非常に低いLDLコレステロールは死亡率や心疾患リスク低下に関連していない

以前の記事「コレステロール値に一喜一憂しないために」「コレステロールを恐れ過ぎてはいけない LDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がる!」などで書いたように、LDLコレステロールが高いほど死亡率が低下すると考えられています。

しかし、まだLDL信仰はあるようです。LDLに頼らないとスタチンの処方ができないからだと考えられます。LDLコレステロールが低いとそんなにメリットがあるのでしょうか?

LDLコレステロールが70mg/dL未満の人と70mg/dL以上の人を比較した研究があります。

脳卒中における地理的および人種差の理由の(REGARDS)研究という研究での30,239人の中で、Framingham冠動脈リスクスコアが10%以上であるか、またはアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが≧7.5%である冠動脈イベントの「高リスク」の人を選択しました。全体として6,136人になり、95%がLDLコレステロール70mg/dL以上で、5%がLDLコレストロール 70mg/dL未満でした。

高いLDLコレステロール群(70mg/dL以上)と比較して、低LDLコレステロール群(70mg/dL未満)では、糖尿病(67.2%対32.6%)およびスタチン使用(57.1%対24.9%)、他の脂質低下療法(6.8%対3.9%)が多く、。 低LDLコレステロール群では、黒人(46.8%対41.2%)、喫煙者(31.2対25.0 %) が多く、アルコール摂取率が低い(30.8%対37.3%)という違いがありました。

そうすると、結果は下の図のようになりました。(図は原文より)

 

左は調整していないもので、右が様々なもので調整したグラフです。LDLコレステロール70mg/dLを1とした全原因死亡率を表しています。LDLコレステロールが70~250ぐらいまでは70のときと比べて死亡率が低下しています。

炎症所見であるCRPを合わせてみてみましょう。

 

様々なモデルがありますがどれも同じようなものであまり大きな違いはありません。LDLコレステロール70以上でCRPが2mg/L(日本の単位では0.2mg/dL)以上を基準として、LDLコレステロール70未満でCRP2未満の群、LDLコレステロール70未満でCRP2以上の群、LDLコレステロール70以上でCRP2未満の群で比較しています。表の上から順に全原因死亡率、脳卒中の発生率、心疾患の発生率、心疾患での死亡率です。

そうすると、有意な差が認められたのは、全原因死亡率ではLDLコレステロール70未満でCRP2以上の群がLDLコレステロール70以上でCRP2以上の群よりも高くなりました。心疾患の発生率および心疾患での死亡率ではLDLコレステロール70以上でCRP2未満の群が有意に低くなりました。脳卒中では有意差はありませんでした。

 

アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが≧7.5%の人の分析でも同じような傾向の結果となりました。先ほどのものと合わせたところ上の図のようになり、全原因死亡率はLDLコレステロール70以上でCRP2以上の群と比較して、LDLコレステロール70未満でCRP2以上の群が有意に高く、それ以外の脳卒中、心疾患ではLDLコレステロール70以上でCRP2未満の群が有意に低い結果でした。

つまり、LDLコレステロール低下なんていうのはあまり死亡率や心疾患などには関連せず、CRP(炎症)が関連しているように見えます。CRPが高ければ、LDLコレステロールは低い方がリスクが高くなってしまうのです。

 

上の図は黒い線がスタチンを使っている人、青い線がスタチンを使っていない人です。上から全原因死亡率、心疾患発生率、脳卒中発生率です。左が調整する前、右が調整後です。

そうすると、スタチンを使っていない場合、全原因死亡率ではLDLコレステロールがどのような値であっても70のときと大差がなく、心疾患もスタチンを使っている人よりも安全域が広く、リスクの上がり方も緩やかです。脳卒中もLDLコレステロールは気にしなくてもよさそうです。逆にスタチンを使いながらLDLコレステロールが200以上というのは危険だと思われます。

いずれにしても、高リスクの人でさえ、LDLコレステロールを低下させる意義はほとんどないように思えます。最も重要なことの一つは炎症を抑えることなのかもしれません。

 

「Associations between very low concentrations of low density lipoprotein cholesterol, high sensitivity C-reactive protein, and health outcomes in the Reasons for Geographical and Racial Differences in Stroke (REGARDS) study」

「非常に低い濃度のLDLコレステロール、高感度C反応性タンパク質、および脳卒中における地理的および人種差の理由の(REGARDS)研究における健康成果との関連」(原文はここ

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