飽和脂肪酸について、コメントをいただきました。
はじめまして
いつも興味深く拝見させていただいております。
先生のご意見はいつも確証に基づいているのでうなずけます。
質問なのですがサイトに既に掲載してあれば申し訳ありません。
既に心疾患を持っている人が飽和脂肪酸を積極的に摂取することは
いかがなのでしょうか。
現状の病態を変化させ得ないのでしょうか。
このような思考はやはりLDL=悪玉となるのでしょうか
飽和脂肪酸、コレステロールが動脈硬化の原因であると考えている人がいると思いますが、実際にはそのような証拠は本当にあるのでしょうか?動脈硬化のアテローム内には確かに脂質、コレステロールが含まれていますが、それは食事によって蓄積するかどうかはわかりません。
心筋梗塞など、心臓の冠動脈が急激に閉塞する急性冠症候群は、かなりの割合で軽度や中等度の狭窄から急に閉塞に至るのです。(図はここより)
上の図は心筋梗塞の人の発症前の冠動脈の狭窄の程度を示しています。網掛けが50%未満の狭窄、点々が50~70%狭窄、白い部分が70%以上の狭窄です。70%以上は14%しか認められていません。
病理学的には,心筋梗塞の冠動脈責任病変ではプラーク破綻が大部分で、残りはプラークのびらんが認められています。つまり、血管が詰まるのは、だんだん血管が狭くなっているというよりは、プラークが破裂したり、びらんができて血栓ができて起きているのです。
今回の研究ではスタチンでLDLコレステロールをコントロールしたり、スタチンは使用していない人でLDLコレステロールが低い人で、血糖値の変動の大きさがプラークに与える影響を調べています。対象は脂質異常症の適切な治療下にある20〜80歳で、冠動脈疾患の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に紹介された方で、さらにスタチン投与下でのLDLコレステロールレベル120mg/dL未満、または生活習慣の管理を含む脂質異常症の他の治療下での100mg/dL未満の人です。(図は原文より、表は原文より改変)
MAGE | 平均血糖値 | 高血糖の時間 | 低血糖の時間 | HbA1c | 糖尿病期間 | LDLコレステロール | HDLコレステロール | 中性脂肪 | CRP | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
脂質の長さ | 0.369 ** | 0.292 ** | 0.349 ** | 0.071 | 0.173 * | 0.193 * | −0.065 | −0.044 | 0.019 | −0.061 |
脂質平均円弧 | 0.615 ** | 0.324 ** | 0.397 ** | 0.232 ** | 0.330 ** | 0.268 ** | 0.173 | −0.017 | −0.018 | 0.286 ** |
脂質指数 | 0.541 ** | 0.340 ** | 0.405 ** | 0.149 | 0.268 * | 0.257 ** | 0.043 | −0.053 | 0.037 | 0.068 |
繊維状のキャップの厚さ | −0.430 ** | −0.105 | −0.192 ** | −0.316 ** | −0.097 | −0.046 | −0.039 | 0.113 | 0.041 | −0.149 |
石灰化の長さ | 0.099 | 0.065 | 0.149 | 0.132 | −0.105 | 0.102 | 0.171 | 0.094 | −0.053 | 0.026 |
石灰化平均円弧 | 0.154 | 0.236 * | 0.253 * | 0.040 | −0.022 | 0.184 | 0.159 | 0.081 | −0.029 | −0.171 |
石灰化指数 | 0.101 | 0.099 | 0.166 * | 0.085 | −0.047 | 0.227 ** | −0.005 | 0.143 | −0.034 | −0.108 |
上の表は様々な冠動脈のプラークの測定値と糖尿病コントロールおよび非血糖代謝変数のマーカーとの相関関係を示しています。赤い数値が有意差有りです。数値が大きい方が関連が強いと考えてください。MAGEは平均血糖変動幅を示しています。
そうすると、プラークの中の脂質は全て、血糖値に関するものばかりが大きく関連しています。コレステロールとの関連は認められていません。つまり、血糖値のコントロールが悪いほどプラークには脂質が増加するのです。
