体力がない人はメンタルヘルスが悪化する可能性が高い

体と心は結びついています。体が元気であれば心も元気になりやすくなると思います。メンタル面の健康を保つには激しい運動ではなくても、体を動かすことは欠かせないと思います。

今回の研究では、ベースラインでのエアロバイクでの心肺フィットネスと握力計を用いた握力の違いが7年後のメンタルヘルスにどのような影響があるかを分析しました。対象は40〜69歳で、心肺フィットネスは2万人以上、握力は14万人以上のデータを分析しています。(表は原文より改変)

未調整調整済
うつ病不安うつ病や不安うつ病不安うつ病や不安
心肺フィットネス1.671(1.455、1.919)1.228(1.027、1.469)1.529(1.350、1.732)1.596(1.378、1.849)1.230(1.020、1.483)1.485(1.301、1.694)
1.172(1.020、1.347)1.072(0.904、1.270)1.160(1.027、1.311)1.154(0.999、1.334)1.067(0.894、1.272)1.141(1.005、1.297)
11
握力1.538(1.461、1.619)1.454(1.360、1.554)1.486(1.418、1.556)1.410(1.335、1.490)1.380(1.286、1.480)1.381(1.315、1.452)
1.118(1.061、1.178)1.123(1.051、1.201)1.107(1.056、1.160)1.126(1.066、1.189)1.145(1.068、1.228)1.116(1.063、1.172)
11

上の表は心肺フィットネスや握力を3段階に分けて、うつ病や不安障害になる可能性についてを示しています。心肺フィットネスが高い人と比較すると、中程度の人ではうつ病が15%、うつ病と不安を合わせたものが14%増加していました。心肺フィットネスが低い人では、うつ病が60%、不安が23%、うつ病と不安を合わせたものが49%増加していました。握力に関しても同様の傾向が認められました。

未調整調整済
うつ病不安うつ病や不安うつ病不安うつ病や不安
両方とも低い2.099(1.667 2.645)1.518(1.133、2.036)1.866(1.519、2.295)1.981(1.553、2.527)1.559(1.148、2.118)1.814(1.461、2.252)
両方とも中等度1.389(1.096、1.758)1.118(0.833、1.500)1.278(1.037、1.574)1.427(1.117、1.825)1.209(0.894、1.637)1.325(1.067、1.645)
両方とも高い11

上の表は心肺フィットネスと握力が両方とも高い人と比較して両方とも中等度か、低い人のうつ病や不安障害の可能性を示しています。そうすると、両方とも高い人と比較して中等度の人はうつ病が43%、うつ病と不安を合わせたものが33%増加していました。両方ともが低い人ではうつ病が98%、不安が56%、うつと不安を合わせたものが81%増加していました。

つまり、調査開始時に心肺フィットネスや握力の結果が優れていた人は、7年後のメンタルヘルスが良好である可能性が高いということがわかりました。

我々人間は安静にしていることが、体にとって有益なようにはできていません。使わない筋肉などはすぐに低下してしまいます。そして、体を動かすことはメンタル面にも大きな影響を与えるようです。

ペインクリニックの外来をやっていると、確かに体力がない人の方が痛みも訴えやすく、改善も遅い印象があります。(エビデンスはありません。あくまで印象です。)

特に高齢者は痛いとすぐに安静にしてしまう傾向があります。

体に刺激がないと筋肉ばかりか、脳の活動も低下するのかもしれませんし、ストレスに対する耐性も低下するのかもしれません。

いずれにしても、我々人間は動かないと、様々な弊害が生まれる可能性が高くなるということです。

新型コロナのために家の中でじっとしていては、メンタル面でも良くないかもしれません。体を動かしましょう。

「Individual and combined associations between cardiorespiratory fitness and grip strength with common mental disorders: a prospective cohort study in the UK Biobank」

「心肺フィットネスと握力と一般的な精神障害との個別および複合的な関連性:UKバイオバンクでの前向きコホート研究」(原文はここ

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コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    おはようございます。
    コロナ窩お見舞い申し上げます。

    寒いとおっくうになりますが、一日を無駄にしたくないので無理やり起きて、走ります。
    よく言われることですが、走って後悔したことはほぼ無い、です。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      札幌は雪があるので、外ランはしておりません。雪さえなければ寒くても外を走るのですが。

  2. 西村 典彦 より:

    運動によりエネルギー循環が良くなることが発症率の低下の一因ではないかと感じます。
    私は、糖質制限を始める前、不安障害で薬物治療をしたことがありますが、その頃、既に糖尿病も発症していたと思われ、糖エネルギーの効率が非常に落ちて疲れやすくなっていました。
    不安障害の治療は通院不要な程度までは回復しましたが、完全ではありませんでした。
    糖質制限後、脂肪酸代謝に変わってからは体力が格段に回復し、それに伴って不安障害もほとんどなくなりなした(ゼロにはなりませんが)。

    そして、何回か投稿させていただいておりますが、9月から糖質制限に加えてカロリーも制限する実験中です。
    体が軽く感じたり、皮膚の状態が良くなったり「食べない事」による良い変化が表れていますが、悪い変化として「不安感」を感じる事が多くなったのが気になっていました。
    低エネルギー(1650kcal/日)に対する危機感を体が感じているのかもしれません。食欲を満たすことが精神疾患を緩和するかもしれません。脳はエネルギーに対して非常にデリケートだと感じます。
    現在、不安感は病的なほどではないのでもう少し実験を続けて観察してみます。

    • Dr.Shimizu より:

      西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      非常に貴重な体感された情報ありがとうございます。
      実験の続報があればまた教えて下さい。