糖尿病診療ガイドライン2019の残念な食事療法 その2

前回の記事「糖尿病診療ガイドライン2019の残念な食事療法 その1」では、新しい糖尿病の診療ガイドラインの食事療法について、特に糖質に関する項目を取り上げました。

今回のガイドラインにその他のタンパク質、脂質についての項目があるのですが、根拠となる研究の選択にやはり問題があります。

そもそも私は、糖尿病の原因が糖質過剰摂取にあると思っているので、糖質制限をしている前提で、タンパク質量や脂質量の違いで糖尿病のリスクなどを上げるのか下げるのか?という議論でなくては意味がありません。

しかし、このガイドラインで取り上げられているタンパク質量に関する論文も脂質に関する論文も、糖質過剰摂取状態の人を対象としたものです。タンパク質摂取でもインスリンが分泌されることを考えると、糖質過剰摂取+タンパク質過剰摂取だと糖尿病のリスクが上がる可能性はあるでしょう。

以前の記事「糖質制限は腎機能に有益?有害?」で書いたように、糖質制限をしている場合少なくとも腎臓に有害ではないと考えられます。さらにその記事に書いたように症例報告ではありますが、糖質制限をすれば、タンパク質の割合を30%にしても2型糖尿病の腎機能が大幅に改善しているのです。

さらに脂質に関しては摂取量を規定する積極的な根拠はない、と言っておきながら、動脈硬化予防のために飽和脂肪酸を減らした方が良いと書いています。しかし、その根拠となるのは別の学会が出しているガイドラインです。他の学会のガイドラインは正しいという前提です。

つまり、様々な学会がお互いのガイドラインを正しいという前提でガイドラインを作れば、いつまでたってもガイドラインは変化しないでしょう。

脂質に関する根拠も当然糖質過剰摂取の人を対象とした研究です。

以前の記事「2型糖尿病に対する糖質制限の長期的効果 2年間でも圧倒的! その1」「その2」で書いたような論文を取り上げていかないと、いつまでたっても糖質制限の安全性、有効性のエビデンスはない、という結果になってしまいます。

さらに、タンパク質にしても脂質にしても、取り上げられているほとんどの論文の摂取量の評価は、食事のアンケートという非常に質の低いデータを使っています。

結局、タンパク質は20%まで、脂質も25%までということになってしまい、自動的に糖質(炭水化物)は55%になり、何も変化がありません。

総エネルギー摂取量に関しては、カロリー制限は無くなっていることは評価できますが、逆にエネルギー量はどうすべきかが非常に曖昧な記述です。カロリー制限せずに、通常のエネルギー摂取量で糖質の割合を50~65%にしたら、これまでのガイドラインの糖質量よりも実質増加してしまいます。つまり、さらに糖尿病を悪化させるガイドラインとも考えられます。

あと、「食事療法の実践にあたっては、管理栄養士による指導が有効である」、と書かれていますが、古典栄養学しか学んでいない栄養士による指導がこれまでも糖尿病の患者を苦しめてきたのです。厚労省の示す栄養素の比率を厳格に守り、糖質たっぷりの食事の指導をずっと行ってきているのです。そして、糖質を摂取するとどれほど食後に血糖値が上がるかも把握していない栄養士がほとんどでしょう。脳はブドウ糖しかエネルギーにできないと信じている栄養士がほとんどでしょう。そのような栄養士の指導が本当に有効でしょうか?

逆に糖尿病学会は管理栄養士に責任転嫁しているのかもしれません。いや、患者に責任転嫁しているのかもしれませんね。「医師はちゃんと治療、指導をしている。管理栄養士にも指導させている。それでも糖尿病が良くならないのは患者のせいだ!」なんて思っているかもしれませんね。

今回のガイドラインの改訂で何を変えたかったのでしょうか?カロリー制限の撤廃だけ?厳格な糖質制限を採用しなくても、せめて糖質の割合を30%~40%までくらい試してみることを提案しても良かったのではないでしょうか?

自分の体のことは自分で考え、自分で判断しましょう。

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コメント

  1. 大阪高橋 より:

    こんばんは。いつも有益な記事をありがとうございます。

    日本の糖尿病学会は、糖尿病患者を減らしたくないとしか思えませんね。本来なら糖尿病患者がどんどん増え続けている現状を、自分たちが無能なせいだと恥じなければいけないのに…。

    また日頃、「栄養バランスの良い食事」を取るよう指導している栄養士たちが、なぜ炭水化物だけ極端に多い食事を推奨することに疑問を感じないのか、本当に不思議です。

    これが例えば、成人男性に対して、たんぱく質120g、脂質120g、糖質120gの食事を推奨しているのであれば、文字通り完璧なバランスで、総摂取カロリーも2,040kcalと高くないので、確かに健康に良さそうなイメージもありますが(もし私がいつか糖質制限を止めるとしたらそうすると思います)、なぜ炭水化物だけ極端に多くする必要があるのか、きちんと根拠を説明できない指導はしてはいけないと思います。

    • Dr.Shimizu より:

      大阪高橋さん、コメントありがとうございます。

      商売ですから、お客さんが減っては困るのでしょう。糖質制限だけで糖尿病が良くなってしまっては、
      糖尿病専門医の存在価値がありませんし。

      栄養士は「バランス」というキーワードを意味も分からずに使っているとしか思えません。
      逆に曖昧な定義のバランスという言葉を使って、正しいことを言っているつもりなのでしょう。
      体の構成成分で考えれば、水分が60~70%、タンパク質が15~20%、脂肪が13~20%、糖質はたった1%です。
      これに従って摂取したなら、タンパク質150g、脂質150g、糖質8gといったところでしょうか?

  2. 鈴木 武彦 より:

    いつも誠実かつ説得力ある情報のご提供、有り難く拝読しております。

    医師や管理栄養士の方々がその信念(方向性は不明ですが)に従って患者を指導されるのは御勝手ですが、事が(人生できっと最も大切な)健康に関する情報なので、罪深い(御本人達は無自覚なのかもしれませんが)と思います。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ガイドラインに沿った治療、指導をしている限り、自分で責任を取る必要はありませんので、気楽です。