新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同時感染すると死亡率低下?

北海道の新型コロナウイルスの陽性者数が久々に1桁になりました。データを見てみるとはやり気温が関係しているような気がします。

上の図は北海道の陽性者数(青色のグラフ)と1週間前の札幌の平均気温(オレンジ色のグラフ)です。平均気温はひっくり返していますので、上に行くほど気温が低いことになります。この二つのグラフを重ねると、ほぼ関連しているように見えませんか?もし関連しているとすると、5月12日ごろからもう一度陽性者が増加することになります。ゴールデンウィーク後半は寒かったですから。はずれてこのまま収束すると良いのですが。

さて、先日の記事「新型コロナウイルスと他のウイルス感染は同時に起きるか?」では、インフルエンザと新型コロナウイルスの同時感染は多いのか少ないのかわかりませんでした。探してみると、中国の武漢の報告がありました。その結果はビックリです。

2020年2月2日から2020年3月13日までの間に、中国の武漢の病院において新型コロナウイルス感染が疑われるか、確認された1,206人の患者のうち、インフルエンザA / Bウイルスのテストがされていなかったため、917人の患者が除外され、273人に関するデータを分析しました。

新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時感染の発生率はなんと、55.3%!で、A型インフルエンザは48.5%で、B型インフルエンザは6.6%でした。それぞれ。インフルエンザウイルスの同時感染は、重篤化していないグループは60.5%で、重篤化したグループは(43.4%)よりも有意に多かったのです。

インフルエンザ同時感染群における新型コロナの死亡率は9.9%でしたが、非インフルエンザ群では23.8%でした。インフルエンザウイルスとの同時感染により、非インフルエンザ群よりも死亡率が有意に低下したことが明らかになり、インフルエンザ同時感染群での生存率は非インフルエンザ群の2.56倍でした。インフルエンザ同時感染で死亡率が53%も低下するようです。(図は原文より)

感覚的にはインフルエンザ同時感染で悪化しそうですが、実際には逆なのかもしれません。

インフルエンザウイルスによって先に感染する細胞が占拠された可能性があります。それにより肺細胞への新型コロナウイルス侵入の減少または遮断に寄与しるのかもしれません。また、以前の記事「新型コロナウイルスと途上国」で書いたように、何らかの感染で非特異的な免疫が確立することがあると思われ、インフルエンザウイルス感染が一時的な非特異的免疫を確立し、他のインフルエンザ以外の呼吸器系のウイルス感染や重篤化のリスクを減らす可能性があります。

一方、A型インフルエンザウイルス感染やRSウイルス感染、またはインフルエンザワクチンは新型コロナウイルスの受容体のACE2の発現を大幅に増加させたという研究もあります。(ここ参照)つまり、インフルエンザウイルス感染が新型コロナウイルスに感染する高リスク因子となる可能性があることを示唆しています。しかし、2つの研究を合わせれば、インフルエンザウイルス感染は新型コロナウイルス感染のリスクは増加させるけれど、重症化から保護してくれるのかもしれません。

欧米で冬場には新型コロナウイルス感染はそれほど問題になっていなかったのが、インフルエンザによって守られていた?なんてことはないでしょうか。

新型コロナウイルスと他のウイルス感染は同時に起きるか?」では、インフルエンザ同時感染は非常に少なかったのですが、それは研究の時期がアメリカでは3月だったというのが考えられます。この研究は2月が中心で、インフルエンザが流行していた時期と重なり、さらに武漢では新型コロナ感染でパニック状態で、病院に人が大勢詰めかけたため、インフルエンザも新型コロナも同時に拡大した可能性があります。

日本でも今年の冬、インフルエンザになった人で、インフルエンザなのに妙に治りが悪かったら、もしかしたら新型コロナウイルス同時感染だったかもしれませんね。

いずれにしても、かなり2つ以上のウイルスの同時感染が頻繁に起こることは確かでしょう。

「Is Co-Infection with Influenza Virus a Protective Factor of COVID-19?」

「インフルエンザウイルスの同時感染はCOVID-19の防御因子ですか?」(原文はここ

コメント

  1. NANA より:

    Dr.Shimizu さん、

    様々な記事情報や論文を取り上げて論考、解説されているブログ記事は非常に参考になっております。

    さて既にご承知かもしれませんが、日本人のCOVID-19の死亡率(全人口に対する死亡数)や致命率(CFR:case fatality rate)が欧米に比べて桁違いに低いことに関して、つい最近、日本の研究者が興味深い分析をした論文が公開されました。

    【論文を紹介、解説した記事】
    https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200509/dom2005090005-n1.html

    【論文:pdfファイルで全文ダウンロード可能】
    https://www.cambridge.org/engage/coe/article-details/5ead2b518d7bf7001951c5a5

    この論文は新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとの同時感染の問題、いわゆるウイルス干渉についても論及しています。

    論文が結論として言及している内容には、今まで日本の多くの疫学や感染症の研究者や専門家が述べてきたことを大きく覆すものがあります。
    ですので、この論文に対しては疑義や反論が起こることも十分予想されます。

    論文著者らが数理計算の元にしている種々の統計データの科学的真偽や信頼性などについて、私はその裏付けをしっかり取ることができないこともあって、論文内容の咀嚼が十分に出来ておりません。
    Dr.Shimizuさんのご意見を聞かせていただければ幸いです。

    • Dr.Shimizu より:

      NANAさん、コメントありがとうございます。

      京都大学のこの先生の論文は以前にも取り上げましたが、前提がウイルス干渉ですね。でも実際にはウイルスの干渉は起きることもあるし、逆に感染を促進することもあるようです。
      私の記事の内容が正しいとするなら、新型コロナとインフルエンザは干渉しません。
      また、日本について、かなりの偶然が起こした奇跡のような仮説です。しかし、アジアの国の対策やそのタイミングは様々なのに、アジア全体で死者数は圧倒的に少ないのです。
      まったく都合よく考えすぎのような論文だと思います。