以前の記事「経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の1時間値」では、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の1時間値が155以上であれば、糖尿病に進行してしまう危険性が非常に高くなることを書きました。同様に、1時間値が高いことは非アルコール性脂肪性肝疾患になる可能性も高くなるようです。
今回の研究では、710人を対象として、正常耐糖能の人(空腹時血糖<100mg/dLおよびOGTT2時間値<140mg/dL)と、空腹時血糖障害の人(空腹時血糖100〜126mg/dLおよび2時間値<140mg/dL)、耐糖能障害の人(空腹時血糖<100mg/dLおよび2時間値140〜199mg/dL)に分類しました。さらに、正常耐糖能の人をOGTT1時間値で155未満と155以上で分類しました。(表は原文より改変)
変数 | 1時間血糖値<155mg/dL(95%CI)の正常耐糖能(1) | 1時間血糖値≥155mg/dL(95%CI)の正常耐糖能(2) | 空腹時血糖障害(95%CI)(3) | 耐糖能障害(95%CI)(4) | p値 |
---|---|---|---|---|---|
1対2 | |||||
年齢(年) | 44±13(42〜46) | 51±12(48〜53) | 56±10(54〜58) | 54±12(52〜56) | <0.0001 |
BMI | 29.3±6.1(28.6〜30.1) | 31.0±6.1(29.8〜32.2) | 30.5±5.3(29.1〜31.1) | 32.1±6.4(31.0〜32.9) | 0.02 |
胴囲(cm) | 99±13(97〜101) | 103±12(100〜105) | 103±13(100〜106) | 106±14(104〜108) | 0.17 |
脂肪量(%) | 31±8(30〜32) | 33±9(30〜34) | 33±8(31〜34) | 35±8(33〜36) | 0.29 |
空腹時血糖値(mg/dL) | 87±7(86〜88) | 90±7 (89~91) | 107±6(105~109) | 98±11(97~100) | 0.31 |
1時間血糖値 | 116±24(113〜119) | 180±21 (176~184) | 157±36(150~164) | 191±35(186〜196) | <0.0001 |
2時間血糖値 | 101±18(99〜103) | 113±20(109~117) | 111±21(106~115) | 168±21(165〜171) | <0.0001 |
空腹時インスリン(μU/mL) | 12±8(11〜13) | 13±8(12~14) | 13±6(12〜14) | 14±8(13〜16) | 0.05 |
1時間インスリン | 93±72(84から102) | 145±92(126~164) | 111±70(96〜127) | 114±70(103〜125) | <0.0001 |
2時間インスリン | 68±57(61〜75) | 96±69(81~110) | 83±62(70~97) | 142±102(127〜158) | <0.0001 |
総コレステロール(mg / dL) | 200±37(196〜204) | 205±30(200〜211) | 212±40(204〜220) | 203±43(197〜209) | 0.99 |
HDL(mg / dL) | 52±14(50〜54) | 47±12(45〜50) | 52±13(50~55) | 48±14(47〜51) | 0.02 |
中性脂肪(mg / dL) | 120±63(112〜127) | 134±64(122〜147) | 140±63(127〜152) | 147±78(136〜158) | 0.05 |
hsCRP(mg / L) | 2.9±2.5(2.5〜3.5) | 4.1±3.4(3.3~4.9) | 2.7±2.5(2.0~3.5) | 4.0±3.0(3.5〜4.5) | <0.0001 |
ALT(UI / L) | 22±13(21〜24) | 27±13(23〜39) | 25±11(22〜27) | 28±16(26〜31) | 0.03 |
AST(UI / L) | 20±7(19〜21) | 21±6(20〜22) | 22±7(21〜24) | 24±9(23〜25) | 0.83 |
GGT(UI / L) | 23±15(21〜25) | 31±24(26〜34) | 28±16(24〜32) | 33±31(26〜32) | 0.04 |
肝臓インスリン抵抗性インデックス | 2.63±0.38(2.58〜2.68) | 2.82±0.36(2.74〜2.89) | 2.69±0.31(2.62〜2.76) | 2.84±0.34(2.79〜2.89) | <0.0001 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(n) | 147(49.8%) | 68(62.4%) | 52(50%) | 135(66.8%) | 0.03 |
上の表のように、正常耐糖能と判断される人でも、OGTT1時間値が155以上であると、155未満の人と比較すると様々な違いがあります。1時間値が高いと、BMIが高く、2時間値も高く、インスリン値は1時間値も2時間値も高くなりました。他にも中性脂肪値、炎症を示すCRP、ALT、GGTも高くなりました。HDLコレステロールは低下し、肝臓のインスリン抵抗性は高くなりました。
正常耐糖能でも1時間値が高い人は、1時間値が低い人と比較すると脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)を発症する可能性が1.7倍増加しました。当然耐糖能障害も増加を示し、2.3倍でしたが、空腹時血糖障害の人では1.1倍で有意な増加は認めませんでした。
正常耐糖能と判断されても1時間値が高いと、すでに肝臓のインスリン抵抗性が増加している可能性が高くなり、中性脂肪の産生が増加し、脂肪肝になりやすくなるのでしょう。
普段の食事の食後血糖値を測定している人も2時間値だけを見ている人もいるかもしれませんが、2時間値がそれほど高値ではなくても1時間値がものすごく高値を示している人もいます。1時間値が高い人は1時間値も低い人よりも高インスリン血症になっている可能性も高くなります。
食後の1時間値も重要だと思います。
糖質過剰症候群 糖質制限
「Elevated 1 h postload plasma glucose levels identify adults with normal glucose tolerance but increased risk of non-alcoholic fatty liver disease」
「負荷後1時間の血糖値の上昇は、正常な耐糖能を有するが非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクが高い成人を特定する」(原文はここ)
十年一日のごとく、コレステロールをやり玉にスタチンなどを処方されようとする医師。
知り合いが「コレステロール値が高い、薬も飲んで運動も食事も頑張ったのに
(週1~2回1時間程ウォーキング、そして肉や卵は控えた、そうです。ご飯や麺類など気にせず召しあがっています。お土産は当然甘味や煎餅です)」。
以前、清水先生の『糖質オフ×プチ断食、、、』を貸し、熱心に読んでおられたのに、
なかなか「健康常識」からは脱却できないものですね。
私も余計な事は言わずに個人的な実感で継続していくのみですが。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
それぞれがそれぞれの判断で何を重視するかは決めれば良いと思います。
糖質制限は自分でやろうと思わなければできません。