スタチンは新型コロナウイルスの重症化を増加させるかもしれない

*今回の記事は実際には人間で確固たる証拠が見出されているわけではありませんので、今飲んでいる薬の中止を勧めているわけではありません。注意が必要です。

新型コロナウイルスの感染で、集中治療室での治療を必要とする重度の肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は主な死亡要因になっていると考えられています。また、新型コロナウイルスによる死亡の主な併存疾患には、高血圧、糖尿病、心血管疾患があります。

最近のアメリカCDCの発表では次のようになっています。(データはここより、改変)

 
重篤な転帰の根底にある健康状態/リスク因子 人数 (%)
入院していない 入院、非ICU ICU入室 入院状況不明
症例報告の合計(n= 74,439) 12,217 5,285 1,069 55,868
1つ以上の条件(2,692、37.6%) 1,388(27) 732(71) 358(78) 214(41)
糖尿病(784、10.9%) 331(6) 251(24) 148(32) 54(10)
慢性肺疾患(656、9.2%) 363(7) 152(15) 94(21) 47(9)
心血管疾患(647、9.0%) 239(5) 242(23) 132(29) 34(6)
免疫不全状態(264、3.7%) 141(3) 63(6) 41(9) 19(4)
慢性腎疾患(213、3.0%) 51(1) 95(9) 56(12) 11(2)
妊娠(143、2.0%) 72(1) 31(3) 4(1) 36(7)
神経障害、神経発達障害、知的障害(52、0.7%) 17(0.3) 25(2) 7(2) 3(1)
慢性肝疾患(41、0.6%) 24(1) 9(1) 7(2) 1(0.2)
その他の慢性疾患(1,182、16.5%) 583(11) 359(35) 170(37) 70(13)
元喫煙者(165、2.3%) 80(2) 45(4) 33(7) 7(1)
現在の喫煙者(96、1.3%) 61(1) 22(2) 5(1) 8(2)
上記のいずれの条件もない(4,470、62.4%) 3,755(73) 305(29) 99(22) 311(59)

入院が必要になった人の24%、ICU入室の32%に糖尿病、入院が必要になった人の23%、29%に心血管疾患を認めています。今回は心血管疾患に注目します。

心血管疾患の治療に一般的に使用される薬物は、新型コロナウイルスにおいてARDSおよび死亡のリスクを実際に増加させる可能性があるかもしれません。主な懸念のある薬物は、血圧低下に使用されるアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)やコレステロール低下に使用されるスタチンです。

以前の記事「新型コロナウイルスと糖尿病 その2」などでも触れましたが、新型コロナウイルスは侵入する際の受容体として、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を使用しており、ACE2は肺胞に豊富に発現しています。今回の論文にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はACE2受容体の発現を増加させます。しかし、ACE阻害剤はその受容体の発現を変えないと書かれています。したがって、ACE阻害剤ではなくARBが肺胞上皮細胞へのウイルスの侵入を促進し、より大きな肺障害を引き起こす可能性があります。

ただ現在のところ医学的な証拠に乏しく、関係学会はARBの中止をしないように呼び掛けています。(ここなど参照)

動物実験ではACE2発現低下による肺損傷の悪化を認める研究もあり、ARBやACE阻害薬の有効性、有害性はまだ不明です。有害とも言えませんが、問題がないとも言えません。

ACE2に関しては、スタチンも増加させると考えられています。

スタチンはARDSの炎症の経路の活性化も促進し、炎症性サイトカインであるインターロイキン-18(IL-18)のレベルを上昇させ、その結果、サイトカインストームを誘導させる可能性に言及している論文もあります。

感染に関連したARDSの治療のためにスタチンの多施設無作為化プラセボ対照試験の結果では、ベースラインのIL-18レベルは、その後の罹患率と死亡率と正の関連がありました。さらに、28日間の試験で毎日ロスバスタチン20 mgに無作為化された被験者は、IL-18レベルの上昇を示す可能性が高く、その上昇は死亡率の増加と有意に関連していました。

以前の記事「LDLやHDLは免疫システムの一部である その4」「その3」などでも書いたようにLDLやHDLなどのリポタンパク質は免疫システムの一部です。スタチンがターゲットにするLDLコレステロールの低下は感染にとって有害であり、死亡率も高くなる可能性が高いと思います。

心血管疾患では通常アテローム性動脈硬化症を伴っており、多くの人でARBとスタチンの両方がよく行われる処方です。基礎疾患に使用する一部の薬がウイルスの侵入を増加させ、炎症に関わるIL-18レベルを増加させることにより、特に服用する可能性が高い高齢者において、相乗的に重篤な肺炎、ARDS、および死亡を促進する可能性があります。

新型コロナウイルスの重症化に基礎疾患そのものが関連しているのか、それとも基礎疾患により処方されている薬が関連しているのか?重症化した人や死亡した人の内服歴も公表して、分析してほしいですね。そして特にスタチンを心血管疾患の一次予防のために使用している場合には、新型コロナ感染拡大の中でスタチン治療を中止するかどうかを検討する必要があるかもしれません。そして、その判断が無数の命を救うかもしれません。

糖質過剰症候群

 

「Association of Elevated Plasma Interleukin-18 Level With Increased Mortality in a Clinical Trial of Statin Treatment for Acute Respiratory Distress Syndrome」

「急性呼吸窮迫症候群のスタチン治療の臨床試験における血漿インターロイキン-18レベルの上昇と死亡率の増加との関連」(原文はここ

「Considerations for statin therapy in patients with COVID‐19」

「COVID-19患者のスタチン療法に関する考慮」(原文はここ

「Are certain drugs associated with enhanced mortality in COVID-19?」

「特定の薬物はCOVID-19の死亡率の増加に関連していますか?」(原文はここ

2 thoughts on “スタチンは新型コロナウイルスの重症化を増加させるかもしれない

    1. えれこーどさん、情報ありがとうございます。

      この論文では逆の結果ですね。一番は糖質過剰摂取との関連でしょうね。

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