タンパク質源と冠動脈疾患のリスク

タンパク質源として肉が良いのか、魚が良いのか、卵が良いのか、はたまた植物性が良いのか?赤肉は目の敵にされ、特にハーバード大学は赤肉と糖質制限が嫌いなようです。

今回の研究では、40〜75歳のアメリカの男性医療従事者43,272人を対象として、タンパク質源と心臓の冠動脈疾患のリスクについて分析しています。

当然、食事内容は質の非常に低い、自己申告の食事アンケートです。(図は原文より、表は原文より改変)

赤肉の総摂取量未加工の赤肉の摂取量加工赤肉摂取量
最低3番目最高最低3番目最高最低3番目最高
摂取量の中央値(1日あたりの摂取量)0.210.851.930.140.501.290.000.210.93
平均年齢(年)545352555352545253
現在の喫煙者404783116648995611325318741226
平均身体活動(MET h/週)261917261917242017
BMI252626252626252626
心血管疾患の家族歴118795896812141175114114941102963
糖尿病の病歴172175302208239305232209289
高血圧の病歴169416831737179419811988218119291716
高コレステロール血症の病歴127380870012429668561516950709
マルチビタミンの使用428234663266450441213769534638963353
アスピリンの使用214121412436228426682745273425852495
平均アルコール摂取量(g/日)912149121391214
平均総エネルギー摂取量(kcal /日)168419062502168018992441177219432365
平均フルーツ摂取量(サービング/日)2.21.51.22.11.51.22.11.51.2
平均野菜摂取量(1日あたりの摂取量)3.83.12.73.73.12.83.73.02.7
平均トランス脂肪酸摂取量(g /日)2.13.03.32.22.93.22.32.93.3
平均食物繊維摂取量(g /日)7.45.64.87.15.65.07.05.65.0
平均グリセミック指数535354535354535353

上の図は赤肉摂取量の量によって5つのグループに分けたときのベースラインの状態です。参加者のベースラインでは、赤肉の総摂取量が多い人は、喫煙、アルコールの消費、糖尿病、アスピリンの使用が多く、また総エネルギーとトランス脂肪酸の摂取量が多かったのですが、身体活動が少なく、高コレステロール血症や心血管疾患の家族歴がある可能性は低かったのです。さらにマルチビタミン、果物、野菜、および食物繊維の摂取量が少ない状態でした。つまり、ベースラインで全く異なる集団を比較しているのです。無理があります。赤肉の摂取量が多い人は最初の段階で、喫煙や糖尿病という冠動脈疾患と深い関係の因子を持つ割合高いのです。生活習慣、食習慣、健康に対する姿勢が全く違う集団の比較は意味があるのでしょうか?

さらに、赤肉摂取量の最低のグループの総エネルギー摂取量は1,700kcal前後です。アメリカの男性の摂取エネルギーがこんなに少ないとは思えません。これではアメリカの男性にとっては厳しいカロリー制限状態です。自己申告の食事アンケートのいい加減さですね。

赤肉摂取量1食分/日当たりのハザード比(95%CI)
最低2番目3番目4番目最高
総赤肉
年齢調整モデル11.08(0.98〜1.19)1.15(1.04〜1.27)1.15(1.04〜1.27)1.47(1.34から1.61)1.20(1.16から1.26)
多変数調整モデル111.06(0.96〜1.17)1.11(1.00から1.23)1.09(0.97から1.21)1.34(1.21から1.49)1.15(1.09から1.21)
多変数調整モデル211.06(0.96〜1.18)1.11(0.99から1.23)1.08(0.97から1.21)1.28(1.14から1.45)1.12(1.06から1.18)
未加工の赤肉
年齢調整モデル11.13(1.02から1.24)1.08(0.98〜1.19)1.17(1.06〜1.28)1.36(1.24から1.49)1.27(1.18〜1.35)
多変数調整モデル111.12(1.01から1.23)1.05(0.95から1.16)1.12(1.01から1.23)1.24(1.12から1.37)1.17(1.08から1.26)
多変数調整モデル211.11(1.01から1.22)1.04(0.94から1.16)1.09(0.98から1.22)1.18(1.05から1.32)1.11(1.02から1.21)
加工赤肉
年齢調整モデル11.05(0.95から1.15)1.14(1.04、1.25)1.12(1.02から1.24)1.39(1.27から1.52)1.32(1.24から1.41)
多変数調整モデル111.02(0.93から1.13)1.09(0.99、1.20)1.06(0.96〜1.16)1.24(1.12から1.36)1.20(1.12から1.30)
多変数調整モデル211.02(0.92から1.13)1.09(0.98、1.20)1.05(0.95から1.17)1.19(1.07から1.33)1.15(1.06〜1.25)

