混合食の血糖値とインスリン分泌

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)糖尿病の診断に行われますが、実際の食生活で75gの砂糖やブドウ糖だけを飲んだり食べたりする人はほとんどいないと思います。そうするとこのOGTTは、他の栄養素、脂質やタンパク質を同時に食べる普通の食事での血糖値やインスリン分泌などを反映しているか?というと恐らく大きく異なると思われます。

より通常の食事に近づけた混合食のドリンクを飲んだ場合は血糖値やインスリン分泌はどうなるのでしょう?

今回の研究では、OGTT(75gブドウ糖)と混合食ドリンクの両方で、健康な人と2型糖尿病の人の血糖値やインスリン分泌の推移を比較しました。混合食ドリンクは60gの脂質(そのうち39%が飽和脂肪酸、47%が一価不飽和脂肪酸、14%が多価不飽和​​脂肪酸)、75gのブドウ糖、20gのタンパク質を含む3950kJ(950kcal)です。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はAが血糖値の変動、Bがインスリン分泌の変動です。横軸はどちらも時間経過です。それぞれのドリンク摂取後8時間も経過を追っています。実線はOGTT、破線は混合食ドリンクで、濃い線は糖尿病、薄い線は健康な人です。

糖尿病の人ではベースラインから血糖値が高いですが、75gもブドウ糖を摂るOGTTでは血糖値が300超えです。ピークは1~2時間後です。4時間後にはベースラインに戻っていますが、その後はさらに血糖値が低下して、8時間後までずっと低下し続けています。混合食ではそれほど血糖値の上昇は大きくありませんでしたが、6時間後にほぼベースラインに戻り、8時間後にはさらに低下しています。

一方、健康な人ではOGTTで30分値が上昇していますが、140くらいでしょう。混合食ドリンクではほとんど変化がありません。

では、インスリン分泌はどうでしょうか?

糖尿病の人では、OGTTでは2時間値をピークとして、6時間でベースラインに戻っています。しかし、混合食ドリンクでは2時間後にピークですが、インスリン分泌量はOGTTよりもかなり多く、4時間後でもかなりの分泌量です。8時間後にやっとベースラインです。

健康な人ではOGTTに対する初期のインスリン分泌が最も多く、1時間後にピークで、4時間後にはベースラインに戻っています。しかし、混合食ドリンクでは、1時間後でピークで、その分泌量はOGTTより少ないのですが、分泌は長時間続き、6時間後にやっとベースラインに戻っています。

つまり、OGTTと混合食ドリンクでは糖質量は同じですが、混合食ドリンクは脂質とタンパク質が入っていることにより、吸収がゆっくりとなったのか、血糖値の上昇は緩やかである代わりに、インスリン分泌は長時間続き、最終的なインスリン分泌量の総量はOGTTよりも多くなっているのです。特に糖尿病ではそのことが顕著です。

インデックス健康2型糖尿病
OGTT混合食OGTT混合食
DI6.31±3.424.63±41.70.51±0.21.55±0.8
IGI1.28±0.63.83±5.70.26±0.10.91±0.5
松田5.83±3.47.40±6.02.13±1.01.84±0.7

DI:disposition index(インスリン分泌能とインスリン感受性の積)、IGI:insulinogenic index(インスリン分泌指数)

DI値はすい臓のβ細胞のインスリン抵抗性へのインスリン分泌代償能の指標と考えられています。IGIは最初の30分間の血糖値増加に対するインスリン分泌増加の割合を示しています。つまり、インスリン追加分泌のうち初期分泌能の指標となります。

松田インデックスは、HOMA-IRが肝臓を中心としたインスリン抵抗性を示す指標であるのに対し、筋肉を含む全身のインスリン抵抗性の指標です。HOMA-IRと反対に小さい方がインスリン抵抗性が高いことになります。

そうすると、健康な人と糖尿病の人ではOGTTと混合食に対するインスリン感受性、分泌能などの指標は同様の方向性ではあるものの、健康な人の変動の方が非常に大きくなっていて、個人差も非常に大きいことがわかります。

特に健康な人ではインスリン分泌能が混合食で非常に大きく増加しています。タンパク質が含まれた分、インスリンが多くなった可能性はあります。腸からのインクレチン(GIPやGLP-1)というホルモンは、脂質やタンパク質でも分泌され、インスリン分泌を促進します。タンパク質の方が脂質よりも初期のGIPの分泌を増やす効果が大きいようです。(ここ参照)同時にインスリン抵抗性も低下していますので、混合食では血糖値の変動がほとんどなかったのでしょう。

糖尿病の人では混合食の方がインスリン抵抗性が増加しているのも興味深いです。混合食でインスリン分泌が多くなっているにも関わらず、血糖値の低下の速度が遅くなっているのは、この筋肉でのインスリン抵抗性の増加によるものがあると考えられます。それがなぜ起きているのかはよくわかりません。

いずれにしても、血糖値の上昇が少ないことが、インスリン分泌が少ないこととイコールではありません。インスリン分泌がより増加していることや吸収が穏やかであることで血糖値がそれほど上がらないと考えられます。血糖値の上昇が少ないけど、その分インスリンが長時間たっぷり出ている可能性があります。

食後高血糖による有害性は少なくなっても、長時間の高インスリン血症も問題です。高インスリンにより、慢性炎症を起こしたり、インスリン抵抗性を促進したり、がんなどのリスクを増加させる可能性があります。

血糖値だけを気にするのではなく、インスリンをできる限り多く分泌させない食事が重要だと考えます。その食事は糖質制限食です。

糖質過剰症候群

「Multi-parameter Comparison of a Standardized Mixed Meal Tolerance Test in Healthy and Type 2 Diabetic Subjects: The PhenFlex Challenge」

「健康な人と2型糖尿病の人における標準化された混合食耐性試験のマルチパラメーター比較:PhenFlexチャレンジ」(原文はここ