血液のドロドロについて、これまで「その1」「その2」「その3」で書いてきました。今回は血糖値との関係です。
一般的に糖尿病の人では血液粘度が高いことがわかっています。その原因のすべてはまだわかっていないでしょうが、1つはグリコカリックスの低下でしょう。血管の内面を覆っているグリコカリックスが血液の流動性に大きな役割があります。血管の内腔のなめらかさを保っているのはグリコカリックスであり、高血糖になればそのグリコカリックスは障害されてしまいます。
それ以外にも高血糖は様々な変化をもたらすと考えられます。糖尿病では赤血球が凝集しやすく、赤血球の変形能も低下すると言われています。
今回の研究では糖尿病ではない、正常な血糖値、糖尿病の予備軍(前糖尿病)の人の血液の粘度を分析しています。
血糖値が90mg/dL未満のグループA、(n = 96)、血糖値90〜99mg/dLのグループB、血糖値100〜125mg/dLのグループCに分けました。(図は原文より)
上の図は、様々なパラメータのグループごとの数値です。BMIと腹囲は、他の2つのグループと比較して前糖尿病のグループCで有意に増加しました。ヘマトクリット値および血液粘度は、血糖値が90mg/dL未満のグループAと比較して、糖尿病前症のグループCおよび血糖値が90〜99mg/dLのグループBで有意に高かくなりました。
非糖尿病においてでさえ血液と血糖値には関連があるようです。正常と見なされる血糖値の範囲内でさえ、血糖値が高い(90〜99mg/dL)人では、前糖尿病の人で認められたものと同等の血液粘度の増加があることを示唆しています。
しかし、恐らく糖質制限をしていて、日常的な血糖値スパイクを回避できていれば、グリコカリックスの障害、血液粘度の増加に対する影響は非常に小さいのではないかと思います。
さらに他の研究では経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の1時間値と血液粘度との関連もして指摘しています。(図は原文より)
上の図は横軸が左から正常耐糖能でOGTT1時間値が155mg/dL未満、正常耐糖能であるがOGTT1時間値が155以上、耐糖能障害、空腹時血糖障害、耐糖能障害と空腹時血糖障害の合計です。縦軸は全血粘度です。そうすると1時間値が155未満の人と比較すると、他のすべてのグループでは粘度が増加しています。しかも正常耐糖能とされていても、1時間値が155を超える人では他の耐糖能障害や空腹時血糖障害と同程度の粘度の増加を認めているのです。
分析すると、ブドウ糖負荷後の血糖値の1時間値は、他の測定値、つまりHbA1c、空腹時血糖値、負荷後2時間値と比較して、全血粘度とより強く相関していました。
血液の粘度との関連が強いものから順に、血糖値の1時間値、、白血球数、拡張期血圧、中性脂肪、血糖値の2時間値、フィブリノーゲン、年齢、HDLコレステロール、収縮期血圧、腹囲、HbA1cであり、これらの要因は全血粘度の変動の21.4%を説明しました。
つまり、OGTT1時間値が155以上となるのはすでに異常な耐糖能だと考えるべきです。すでに、体や血管の変化が起きているのです。
血糖値スパイクは血液に大きな影響を与えます。血糖値スパイクを避けるには糖質制限をすることが重要でしょう。
そうすると、現在の新型コロナウイルスの感染者で軽症以上の症状を呈している人に宿泊施設ではお弁当が配られているでしょう。そのお弁当を食べれば確実に血糖値スパイクを起こす人が多くいるでしょう。病院での入院でも同様で、病院食は血糖値スパイク食です。血糖値が上がれば、血液の粘度は増加し、インスリンは上昇し、凝固系の活性化、線溶系の阻害が起きやすくなり、血栓ができやすくなることにより、より重症化しやすくなるでしょう。(「高血糖は凝固を促進し、高インスリン血症は線溶を阻害する」「新型コロナウイルスでは高血糖があると数倍死亡率が高い その4 糖尿病の診断よりも高血糖の方が危険」など参照)
医原性、食事性に病気の発症、増悪も大いにありうることを認識すべきでしょう。
糖質過剰症候群
「Blood viscosity in subjects with normoglycemia and prediabetes」
「正常血糖および前糖尿病の人の血液粘度」(原文はここ)
「Elevated 1-h post-challenge plasma glucose levels in subjects with normal glucose tolerance or impaired glucose tolerance are associated with whole blood viscosity」
「正常な耐糖能または耐糖能障害のある人におけるOGTT後1時間の血糖値の上昇は、全血の粘度と関連している」(原文はここ)
清水先生、こんばんは。
グリコカリックスや赤血球が糖化することで、血管内の摩擦が大きくなったり、赤血球の変形能が悪くなるのでしょうか?そこに高インスリンの影響も加わるということですね。
やはり糖質制限ですね。赤血球膜の脂肪酸組成も食べ物で変わるということを聞いたことがあります。オメガ3も関係している可能性もあるのでしょうか?
じょんさん、コメントありがとうございます。
>グリコカリックスや赤血球が糖化することで、血管内の摩擦が大きくなったり、赤血球の変形能が悪くなるのでしょうか?
その通りだと思います。
>赤血球膜の脂肪酸組成も食べ物で変わるということを聞いたことがあります。オメガ3も関係している可能性もあるのでしょうか?
細胞膜は脂質でできているので、食事の影響はあると思います。当然オメガ3も関係していると思います。
ただ、これまでの論文は全て糖質過剰摂取のものなので、糖質制限でどのような影響があるのかは不明とも言えます。
>血液の粘度との関連が強いものから順に、血糖値の1時間値、、白血球数、拡張期血圧、中性脂肪、血糖値の2時間値、フィブリノーゲン、年齢、HDLコレステロール、収縮期血圧、腹囲、HbA1c←ここにLDL-コレステロールが入ってないところに注目ですね!
きょうこさん、コメントありがとうございます。
LDLが全く関係していないかどうかはわかりませんが、影響は小さいのではないかと思います。