LDLやHDLは免疫システムの一部である その3 新型コロナウイルスの場合

以前の記事「LDLやHDLは免疫システムの一部である その1」「その2」では、感染とLDLやHDLなどのリポタンパク質との関係を書きました。

それでは、現在感染が拡大している新型コロナウイルスではどのようになっているのでしょうか?

上の図は感染初期段階の健康なコントロールと新型コロナ感染者のデータです。コントロールと比較して、白血球、好中球とリンパ球が減少しており、通常のウイルス感染初期と同様です。中性脂肪はやや増加傾向に見えますが有意差なし。総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールは大きく減少しています。

上の図は、武漢で感染した一次感染群と、武漢に行ったことがなく、人から人への感染により感染した二次感染群の比較です。 HDLコレステロールは、一次感染の方が二次感染の場合よりも有意に低くなっていました。 LDLコレステロールも一次感染の方が二次感染の場合よりも低くなる傾向がありましたが、有意差なしです。二次感染よりも一次感染の方がHDLコレステロール値が低いことは非常に興味深いですね。武漢の死亡率は中国の他の地域よりも高く、HDLコレステロール値は重症の違いに関連している可能性があります。ウイルスは人から人へと感染していく間に、感染した人を殺さない程度に病原性を弱めて感染を広げていく戦略をとることが多いことが、このデータは示しているのかもしれません。

上の図は性別による違いです。男性患者のHDLコレステロール値は女性よりも有意に低くなっていました。  もしかしたら、このような性差が男性の死亡率の高さに影響しているのかもしれません。

上の3つの図は重症化した感染者のケースのコレステロールの推移です。退院するまでの16日間、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールは9日目まで持続的に低下しました。 その後退院した16日目まで徐々に回復しましたが、退院日にまだ低レベルのままでした。退院後14日目に元の値のレベルに戻りました。つまり、感染してからコレステロールがもとに戻るまで1か月もかかっているのです。

ウイルス感染により全身に炎症が起きると、それによりLDLやHDLなどのリポタンパク質は酸化され、その酸化したLDLやHDLは免疫の活性を促進し、その役割を果たしたリポタンパク質は受容体に取り込まれ、血管の内膜に蓄積するのではないかと思われます。それにより、リポタンパク質の中のコレステロールも同時に内膜へ移動し、血中のコレステロールが減少してしまうのかもしれません。

もしかしたら、もともとHDLが低い人や質の悪いHDLを多く持っている人は感染時に対応する余裕がなく、急速に悪くなるのかもしれません。代表例は糖尿病でしょう。

また、慢性炎症があると、常に多くの酸化LDLが発生していて、それがLOX-1により取り込まれアテロームを発生しているところで、感染による急激な強い炎症が起きると、一気にアテロームが増加して、様々な血管が詰まりやすくなるのかもしれません。

血中のコレステロールと感染症による死亡率はどうなっているでしょうか?それは次回以降に。

「Low Serum Cholesterol Level Among Patients with COVID-19 Infection in Wenzhou, China」

「中国温州市のCOVID-19感染患者における低い血清コレステロール値」(原文はここ