血液がドロドロってなんだろう? その2 脂質と血液の流動性

血液がドロドロというのはイメージ的にはわかりやすいですが、あまり医学的な表現としては適していません。

何をもってドロドロというのかはわかりませんが、血液の流動性の中で、血液の粘度は非常に重要だと思います。ただ、血液粘度は、ヘマトクリット値、血漿の粘度、ずり速度と呼ばれるもの、赤血球の集合、赤血球の変形能などによって規定されます。また、血管の種類によっても血流の速度は違いますから、様々な病態において様々な要因が異なった比率で関与しているので、粘度だけですべてを語ることは困難です。また、血液の流動性や粘度の測定は、採血した血液を「体外」で測定します。この測定が体内で起きている現象をそのまま示しているとは思えません。

何か一つの食材を積極的に摂ったり、何かの機器で「血液サラサラ」になるというのは、非常にナンセンスですし、ビジネス的にしか思えません。

先ほど書いたように様々な因子が粘度に影響を与えるために、1つだけを重要視することは意味がないでしょう。そのことを分かったうえで、前回の「その1」では、見た目にドロドロした乳びに関して書きました。今回は前回に引き続き脂質にスポットを当て、血液の粘度との関連を考えたいと思います。

見た目には粘度が高い液体はいかにもドロドロという感じです。

見た目のドロドロの乳びは明らかに中性脂肪高値が原因です。コレステロールはほとんど関係しないでしょう。しかし、血液の流動性からみるとコレステロールは影響がありそうです。

脂質異常症の人は一般的に総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低くなります。そして、脂質異常症の人は一般的に血液の流動性が低下します。

今回の研究では142人の脂質異常症の人と253人の正常脂質の人を調べました。流動性はMCFAN(MicroChannel array Flow ANalyzer)という血液の流動性を測定する機器によって測定しています。(図は原文より)

上の図は縦軸が全血の装置を通過した時間で、横軸はAがLDLコレステロール、Bが中性脂肪、CがHDLコレステロール、DがLDLコレステロール/HDLコレステロール比です。全血の通過時間はLDLコレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール/HDLコレステロール比と正の相関があり、HDLコレステロールと負の相関がありました。

血液の粘度もそれぞれのパラメータと同様の相関があります。(ここ参照)

上の図は脂質異常症および正常脂質の人のLDLコレステロール/HDLコレステロール比によるそれぞれのパラメータの違いです。

全血の通過時間は、LDLコレステロール/HDLコレステロール比が2.0を超える脂質異常症および正常脂質の人の方が1.5未満の人よりも有意に長くなりました。

ちなみに私のLDLコレステロール/HDLコレステロール比は2.03です。しかし、上の表ではLDLコレステロール/HDLコレステロール比が増加するにつれ、脂質異常症でも正常脂質でも、中性脂肪値が上昇し、HDLコレステロールが低下しています。さらにBMIも増加しています。しかし、糖質制限でLDLコレステロールが上昇する人の多くは同時にHDLコレステロールが上昇し、中性脂肪が大きく低下します。BMIも減少します。つまり、糖質過剰摂取状態と糖質制限では単純に比較できないことがわかります。

実際には私のように糖質制限をして高LDLコレステロール、高HDLコレステロール、低中性脂肪の場合の流動性はどうなるかというデータはありません。

さて、LDLコレステロールの増加が血液の流動性と関連すると考えるのであれば、家族性高コレステロール血症ではかなり血液の流動性が低下するはずです。LDLコレステロール値が大きく異なり中性脂肪値とHDLコレステロールは差がない、家族性高コレステロール血症(FH)の6〜18歳の子供と対照群との比較では、流動性に関するパラメーターは違いを認めませんでした。(ここ参照)これは、FHの成人に見られる流動性の異常が脂質異常の直接的な結果ではないことを示唆しています。

また、2型糖尿病の人を対象とした研究では、血液の粘度の増加は中性脂肪、特に朝食後の中性脂肪の増加と関連していました。HDLコレステロールとは負の相関であり、LDLコレステロールとは関連していませんでした。(ここ参照)

血液の粘度や流動性と脂質の関係はありそうでなさそうで、といった感じかもしれません。それよりもHDLコレステロールを低下させ、中性脂肪を増加させる状態、つまり糖質過剰摂取の方が問題かもしれません。

それについては次回以降で。

糖質過剰症候群

「Blood rheology and the low-density lipoprotein cholesterol/high-density lipoprotein cholesterol ratio in dyslipidaemic and normolipidaemic subjects」

「脂質異常症および正常脂質血症の被験者における血液レオロジーおよびLDLコレステロール/HDLコレステロール比」(原文はここ

コメント

  1. じょん より:

    清水先生、こんばんは。

    図1を見ると、各項目と通過時間の相関に有意差はありますが、相関係数rはそれほど大きくはないですし、rの2乗、いわゆる関与率は小さいです。各項目で通過時間を説明するのは難しいということになると思います。
    粘度の方は、LDL/HDLのr が 0.8561、関与率が0.73になるので、粘度の73%を説明できると解釈できると思います。
    複雑で難しいですね。

    • Dr.Shimizu より:

      じょんさん、コメントありがとうございます。

      血液の粘度は様々な因子に影響を受けるので、今回示した粘度の研究のLDL/HDL比の関与は大きすぎですね。
      非常に複雑で難しいです。