血液検査を受けるときにはビオチンのサプリメント摂取に注意

ビタミンB群のビタミンB7であるビオチンは血液検査に干渉するようです。日本人の摂取の目安量は50µg/日です。これは珍しくアメリカの推奨量の30μgよりも多いのです。

しかし、サプリメントでビオチンを含むものを摂取すると血液検査に影響する場合があるようです。

今回FDAが出した警告では、臨床的に重要なバイオマーカーであるトロポニン(心筋細胞の損傷を表す)に対して誤って低い結果を引き起こす可能性があると言っています。検査の前に何時間または何日間ビオチンの摂取を止めることで、誤った検査結果を防ぐことができるかどうかを知るのに十分な情報は得られていません。

他にも内分泌のデータに影響を与える場合があるようです。ある患者では下垂体ホルモン(TSH、ACTH、およびプロラクチン)が基準範囲を下回る、テストステロンおよび副腎のコルチゾールが基準範囲を上回るなどの検査結果が出て、様々な検査をした結果、これがビオチンの干渉を受けた結果だということがわかりました。(図は原文より)

上の図は横軸がビオチンの血中濃度です。Aの図はテストステロン、BはTSH(甲状腺刺激ホルモン)です。TSHなど甲状腺に関するホルモンに干渉することは有名なので、ご存じの方も多いでしょう。ビオチンによりTSHは低下し、f-T3やf-T4は増加しているように影響を受け、甲状腺機能亢進症と誤った診断をされてしまう場合もあるかもしれません。甲状腺のホルモン以外の他の様々なホルモンにも干渉するようです。

この研究のホルモン以外にも副甲状腺ホルモン(PTH)や黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン、ビタミンD、そして腫瘍マーカーなども干渉が報告されています。

(上の図はこの論文より)

このような検査結果が出ると、不必要な検査や治療を受けてしまう可能性や逆に異常が見逃される可能性があります。マルチビタミン、ビタミンB群のサプリメントをたくさん摂取している人は十分に注意し、検査を受ける際はサプリの摂取の事実を申告した方が良いでしょう。

「Suspected Testosterone-Producing Tumor in a Patient Taking Biotin Supplements」

「ビオチンサプリメントを服用している患者におけるテストステロン産生腫瘍の疑い」(原文はここ

2 thoughts on “血液検査を受けるときにはビオチンのサプリメント摂取に注意

  1. いつも楽しく拝読させていただいております。

    ビオチンの件、当方検査センターの学術員で本件も担当しておりますので、ちょっとコメントを。

    検査ではよく、①ビオチンが結合した抗原特異抗体と②蛍光等を標識した固相化アビジンにより、検査対象の濃度を計測します。
    この測定系にビオチンが多量に入ってくると、本来出るべき検査値より低値化します。

    米国では、ビオチンを多量に摂取していた心疾患患者がのトロポニン(心疾患の指標)検査値が低く、放置され死亡した例があり今回の勧告が出た次第です。

    このような事例は非常にまれなケースですが、FDA推奨量の150倍以上(1日当たり5㎎)摂取した場合もしくは透析等でビオチンが排出されにくい場合には起こりえます。

    後者を除いてビオチンの血中半減期は3,4時間とされているため、検査試薬の製造メーカーや検査会社では、患者がビオチンを多量に摂取した場合、(摂取したビオチンが検査に影響を与えない濃度に低下する)8時間以上経過してからの採血を推奨しています。

    1. オフロスキwさん、コメントありがとうございます。

      情報をありがとうございます。ただ、今回示した論文でもビオチンを中止したあと2週間してもTSHの検査値の干渉が認められています。
      もちろん、内緒でビオチン接種を続けていた可能性は否定できませんが。
      またほかの論文でも甲状腺ホルモンでビオチン中止後72時間後にやっと正確な検査値が出たことが示された例も報告されています。
      水溶性ビタミンの血中半減期に関しては個人差もあるかもしれません。
      また、水溶性ビタミンは過剰に摂取しても尿中に排泄されるだけだと言われていますが、すべてのビタミンにあてはまるわけではないかもしれません。
      また、一部の医師が大量のビタミン摂取を推奨しているために、推奨量の何倍~何百倍もの量を摂取している人もいます。
      そうするとサプリ摂取後8時間で本当にいいのかどうかは疑問ですし、そもそもビタミンサプリの摂取について問診さえされていない場合もあるかもしれませんね。

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