脳腫瘍に対する糖質制限の効果と限界

以前の記事「高血糖は脳腫瘍の生存期間を短くする」では、高血糖が脳腫瘍の中で最も悪性である膠芽腫(グリオブラストーマ)の生存期間を短くしていることを書きました。そこで、がんにエサを与えないために、糖質制限食やケトン食を行えばどれほどの効果があるのでしょうか?

2つの研究を示しますが、当然サンプル数が非常に少ないため、統計的なデータとしてはあまり意味がありません。

まずは、糖質制限食に近い食事の研究です。

対象は神経膠芽腫が再発して、鼻腔内ペリリルアルコール(POH)という治療を行っている29人で、15人がその治療と糖質制限を併用して、14人が通常の食事を続けていました。この研究の糖質制限は1日の糖質量の上限を130gとしています。エネルギー量25〜30 kcal/kg、タンパク質1.5g /kg、炭水化物からの総カロリーの30〜35%(最大130g/日)、脂質は約55%、コレステロール≤200mg/日、食物繊維20〜30g/日です。糖質制限食としてもかなり緩めです。

ただ、この程度の糖質制限でも、参加者はケトーシスとなっているようで、週3回尿中ケトン体を測定して、尿中のケトン体が増加していることを確認しています。(図は原文より)

上の図は縦軸が生存率です。横軸は生存期間です。赤が通常食、黒が糖質制限食です。糖質制限の方が生存期間が長い傾向があるように見えます。

上の図は生存者の中で、疾患が安定した状態(SD)および脳腫瘍の進行(TP)を示す割合です。黒いバーが糖質制限、白いバーが通常食です。1年後までに糖質制限グループと通常食グループの6人がそれぞれ亡くなっています。1年後での生存者の中では通常食と比較して、糖質制限の方が安定した状態の割合が2.17倍高く、腫瘍の進行は2.81倍減少しました。

再発の膠芽腫患者の主な生命を脅かす合併症としての脳浮腫の発症を最小限に抑えるために、高用量のコルチコステロイド(デキサメサゾン)による治療が必要になることがよくあります。

研究の開始時に、高用量デキサメタゾン(16mg /日)による治療は2つのグループ間で有意差はありませんでした。しかし、研究の開始から3か月後、デキサメタゾンの必要量は糖質制限の3分の1で半減しました。通常食では半減したのは1人だけでした。そのような患者はさらに、MRIで臨床状態の改善と腫瘍サイズおよび腫瘍周囲浮腫の減少を示したが、もちろんすべての患者が良い結果ではありません。

上の図は4人の患者のMRIで、ⅰは開始前、ⅱは12か月後(dのみ4か月後)の画像です。aは腫瘍サイズが24%減少していることを示しています。bとcは白く写っている部分が縮小しているのがわかります。ただ、dの画像では、糖質制限の反応がなく進行しているのがわかります。

また、けいれん発作が起きることがよく認められますが、1年後までに糖質制限では44.4%がけいれんを認めず、通常食よりも頻度が1.8分の1に減少していました。

次の研究はしっかりと糖質を制限したケトン食の研究です。ただし対象は8人と非常に少ないです。ケトン食は重量比で4:1= [脂質]:[タンパク質+炭水化物]で、炭水化物は1日10g、1600kcal制限です。8人中4人は新たに(多形性)膠芽腫と診断された人で、4人が再発です。5人8初発4人、再発1人)だけが6か月のケトン食を終了できました。初発4人は6か月後も自分でケトン食を継続し、3人は亡くなる少し前(ケトン食の期間は26、19.3、7か月)まで続けました。1人はまだ続けており8か月後でも生存しています。

食事開始からの平均生存期間は、初発で20か月、再発で12.8か月でした。診断からの平均生存期間は、初発で21.8か月、再発で25.4か月でした。再発の1人の患者は、ケトン食開始後6〜8週間で顕著な症状の逆転、腫瘍の縮小、浮腫の解消を経験し、ケトン食開始後20か月間生存しました。

もちろん、非常に悪性の神経膠芽腫に最後まで打ち勝つことは難しいでしょう。恐らくはエネルギー環境の変化に対してがん細胞が柔軟性を獲得、または柔軟性を持ったがん細胞が増加し、ブドウ糖が豊富になくてもエネルギーを得ることが可能なのだと思います。最終的にはケトン体さえエネルギーにしてしまうとも考えられます。(ここ参照)

まずはがんになりやすい体内環境を作らないようにして、予防が重要でしょう。それには糖質制限だと考えます。がんは糖質過剰症候群ですから。

「Adjuvant effect of low-carbohydrate diet on outcomes of patients with recurrent glioblastoma under intranasal perillyl alcohol therapy」

「鼻腔内ペリリルアルコール療法下の再発性神経膠芽腫患者の転帰に対する低炭水化物食の補助効果」(原文はここ

「Treatment of glioblastoma multiforme with “classic” 4:1 ketogenic diet total meal replacement」

「「古典的な」4:1ケトン食完全食の交換による多形性膠芽腫の治療」(原文はここ