現在、どれほど多くの人がPPI(プロトンポンプ阻害薬)を長期に使用しているでしょう。
急性冠症候群でクロピドグレルが処方されますが、PPIはこのクロピドグレルの効果を減弱するようです。
急性冠症候群により治療を受けて、退院時またはフォローアップ時にクロピドグレルとPPIを処方した患者の全死亡率および再発急性冠動脈症候群の累積リスクを下に示します。
(図はこの論文より)
どちらの薬も使用していない群が最もリスクが高かったのですが、クロピドグレルを飲んでいて、PPIを併用していた場合と併用していない場合では、有意に併用していた方がリスクが高くなっていました。
それでは、急性冠症候群ではなく、一般の集団ではPPIと心筋梗塞の関連はどうなっているのでしょう。
胃食道逆流症(GERD)でPPIを使用している人を対象に心筋梗塞との関連を分析した研究です。(図は原文より)
上の図はPPI使用による心筋梗塞のオッズ比です。AはH2ブロッカーとの比較、BはPPIの種類による比較、CとDはクロピドグレル使用を除いたものや55歳以下の年齢における心筋梗塞の起こりやすさを示しています。1という赤い線より右側にあれば心筋梗塞を起こしやすいということを表しています。
そうすると、H2ブロッカーは心筋梗塞と関連していませんでした。PPIの種類によって結果は様々で、オッズ比は1.08~1.34となっていました。
クロピドグレル併用があっても無くても差は無く、リスクは高まり、55歳以下という比較的若い人でも心筋梗塞のリスクが高まることを示しています。
上の図は末梢動脈疾患の遺伝的決定因子(GenePAD)研究の集団で分析した生存分析です。(申し訳ありませんがこのGenePADという研究の詳細は知りません)PPIを使用していると心血管死亡リスクは122%増加しました。
PPIの使用が、55歳以下という若年者および抗血小板薬を使用していない人々を含む一般集団で、心筋梗塞に関連しているのです。PPIが、血小板凝集を直接的には伴わない未知の機序によって心筋梗塞のリスクを増加させているのではと考えられます。
以前の記事「糖質制限と逆流性食道炎の改善」で書いたように、胃食道逆流症(GERD)でPPIを使用する必要は無く、糖質制限の方が効果的だと思います。
それでもまだPPIを飲みますか?
「Proton Pump Inhibitor Usage and the Risk of Myocardial Infarction in the General Population」
「一般集団におけるプロトンポンプ阻害薬の使用と心筋梗塞のリスク」(原文はここ)