多剤併用どうにかならないか?

ペインクリニックの外来で初診の患者さんが来ると、困ることが多々あります。それは物凄い数の薬をすでに飲んでいることです。多剤併用(ポリファーマシー)と言いますが、新たに何か薬を処方することが躊躇われてしまいます。

厚労省の平成30年社会医療診療行為別統計の概況によると、75歳以上では24%もの人が院外処方で7種類以上の薬を処方されています。(下の図はここから)

他国の状況も同様のようです。(図は原文より)

上の図はスコットランドの研究です。年齢とともに処方される薬の数は増え、90歳以上の人の20%近くに10種類以上の薬が処方されてしまっています。

これでは薬だけでお腹いっぱいです。食欲が低下したり、ふらついたり、活動性や認知機能が低下することさえあるでしょう。何が薬の効果で、何が薬の副作用なのかわかりません。相互作用もどんなことが起きているのか想像もつかないほどでしょう。

以前にも多剤併用をされている患者さんがいたのですが、入院中に薬を減らせば減らすほど元気になった方もいます。私の見た目にも10~20歳若返ったようでした。

現在は医療があまりにも細分化され、それぞれの専門性があります。そして、それぞれの専門の医師が自分の領域だけを考え、薬を処方します。高齢者ほど病気が増える可能性が高くなりますが、行く病院病院で何種類も薬が処方され、その副作用を抑えるためにまた薬が処方されます。

医師の言うことを素直に聞く「まじめな患者」ほど、どんどん薬が増えます。様々な医師の診療を受けている場合、薬を減らしたくてもなかなか他の医師の薬を減らすことは難しいでしょう。

そして、入院中などに出た薬が、退院後近くのクリニックなどで継続されたり、医師が変わっっても何となく薬が継続され、そのことが薬を増やしている場合もあります。時々処方に疑問があって患者さんに「この薬は何のために飲んでいるの?」と聞いても「わからない」と答える場合も少なくありません。

新型コロナウイルスで不安や恐怖を煽っている一部の人と同じように、様々な病気の不安や恐怖を煽る医師もいます。その予防のために薬が必要だと説明するかもしれません。ずっと処方されているPPI(プロトンポンプ阻害薬)や他の胃薬、高齢者なのに普段の血圧が100程度でもまだ処方が続いている血圧の薬、効果がほとんどないのに処方され続ける痛み止め、平均寿命を超えてまで処方されているスタチン、依存が形成されて飲まないと不安になる睡眠薬、とりあえず痛みに処方されたB12(メチコバール)など、必要性をほとんど感じない薬の処方がいっぱいあります。

ほとんどの医師は食事に目が行きません。食事を変えると症状が改善するなんて思っている医師の方が少ないでしょう。薬はほとんどが急性期のものです。慢性の症状、つまり生活習慣病などは、本来は生活、特に食生活を変更することがもっとも重要なはずです。それをしないで、薬に頼ってしまっては病気は進行しますし、多剤併用の負のスパイラルにはまっていきます。

そのことに早く気が付いて、早く食習慣を変更することが最も大切だと思います。

多くの病気の原因は一つではないとしても、多くは共通していると思います。糖質制限で薬が減らせた方はいっぱいいます。まずは糖質制限をしてみましょう。

 

「The epidemiology of polypharmacy」

「ポリファーマシーの疫学」(原文はここ

4 thoughts on “多剤併用どうにかならないか?

  1. 河野太郎行政改革担当大臣が縦割り110番を開設しましたが、医療機関や薬局の縦割り110番も、是非欲しいですね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      パフォーマンスだけに終わらないでほしいですが、これまでのさまざまな悪事に対する検証の方が大事なような気がします。
      縦割りよりも悪質ですから。

  2. 大学医学部での旧態然とした授業内容。

    古典的栄養学の授業。

    この国の医師、看護師、管理栄養士、
    8割から9割の方々は、間違ったことを学んでいるのですね。

    いちど資格を取ってしまえば、自らをアウフヘーベンすることもなく、なんら間違いに気づかないまま患者に対峙していくのですね。

    自分の命は自分で守る。信念を持って糖質制限を続けていく。これに尽きますね。

    1. ジェームズ中野さん、コメントありがとうございます。

      生物的、生理的に正しいことと、医学的、栄養学的に正しいことの乖離が起きてしまっています。
      誰も正せません。
      一番の問題は自分の知識が間違っていることを知らず、正しいと思い込んでそれを他人(患者)に押し付けることですね。

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