が高くなると思われます。

脳のインスリン抵抗性あるいはインスリン分泌低下、全身のインスリン抵抗性あるいはインスリン分泌低下が同じようにパラレルに起きるとは限りません。それぞれの程度により、神経変性疾患であるアルツハイマー病や緑内障が起きるか、全身の糖尿病が起きるか、どれかが起きるか、どれも全部起きるか様々な組み合わせが起きると考えられるのです。

もしかしたら緑内障は将来のアルツハイマー病を予測するものであるかもしれませんし、眼圧の上昇は脳のインスリン抵抗性のアラームなのかもしれません。そうであれば眼科に行って目薬をもらって安心しているのではなく、糖質制限が必要です。

いずれにしても、全ての根本原因は糖質過剰摂取による高血糖です。それによりインスリン分泌がなされるわけですから。

糖質制限は食後高血糖および過剰なインスリン分泌を抑制するので、脳のインスリン抵抗性が起きるリスクは非常に低くなると考えられます。

糖尿病、アルツハイマー病、そして緑内障を予防するには糖質制限です。

「Diabetes Type 4: A Paradigm Shift in the Understanding of Glaucoma, the Brain Specific Diabetes and the Candidature of Insulin as a Therapeutic Agent 」

「糖尿病のタイプ4:緑内障、脳特異的糖尿病および治療薬としてのインスリン候補の理解におけるパラダイムシフト」(原文はここ