連日新型コロナウイルスについてテレビなどで報道がされています。どこどこ大学の感染症の教授たちが入れ替わり解説しています。先日のニュースで、ちょっと気になったことを発言されていた専門の教授がいたので、こんなこと言って大丈夫かな?と思いました。
それはニュースのキャスターが「新型コロナウイルスで、熱があるときに解熱剤の使用は大丈夫ですか?」という主旨の質問をしたところ、その教授は「熱があると食欲などが落ちることもあるので、熱を下げることは良いことです。解熱剤を使っても大丈夫です。」という主旨の答えをしていました。本当でしょうか?
一応、新型コロナウイルスは全貌がわかりません。まだ未知のウイルスという状態です。このウイルスが何をするかはよくわかっていません。それほど危険性は高くないと思いますが、実際に中国では多くの死者を出しています。日本でも1人が亡くなり、何人も重症化しています。
感染において、重症化する原因の大きなものがサイトカインストーム(高サイトカイン血症)と呼ばれるものです。これは感染や薬剤投与などの原因で、血中のサイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)の異常上昇が起こり,その作用が全身に波及し、ショックや多臓器不全にまで進行するものです。今回の新型コロナで人工呼吸器管理が必要な方など重症化ケースも恐らくサイトカインストームが起きている場合が多いと思われます。
インフルエンザウイルスで小児がインフルエンザ脳症になる場合がありますが、これもサイトカインストームが原因であると考えられています。そして、小児のインフルエンザ脳症では非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、いわゆる解熱剤の使用が大きくかかわっていると考えられており、小児ではアセトアミノフェン以外の解熱剤は使用しないことになっています。NSAIDsNによる脳症は大人での報告もいくつもあります。
また、「急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」では、ウイルス性心筋炎の治療について、「ウイルス感染を増強する恐れがあるため、発熱に対してNSAIDsなどの鎮痛・解熱薬はなるべく使わない。」と書かれています。今回の新型コロナの症状の特徴に長く続く全身倦怠感というものがあります。一方、心筋炎では全身倦怠感は珍しくありません。もちろん心筋炎に特徴的ではありませんが、もしかしたら心筋炎をももたらしている可能性は否定できません。新型コロナウイルスがまだここまで騒がれていない1月中旬の報告では、中国で最初の2人の死亡が確認されたとき、その2人ともが心筋炎を合併していたそうです。
つまり、現時点で解熱剤(NSAIDs)を安心して使える証拠は全くありません。実験上ではNSAIDsが炎症性サイトカインを増強するという証拠もあるのです。(その論文はここ)NSAIDsの使用により、炎症性サイトカインがさらに増強し、サイトカインストームが起こると多臓器不全をきたし、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で呼吸状態が悪くなる可能性がありますし、心筋炎を起こす可能性もありますし、脳症を起こす可能性もあるのです。
アセトアミノフェン以外の解熱剤は使うべきではありません。
また、基礎疾患として、糖尿病の方の重症化リスクが言われていますが、MARSのときも糖尿病のある人の入院のオッズ比は7以上であり、死亡した方の60%以上は糖尿病も合併していました。糖尿病で血糖のコントロールが悪いと、それだけで炎症を示し、炎症性サイトカインが高い状態となります。(図はこの論文より)
上の図は、ずっと血糖値が高いままの状態と、食後高血糖のように何度も血糖値の上がり下がりを作り出した時のサイトカインの推移です。左が高血糖のまま、右が食後高血糖の状態です。〇が耐糖能異常の人、●がコントロール(正常)の人です。そうすると、耐糖能異常の人では、空腹時でさえIL-6およびTNFαが正常の人よりも高く、ずっと血糖値が高い状態でも、食後高血糖の状態でもサイトカインレベルの増加は、コントロールよりもより長く続き、血糖値スパイクのときのサイトカインピークはコントロールより高くなっていました。さらによく見てみると耐糖能障害の人で比べてみても、血糖値がずっと高い状態よりも血糖値スパイクを起こす状態の方が、よりサイトカインが増加しています。つまり、糖尿病の人が糖質過剰摂取で血糖値スパイクを起こしていると、よりサイトカインストームが起こりやすいのかもしれません。さらに、正常な人であっても血糖値スパイクのときのサイトカインの増加は注意すべきなのかもしれません。
また、以前の記事「ウイルス感染に対する防御をわざわざ失っているかもしれない」で書いたように、抗生物質の使用もサイトカインストームを呼んでいる可能性は否定できません。細菌の2次感染を恐れて、ウイルス感染には全く効果がない抗生物質を使用することが本当に良いことなのかどうかはわかりません。武漢の新型コロナウイルス感染肺炎の入院患者138人の報告では全員に抗生物質が使われています。
口腔、鼻腔、咽頭だけでなく肺にも常在菌がいます。まだ肺の細菌叢がどのような役割をしているかはわからないことが多いでしょう。なんせ、昔は声門よりも下の下気道は無菌と考えられていたのです。私も医学部でそう習いました。でも、医師になって無菌なわけがない、と思っていました。空気が通る開放空間なのですから。その肺の細菌叢は最近肺がんの予後に関連しているという研究が発表されました。(その論文はここ)
当然肺の細菌叢がウイルスや細菌の感染に何らかの大きな役割を果たしている可能性は容易に想像できます。その重要と思われる肺の常在菌も抗生物質の使用で大きく変化するでしょう。常在菌が何とかウイルスから守ってくれていたのに、抗生物質で常在菌が弱まり、一気にウイルスが肺に増殖し重症化した、というシナリオは考えすぎでしょうか?
今回の新型コロナウイルスに対して、今の時点で、私は大人であってもアセトアミノフェン以外の解熱剤(NSAIDs)、安易な抗生物質の使用はやめた方が良いと思います。
糖質過剰症候群
「Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus-Infected Pneumonia in Wuhan, China」
「中国武漢にある2019年の新型コロナウイルス感染肺炎の入院患者138人の臨床的特徴」(原文はここ)
医学門外漢の私でも(だからこそ?)先生の上記の推測?は健康の為の尤もな理論として理解できます。
同様の考えを持っている医師も多数いらっしゃると思います。是非実際の診療に活かして欲しいと切に望みます。
NHKラジオで「マスクの感染症に対する予防効果の科学的根拠はありません」と、(NHKらしからぬ?)真っ当な情報提供をしていました。
高齢者にとってNHK様は絶対的ですから、
(勿論例外はあるのでしょうが)
糖質制限キヤンペーンもNHKでやっていただければ、きっと認知症も減らす事ができそうです。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
人間自身が持っているメカニズムをもっと信じたほうが良いと思います。
それにしても今回のコロナウイルスの騒ぎで、本当にこの国、厚労省のいい加減さがわかりますね。
糖質制限キャンペーンをNHKでやる日はまだまだ先でしょう。
NHKに糖質制限キャンペーンを望むべくもありませんでした。
暇に任せて“FRIDAY デジタル”というインターネットサイトを見ました。
「認知症から逃げるには週に3回カレーを食べよう」
というキャンペーンを発見してしまいました。
発信されている方が「日本の認知症治療を牽引する国立長寿医療研究センターの老年内科部長・遠藤英俊医師(64)」 という先生でした。
確かにターメリックに含まれるクルクミンが認知機能を維持改善、とは私も聞いたことはありますが、カレー週三回はあまりにも糖質過剰、と思われます。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
ご飯抜きで、小麦粉を使わないスパイシーカレーであればそれほど糖質過剰にはなりませんよ。
カレーライスはダメですね。