また繊維状の被膜のキャップの厚さはそれが薄いほど破綻しやすくなると考えられます。これもまた、血糖値のコントロールが悪いほど薄くなっていたのです。
上の図は平均血糖変動幅(MAGE)を数値によって3つのグループに分け、aが脂質指数、bは繊維状キャップの厚さ、cは石灰化指数との関係を分析しています。石灰化を除いて、脂質指数はプラークの体積のようなものと考えてください。脂質指数は血糖変動幅が大きいほど増加しています。繊維状のキャップの厚さは血糖変動幅が大きいほど薄くなっています。
上の図はaが糖尿病の人、bは非糖尿病の人です。横軸が平均血糖変動幅(MAGE)、縦軸が左が脂質指数、右が繊維状のキャップの厚さです。糖尿病の有無に関係なく、血糖の変動幅の増加はプラークの脂質を増加させ、繊維状のキャップを薄くして、不安定なプラークをもたらします。
別の研究でも、すでに冠動脈の狭窄を来たし、ステントが入っている人を対象として、糖尿病の有無により、プラークの進行との関連を調べたものがあります。(ここ参照)
それによると、すでに冠動脈病変を来たして、ステントが入っている人では、その後の別の冠動脈などのプラークの進行の可能性は、糖尿病では4.81倍高く、一方脂質異常症との関連はありませんでした。
つまり、すでに心疾患を患っている人であっても、気を付けるべきは糖尿病、高血糖、つまり糖質過剰摂取であり、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取ではないと考えます。
急性心筋梗塞でさえLDLコレステロールが高い方が死亡率が低いという研究もあります。(「急性心筋梗塞や急性心不全ではLDLコレステロール値が高い方が死亡率が低い」参照)
飽和脂肪酸やコレステロールが悪玉と考える全ての研究の前提では、糖質過剰摂取状態です。もちろん、糖質制限での研究はまだ存在しません。しかし、今回取り上げた研究などを考えると、私には心血管疾患は糖質過剰摂取が原因としか思えません。
あとはそれぞれご自身の判断でしょう。
糖質制限 糖質過剰症候群
「Association between daily glucose fluctuation and coronary plaque properties in patients receiving adequate lipid-lowering therapy assessed by continuous glucose monitoring and optical coherence tomography」
「継続的なブドウ糖モニタリングと光コヒーレンストモグラフィーによって評価された適切な脂質低下療法を受けている患者における毎日のブドウ糖変動と冠状動脈プラーク特性との関連」(原文はここ)
清水先生、お久しぶりです。
いつも楽しく拝見させていただいています。
この10月で心筋梗塞発症から7年で、糖質制限も7年になります。
江部先生のブログを読んですぐ始められたのは、自分の食生活を振り返った時に糖質過剰摂取しか考えられなかったからです。
現在の食事はスーパー糖質制限ですので、発症以前より脂質の割合も量も多いと思います。
8年、9年目が保証されている訳ではありませんが、この7年間、糖尿病薬離脱、肥満解消、快眠、花粉症ほぼ完治、その他諸々の改善を実感する時、この先何があっても仕方がないと考えます。
以前に投稿させていただいた時にも書きましたが、「ドクターシミズのひとりごと」は私にとって長期間に効く精神安定剤です。
太田さん、コメントありがとうございます。
脂質摂取が多くなったのに、糖質制限で様々な改善、本当に良かったですね。
しかし、日本の医学界は恐らく脂質=悪玉から当分は抜け出れないでしょうね。
>日本の医学界は恐らく脂質=悪玉から当分は抜け出れないでしょうね
ドクターシミズはご存じでしょうか
「ドクターX」という大ヒットテレビ番組があるのですが、米倉涼子が演じる外科医はまさに糖質まみれの食生活を送っており、手術のあとに必ずシロップをコップ一杯300g飲み干します。そして彼女はいつも腹をすかして、暇さえあれば焼きそばパンやタコ焼きをムシャムシャと食べています。
ちなみにシーズン5では彼女自身がガンになりました。ガンとわかってからも、あんこがたっぷり詰まった鯛焼きを食べていました。医療監修をしたシナリオライターがヤバいです。「シロップの一気飲み」は疲れた脳みそにエネルギー注入という理由付けでしょうが、ほんとうに笑ってしまうほどヤバいです(笑)
山本りんたさん、コメントありがとうございます。
所詮、ドラマや漫画の世界ですから・・・
シロップ300gですね
訂正しておいてください
本文が行方不明のようです