2019年10月12〜13日に甚大な被害をもたらした、台風19号ですが、ものすごい数の河川が氾濫しました。
それに対して、ある政治家は「まずまず」と言って批判を浴びています。被害に遭われた方にとってはこのような発言は許し難いかもしれませんが、国としては本音でしょう。
日本は山が多く、そのため河川も多く、しかも雨も多い。だからたくさん雨が降れば、川の水は増して、氾濫する可能性はどの川にもあります。
治水事業は非常にお金がかかります。全ての河川が氾濫しないように全ての場所で、もの凄い高さの堤防を作ればいいのかもしれませんが、そんな予算があるわけありません。
昔から、河川は何度も氾濫してきました。それは自然現象です。自然が決めたルールを逸脱しているのは人間です。自然の中で生きている以上、知恵を絞り、命を守る必要があります。昔は川の片岸に護岸を作り、そちら側に家屋などを作って、反対岸は堤防を少し低めに作り、田んぼなどを作り、いざという時には田んぼ側に氾濫させて遊水池としていたのです。現在では川の両岸に家が建っていて、どちらに氾濫させるかを決めることができないのが被害を大きくしている要因でもあると思います。
橋下徹氏がある番組で、治水行政はあえて上流で氾濫させる計画を語っていました。(その記事はここ)
もちろん、被害はゼロであることが最も重要でしょう。だからダムで雨を貯めて、川の水をコントロールしています。
しかし、被害をゼロにすることが不可能であれば次には被害を最小限にすることが重要です。ダムの下流でも大量の雨が降ればいくらダムがあっても川は増水します。また、ダムがいっぱいになれば氾濫で被害が出ることを承知の上で緊急放流をするのです。どこかに川の水を逃がさなければなりません。そうすると、100人の町と100万人住んでいる都市のどちらの被害を少なくするかを考えます。人間一人一人に対し同じ金額をかけて治水をした場合、100人と100万人では予算が1万倍も違います。また100万人の都市の都市機能や経済損失を考えた場合には、100人の町を犠牲にし、100万人の都市を守るのです。それが行政の考えることです。上流に住む人は納得いかないかもしれませんが、昔からこのような考えで治水はされてきていると思います。
そうすると、上流の人がどうすればいいかというと、氾濫する場所はおおよそ予想できますから、そのような場所に住まないことが大事です。昔のように住む側と氾濫させる側を決めて、氾濫させる側には住居などを作らないか、もし作ったとしても1階部分は浸水しても大丈夫な構造、材質で作り、2階以上に居住空間を持ってくるしかありません。
どこの自治体でも現在はハザードマップがあります。つまり情報提供はされているのです。もし近くの河川が氾濫したら自分の家が浸水するかどうかはわかっているはずです。しかし、多くの人間はいつもまさか自分のところでこんなことが起きるわけがないだろうと思っています。私もまさか地震で北海道全体がブラックアウトになるとは思っていませんでした。だから、何も備蓄などはありませんでした。今回の台風でも接近に伴い、急にスーパーなどで水や食料が売り切れたりしていたので、多くの人は備えを普段からしていないのだと思います。
今回の台風は何十年に一度のものかもしれませんが、最近の異常気象を見ると何年に一度くらいの頻度になるかもしれません。生まれて初めてこのようなことが起きたという人も多いかもしれませんが、もうそんなことは言ってられません。河川は氾濫するものと考える必要があります。
国や自治体に任せていても、これからもっと高齢化社会になり、どこもお金がありません。そうすると治水対策にばかりお金を使うわけにはいきません。だから、河川の氾濫を前提として、ハザードマップで浸水の可能性がある人は、住む場所を移すか、いざという時には家をあきらめて避難し、命だけは守るか、ということになるのでしょう。もちろん、ハザードマップを見ると住める場所がほとんどない地域もあります。私の家も大丈夫と思いつつ、実際に今回のような雨が降れば浸水するかもしれません。対策も取っていません。命を守るためにとりあえず逃げるだけです。
これは日本という国の宿命であり、かなりの予算をかけてこれまでも治水を行ってきました。そういう意味においては、ある政治家の言った「まずまずに収まった」という発言は適切なものとは言えませんが本音なのでしょう。(関連記事はここ)これだけの台風で東京は直撃したのに、東京では現在のところ死者が出ていないのですから。多摩川は確かに氾濫したのですが、東京の氾濫した部位は下流部で唯一、堤防が整備されていない区間だったようです。(関連記事はここ)
病気を医師任せにしてはダメなように、災害対策も国や自治体任せにせずに自分で考える必要があると思います。
今回の水害についてTVなどでは、主に行政の対応の不十分さに焦点をあてている報道でした。
それはその通りでもあるのですが、先生も、それに発言が批判された政治家も指摘している様に、何もかもお上任せというのは、もうこれからの日本では無理があるのでしょうね。
「自己責任」というと逆に行政などの
公的サービスの不備の逃げ口上のようですが、自分でなんとか頑張るという気持ちはやはり基本に持っていたいなあとは思います。
でも歳をとるとそうも言っていられなくなってしまうのかもしれませんが。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
国は荒川が江戸川区で氾濫しなくてほっとしているのではないでしょうか?江戸川区のハザードマップでは「ここにいてはダメです」と、とにかく早めに遠くに避難することの重要性を書いています。
浸水が始まってからでは間に合いませんからね。
氾濫したら江戸川区全域、250万人規模で浸水してしまう可能性があります。
これくらいが行政の限界だと思います。