上の図は、様々な調整をした時の冠動脈疾患のリスク比です。当然、赤肉摂取量が多いほどリスクが高い結果になっています。1日あたり1食分増加すると、冠動脈疾患のリスクが12%高くなる計算のようです。

上の図は、赤肉を他のタンパク質源に置き換えたときに、冠動脈疾患のリスクがどうなるのかを示しています。Soy(大豆)は1週間に2食分の置き換えですが、他は1日に1食分の置き換えです。置き換えるタンパク質源は上から鶏肉、魚、卵、高脂肪乳製品、低脂肪乳製品、ナッツ、豆類、大豆、植物性タンパク質です。想像通り、赤肉を他のタンパク質源に換えた方がリスクは低下する分析になっています。しかし、面白いことに、鶏肉や魚では置き換えのリスク低下は認められていません。動物性が良くないということでしょうか?一般的には魚は心血管疾患には有益だと考えられているはずですが。

また、加工肉を卵に置き換えるとリスクが低下するようです。そういえば、卵はコレステロールが高いから心血管疾患のリスクが高くなると言われていませんでしたっけ?

ハザード比(95%CI)P値
総赤肉
乳製品:
 牛乳0.90(0.85から0.96)0.002
 スキムミルク0.90(0.85から0.96)0.002
 全乳0.90(0.82〜0.99)0.03
 ヨーグルト0.78(0.64〜0.94)0.01
 チーズ0.89(0.82〜0.98)0.01
未加工の赤肉
乳製品:
 牛乳0.91(0.83〜0.99)0.03
 スキムミルク0.91(0.83〜0.99)0.04
 全乳0.90(0.81から1.01)0.08
 ヨーグルト0.77(0.63〜0.94)0.01
 チーズ0.91(0.81から1.01)0.07
加工赤肉
乳製品:
 総牛乳0.87(0.80〜0.95)0.001
 スキムミルク0.87(0.80〜0.95)0.002
 全乳0.86(0.77〜0.97)0.010
 ヨーグルト0.74(0.60〜0.90)0.003
 チーズ0.86(0.77〜0.96)0.007

上の表は赤肉を乳製品に置き換えたときの冠動脈疾患のリスクがどうなるかを示しています。ヨーグルトが最もリスク低下が大きいようです。しかし、ヨーグルト1食分と赤肉1食分のタンパク質量は相当違うような気がします。ヨーグルトでタンパク質20gを摂取しようとすれば、600g近いヨーグルトを食べなければなりません。そうすると同時に30g近い糖質も摂ることになります。非常によろしくないですね。また、お腹壊しそうです。

いずれにしても、いい加減なデータを用いて、植物性タンパク質を推奨したいのでしょう。こんな適当な研究でさえ、赤肉の心血管疾患に対するリスク増加は非常に小さいのですから、全く気にする必要はありません。

私は今日も肉をたっぷり食べます。

「Red meat intake and risk of coronary heart disease among US men: prospective cohort study」

「アメリカ人男性における赤肉の摂取と冠動脈性心臓病のリスク:前向きコホート研究」(原文はここ