経口ブドウ糖負荷後2時間血糖値は役に立たない

糖尿病の診断には空腹時血糖値と経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の結果により次にようになります。(図は糖尿病診療ガイドライン2016より)

空腹時血糖値が正常であり、ブドウ糖負荷後の2時間血糖値が140未満なら、糖尿病ではありません。一応正常と判定されます。もちろん随時血糖値が200以上、HbA1cが6.5以上でも糖尿病型と見なしますし、OGTT後1時間値が180以上の場合には境界型に準じた扱いとなります。

では、正常と判定された人の実際の血糖値の推移やインスリン分泌の推移はどのようになっているのでしょうか?

クラフトパターンというものがあります。その分類はインスリンの分泌のパターンで分けられています。

パターン1(ノーマルインスリン) 空腹時インスリン30以下、30分または1時間でピーク、2時間と3時間の合計で60未満

パターン2A(ボーダーライン) 空腹時インスリン50以下、30分または1時間でピーク、2時間と3時間の合計で60以上100未満
または、空腹時インスリン31~50、30分または1時間でピーク、2時間と3時間の合計で60未満

パターン2B(高インスリン血症) 空腹時インスリン50以下、30分または1時間でピーク、2時間と3時間の合計で100以上

パターン3(高インスリン血症) 空腹時インスリン50以下、ピークの遅延(2時間または3時間)

パターン4(高インスリン血症) 空腹時インスリン50よりも多い

パターン5(低インスリン血症) 全てのインスリン値30以下

ちょっと空腹時のインスリン値が高いと思いますが、クラフト先生の分類はこのようになっています。

7,755人の参加者でデータを収集しました。その中で正常の耐糖能と判定されたのは4,185人 (54%)でした。平均年齢は55.2歳、平均のBMIは26.9でした。その人たちをクラフトパターンによって分類すると、正常と判定された人のグラフは次のようになります。ただし、このOGTTは通常のブドウ糖75gではなく100gです。(図は原文より)

赤い線が血糖値、青い線がインスリン値です。上の図のどれも血糖値について、空腹時と2時間値は正常範囲にあります。実際のそれぞれのパターンを示す人の割合や値は下のようです。

上の図を見ると、正常と判定されたにもかかわらず、パターン1のノーマルとパターン2Aのボーダーラインを合わせても1,951人しかいません。高インスリン血症と判定されるのは2,079にもなります。つまり、空腹時血糖値とOGTTで負荷後2時間値を元に判定しても、正常と判定した人の半分はすでに高インスリン血症になっているのです。

「OGTT後1時間値が180以上の場合には境界型に準じた扱い」を適応しても、どれも引っかかりません。これではOGTTがあまり意味を成しません。OGTTで異常値が出る段階ではもうすでに相当進行している状態であると考えられます。

高インスリン血症は無症状です。そして、通常血糖値の本当のピークは30分~1時間です。それなのに、判定基準は負荷後2時間値です。2時間値は役に立ちません。

もし、OGTTをやることになった場合は、是非2時間後の血糖値だけにとらわれることなく、30分や1時間値、そしてインスリン値の推移に注意してみてください。

もちろん、空腹時インスリン値はクラフトパターンでの30以下ではなく、10以下が望ましいと思います。クラフトパターンの2A になったらすぐに糖質制限ですね。

 

「Identifying hyperinsulinaemia in the absence of impaired glucose tolerance: An examination of the Kraft database」

「耐糖能障害のない高インスリン血症の同定:クラフトデータベースの検討」(原文はここ

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